せっかく作った提案書が、いまいちわかりにくい。その原因は、提案書に書かれている情報の一つひとつにあるのではなく、それらの情報を繋ぎ合わせるための設計図、すなわち「情報の構造」にあるのかもしれません。どんなに素晴らしいレンガがあっても、設計図なしに積み上げただけでは、ただのガレキの山になってしまうのと同じです。
行政案件だけで500件以上の実績を持つ株式会社コヨーテコヨーテの今村由美子氏は、説得力のある提案書は、ロジカルな情報構造によって磨き上げられてると言います。
本記事では、あなたの提案書を「情報の羅列」から「評価者を納得させるストーリー」へと昇華させるための「情報の構造化」スキルを、具体的な3つのステップに分けて解説します。
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ステップ1:思考の最小単位「情報の塊」を作る
構造化の第一歩は、完璧な文章を目指すことではなく、思考を整理し、意味のある「塊」に分けることから始まります。
まず、伝えたいことを思いつくままに書き出し、それを短い文章の「箇条書き」に変換しましょう。文章を箇条書きにするだけで、思考が整理され、論点が明確になります。これが、構造化の最も基本的なファーストステップです。
次に、その箇条書きのグループに「ひと言で言うと何なのか」を要約する「タイトル」を付けます。この時に「タイトルと中身の不一致」が発生しないように注意しましょう。例えば、「事業の目的」というタイトルを付けたのに、中身が具体的な「実施事項」のリストになっていては、読み手は混乱します。付けたタイトルが、その塊の内容を正確に表現しているか、常に自問自答する癖をつけることがおすすめです。
ステップ2:提案書全体の「骨格」を整える
情報の塊(タイトル付きの箇条書き)ができたら、次はその塊同士を正しく並べ、提案書全体の論理的な「骨格(アウトライン)」を構築していきます 。
まず、ステップ1で作成した全てのタイトルを一覧で眺めてみましょう。そして、以下の2つの点を確認します。
● タイトルのレベル感は合っているか?
大項目・中項目・小項目のような階層が、きちんと整理されているかを確認します。例えば、「1. 事業背景」「2. 事業目的」「3. 実施体制」といった大項目の中に、より詳細な中項目がぶら下がる、という階層構造を意識します。
● タイトルの上下関係は正しいか?
話の流れが論理的であるかを確認します。一般的には、「背景・課題」→「目的・方針」→「具体的な実施内容」→「体制・スケジュール」といった流れが自然です。この骨格がしっかりしていると、読み手はストレスなく内容を理解できます。
この骨格作りは、提案書全体のページ構成案(ページネーション)を作成するのにも非常に有効です。各ページにどのようなタイトル(情報の塊)を配置するかを事前に設計することで、論理の飛躍や重複を防ぐことができます。
ステップ3:「ピラミッド構造」で説得力を最大化する
骨格が組み上がったら、最後はその骨格に説得力を加えます。ここで強力な武器となるのが、「ピラミッドストラクチャー」という思考法です。
ピラミッドストラクチャーとは、伝えたい「結論」を頂点に置き、その下に結論を支える「根拠」を複数配置し、さらにその下に各根拠を裏付ける「具体例やデータ」を配置する、三角形の構造です。
● 頂点(結論):「本提案が、貴社の課題解決に最も貢献できます」
● 中段(根拠):「根拠1:独自の技術力」「根拠2:豊富な実績」「根拠3:万全のサポート体制」
● 下段(具体例):「特許技術の詳細」「同種案件の実績データ」「サポート担当者の経歴」
この構造で情報を整理すると、「なぜならこうだから(根拠)、具体的にはこうだ(具体例)」という論理の流れが非常に明確になります。この構造は、私たちが読み解いている行政の仕様書自体が採用していることも多い、非常に論理的で信頼性の高い型です。
この構造を意識することで、提案書全体に一貫した説得力が生まれ、提案の要旨をまとめるエグゼクティブサマリーなども格段に書きやすくなります。
まとめ
提案書の説得力は、個々の情報の内容だけで決まるわけではありません。それらの情報をいかに論理的に、わかりやすく構造化できるかが勝敗を分けます。
提案書を作成する際は、いきなり本文から書き始めるのではなく、まずはこの「構造設計」に時間をかけること。それこそが、「評価される提案書」を作成する、最も確実な近道です。
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