スタートアップの成長を支える採用術。令和トラベルの採用広報戦略

2021年創業の令和トラベルは、「あたらしい旅行を、デザインする。」ことをミッションに掲げ、旅行そのものを自ら企画・提供する新しいスタイルの旅行サービスです。ツアーの企画から販売まで自社で一貫して手がけるだけでなく、旅行アプリ『NEWT(ニュート)』を通じて旅行プランの検索や予約、カスタマイズ、情報共有まで行える仕組みを提供しており、カスタマーにとって利便性の高い体験を実現しています。

採用においては、単なる人材補充ではなく、事業やビジョンに共感し、一緒に挑戦できる仲間を迎えることを重視しています。ゼロから組織をつくる創業期の環境の中で、社員一人ひとりがプロダクトやサービスづくりに主体的に関わりながら役割を広げていくことを可能にする体制を整えています。今回は、CHRO(Chief Human Resource Officer/最高人事責任者)の田村博司さんに、こうした採用戦略や組織づくりの考え方について伺いました。

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田村博司さん

令和トラベル 取締役 兼 執行役員CHRO

2007年、リクルートに新卒入社。入社以来、一貫してリクルート及びリクルートホールディングスで人事に所属。Indeed国内エンジニア採用立ち上げやリクルートのITスペシャリスト採用立ち上げなどを推進後、採用責任者やグループ子会社の経営企画責任者などを歴任。2020年に人事コンサルティング会社を設立。2021年4月、令和トラベルに執行役員CHROとしてジョインし、2023年6月より取締役に就任。

創業期・成長期での採用戦略

━━組織拡大の遍歴を教えてください。

令和トラベルは2021年4月に創業しました。当初のチームはわずか8人で、代表の篠塚(孝哉氏)をはじめ、ビジネスサイドの責任者、マーケター、旅行プランナー、BizDev(ビジネスディベロップメント)、カスタマーサポート、そして私(人事責任者)など多様なメンバーが集まり、立ち上げ期ならではの多様な役割を担ってスタートしました。

立ち上げ期で最も重要なものはプロダクトと考えていました。当社のプロダクト「NEWT」では、エンジニアやデザイナー、PdM(プロダクトマネージャー)などのメンバーが業務委託として参画した後、創業直後に正社員化したメンバーも複数名いたため、事業や組織を理解したメンバーが多く在籍していました。2025年6月現在ではフルタイム社員は約100人規模となり、プロダクト開発体制も内製化が進んで、スピード感のある事業・サービス開発が可能な組織になっています。

━━どのように採用を進めてきましたか。

創業当初の2021年6月に、シード期として22.5億円を調達していたこともあり、2〜3年先を見据えた組織づくりを意識していました。むやみに採用を進めるのではなく、「事業を垂直立ち上げするために必要なタイミングで必要な人材を採る」ことを徹底してきました。また2024年9月にはアーリー期(シリーズA)で総額48億円の追加調達も行い、テクノロジーによる旅行体験の刷新、またグローバル展開を見据え、人事制度のアップデートと採用の強化を行いました。

資金調達そのものも“ひとつのタイミング”にすぎないと思っています。むしろ、描いていた事業戦略を実現するために必要だからこそ調達をし、その上で人材投資を強化するという順序を大切にしてきました。

創業初期は、ほぼリファラル(社員紹介)とSNS経由の応募が中心でした。代表の篠塚はシリアルアントレプレナーということもあり、発信に共感して手を挙げてくれる方も多かったためです。この「リファラル+SNS」でコアメンバーを少しずつ集めました。

ただし、リファラルだけでは限られたネットワークにしかアプローチできないことは、創業当初から懸念していました。特にエンジニアなどプロダクト系の人材については、より幅広い層にリーチする必要があると考え、ダイレクトソーシングのサービスも立ち上げ初期から導入し、職種ごとに最適なチャネルを選んできました。

スタートアップにとって採用コストは大きな課題です。当初はエージェントに頼らず自分たちの手で採用するというスタンスを徹底していました。しかし2024年後半以降は採用人数の増加に合わせ、エージェントの方々にもご協力いただきながら、採用を促進しています。

━━評価制度の特徴を教えてください。

創業から半年で等級・報酬制度を整え、1年目から半期ごとの評価を開始しました。現在は市場水準や業界の変化に応じて給与テーブルを見直しています。重視しているのは「納得度」で、いきなり評価結果がつたえられるのではなく、月次での1on1を通して、上長とのコミュニケーションを丁寧に行うことを大切にしています。また、育成や成長支援も重視しており、半年ごとに人材開発会議を行い、マネージャーと全メンバーに関する成長機会の提供について議論しています。

スタートアップで活躍できるデザイナー・マーケターは

━━デザイナー、PdM、マーケターの役割はどのように考えていますか。

デザイナーやPdMは創業初期からプロダクトの中核に関わり、コンセプト設計やカスタマー体験の意思決定に参加してきました。2025年4月には「デザインユニット」を立ち上げ、初期メンバーがユニット長を務め、ブランド形成やユーザー体験設計の土台を築いています。私たちの価値の源泉を担う重要な領域だと考えています。

2024年10月に実施したNEWTアプリの大幅アップデート。

マーケターは初期フェーズではSNSを中心にブランド認知を担いました。サービス自体がまだない段階で広告費をかけず顧客プールを貯める活動を行っていきました。そして次のステップが、販売促進。キャンペーンやクーポン、ポイント施策を通じて貯まった顧客の活性化を意識しました。特に旅行は高額かつ購入頻度の低い商品であるため、施策設計が重要です。現在はさらにステップが進み、販促を軸にしつつ、縦型動画やインフルエンサーとの連携など多角的なアプローチで認知とアクション獲得の両方を進めています。

「認知症の母の忘れられない旅」をテーマにしたショートドラマ。ショートドラマクリエイター集団「ごっこ倶楽部」と共同で制作し、2025年3月25日に公開した。4月時点で累計再生回数1000万回を突破した。

2024年5月には、無類の旅好きで知られる人気動画クリエイター・東海オンエアのてつや、りょう、としみつが「トラベル大臣」に任命されたNEWTのコアカスタマーであるU29に魅力を発信していった。

マーケティングチームは、売り上げを立てられる販促思考をベースに、培ってきたスキルにとどまらず担当領域を広げることをいとわない人材が活躍しています。採用時はこれまでの経験や特性を尊重しますが、フェーズに応じてSEOやデジタル広告など専門領域が広がり、求められるスキルも変わります。スタートアップにマーケターとして入るなら、自身のスキルの活かし方に柔軟性を持つスタンスが必要です。受け入れ側としても、たとえば海外マーケティングの経験がある方が、入社時点では直接活かす場面がなくても、将来的に役立ててもらえる余白を設けて採用しています。

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