坂茂氏らが手がけた仮設住宅にグッドデザイン大賞、関西万博「大屋根リング」は特別賞

日本デザイン振興会は10月15日、2025年度グッドデザイン賞の結果を発表した。5225件の応募の中から、最高賞となるグッドデザイン大賞には、被災地などで用いる仮設住宅モデル「DLT木造仮設住宅」が選出された。建築家の坂茂氏が率いる坂茂建築設計、施工会社である家元(金沢市)、木材・木製品を扱う長谷川萬治商店(東京・江東)が手がけた。

大賞を受賞した「DLT木造仮設住宅」。プレハブ型仮設住宅と同程度のコストで、恒久的に住める空間的質を提供できる。

本プロジェクトでは2024年の能登半島地震における応急仮設住宅として、これまでに石川・珠洲市と輪島市で計12棟、166世帯分の2階建て仮設住宅が建設されている。

木材に穴を空けて並べたものに木ダボを差し込むことで、接着剤を使わずにパネル化できる建材「DLT(Dowel Laminated Timber)」を用いている点が特徴。工期の短縮と安定した空間の効率的な供給が両立できるほか、解体せずに恒久的に使い続けることができる。東日本大震災や熊本地震の後に開発を続け、2024年の能登地震発生後の導入に至った。

大賞を受賞した「DLT木造仮設住宅」の建築モデル(上)とDLT。(下)

大賞を受賞した坂氏は1995年の阪神・淡路大震災以降、建築家の立場から避難所の環境や仮設住宅の改善に取り組んできた。

本年度のテーマである「はじめの一歩から ひろがるデザイン」に重ねて、齋藤精一審査委員長は次のように選出理由を述べている。

「今回の審査では、個人の小さな気付きや情熱が広がって、大きなうねりを生み出すようなデザインを評価しようという方針を掲げていた。大賞を受賞したDLT住宅は、坂さん自身が被災地の支援に一歩踏み出して30年が経ち、時と共に進化し続けているからこそ生まれた取り組み。これこそがデザインの力ですし、国内のみならず海外でも活動をされていることに敬意を表して満場一致で決定しました」(齋藤氏)。

坂氏も10月15日の受賞発表の場に登壇し、開発の経緯を明かした。

「従来のプレハブの仮設住宅は住み心地が悪く、数年で廃棄されてしまう。DLTなら地元の木材を使って、特殊な技術を必要とせずに3カ月で建てることができ、恒久的に使うことができる。実際に居住者の方々から『ここに住めてよかった』と反応をいただくことができました」(坂氏)。

今後は廃材として処分される予定の能登瓦や古材、大阪・関西万博の「大屋根リング」に使用されていた木材を活用した復興住宅のプロジェクトを進めていくという。

日本デザイン振興会深野弘行理事長、齋藤精一審査委員長、家元代表取締役 羽田和政氏、坂茂建築設計 坂茂氏、長谷川萬治商店代表取締役執行役員社長 長谷川泰治氏、永山祐子審査副委員長、倉本仁審査副委員長。

なお、「大屋根リング」は2025年度に新設された「未来社会デザイン特別賞」にも選出されている。

未来社会デザイン特別賞を受賞した「大屋根リング」。「2025年日本国際博覧会」に関連した当該年度のグッドデザイン賞受賞対象の中から選ばれた。

また今回のグッドデザイン大賞の選考は、前年度から一部変更があった。審査対象となる全20カテゴリから最も優れた1件を金賞として選出。20の金賞の中から大賞を選出するプロセスが採用された。

advertimes_endmark

この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事

    タイアップ