東北の秋の風物詩といえば「芋煮会」だ。河原近くのコンビニには薪が積まれ、新聞には芋煮会に適した気候かを示す「芋煮会予報」が掲載される。山形のしょうゆ味・牛肉か、宮城の味噌味・豚肉か――毎年恒例の「芋煮論争」がインターネット上で盛り上がる。
そんな中、今年もまた、食文化を通じて地域が自らを発信する2つの動きが話題を集めた。
ひとつは、伝統と地域連携を軸に全国へ発信を続ける山形県の「日本一の芋煮会フェスティバル」。もうひとつは、宮城県・仙台の複合施設、アクアイグニス仙台が仕掛けた「イタリア風芋煮」だ。
食を通じて地域と人をつなぐ“コミュニケーションの場づくり”から、いま求められる発信のかたちを探る。
伝統を守り、仲間と育む「日本一の芋煮会フェスティバル」
山形の秋を象徴する「日本一の芋煮会フェスティバル」は、巨大な鍋と重機で約3万食の芋煮をふるまう恒例行事。その開催趣旨を「山形の食文化・秋の芋煮会を全国に発信し、地域産業の振興と地場産業の活性化を図る」ことを掲げている。フェスティバルを支える上で最も重視されているのは、この理念を軸に、行政・企業・市民が一体となって準備・運営を行うことだと実行委員長は語る。
このとき協賛企業もまた、単なるスポンサーではなく「開催趣旨に賛同する仲間」として迎え入れられている。