産業編集センターが分析 インターナル施策のトレンドは、エンゲージメント向上の重視

人的資本の開示義務化の流れを受け、上場企業ではエンゲージメントスコアの可視化が重視されつつある。最新のインターナルコミュニケーションの成功例に見える共通ポイントや運用におけるコツを、産業編集センターの相山大輔氏が解説した。

かつて企業は利益追求やシェア拡大を最優先に掲げ、縦割り組かつトップダウンで動いていた。

しかし、現在は状況が一変。従業員の世代によって価値観が大きく異なり、特に若い世代は「一社に勤め上げる」という発想自体を持たない。求心力の源泉は利益ではなく、社会のために存在する理由や理念への共感へと移り変わっている。働く場や商品を選ぶ基準も、企業の志や社会的意義に共感できるかどうかに重きが置かれるようになった。

こう話すのは、インターナルコミュニケーションに特化した制作・コンサルティング会社、産業編集センターの相山大輔氏。25年以上にわたり多様な企業の広報支援に携わってきた。社会の変化を受けて、求められるインターナルコミュニケーションの設計も変化しているという。

図 最新のインターナルコミュニケーション設計ポイント

図 最新のインターナルコミュニケーション設計ポイント

最新の設計ポイントで特に注目したい事柄のひとつが、社内外をつなぐ「地続きの情報発信」だ。SNSの普及で社内の出来事や従業員の声は簡単に社外に届くようになり、「インターナルとエクスターナルは別物」という考え方は、もはや通用しなくなっている。だからこそ、最初から社内と社外を分け隔てず、シームレスに発信する姿勢が求められる。

代表例が、ニチレイが立ち上げたオウンドメディア「Circle」。当初は紙媒体だったが、働き方の多様化を背景にウェブへ移行。ウェブを通じて社外に広く公開することで、従業員だけでなく取引先や学生など幅広い層に同社の志や取り組みを伝える場となった。

社内外の境界を意識的に取り払うことで、従業員は自社への誇りが高まり、社外へは共感や信頼を醸成できる。相山氏は「今は嘘が通じない時代。社内と社外で言い分を変えるのではなく、ひとつのストーリーを一貫して伝えることが重要だ」と強調する。

パーソナル広報が今後の鍵に

また、今後の重要な視点が「パーソナル広報」。インターナルコミュニケーションの最大の強みは、対象が「特定多数」であることだ。

誰に届くか分からない社外マーケティングに対し、年齢や勤務地など従業員の属性が明確に分かっているため、最適なメディアと内容を組み合わせて情報を届けやすい。「ターゲットが明確なのに、社内報ひとつで全員をカバーしようとするのはもったいない」と相山氏。

例えば、オフィスワーカーにはパソコンで読めるウェブ記事、製造現場には休憩所のサイネージやラジオ放送、営業職にはスマートフォンを活用した発信を行う。各層の行動特性に合わせチャネルを設計することで、情報が届きやすくなる。

ある大手ガラスメーカーでは全社サイトを「親サイト」と位置づけ、各事業部や拠点ごとに「子サイト」を設置。従業員はまず所属拠点の子サイトを訪れ、社食メニューやバス時刻表といった身近な情報を確認する。その流れで、全社的なビジョンや社長メッセージといった記事も自然に目に入る仕組みに。閲覧率が高まり、企業理念や方針を伝える機会も増えたという。

そして欠かせないのがKGI・KPIの設定。仮に「エンゲージメントスコアの向上」がKGIであれば、その達成に必要なKPIを設定することが重要だ。その上で、シームレスかつ一人ひとりにパーソナライズされたインターナル施策が今後の潮流になるだろう。

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相山大輔氏

産業編集センター
はたらくよろこび研究所
本部長

お問い合わせ

株式会社産業編集センター

〒112-0011 東京都文京区千石4-39-17
TEL:03-5395-5311
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