音楽を活用したインナーブランディングのサービスを展開するLITORY。中核事業のひとつ「VISION SONG」は、企業の「ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)」を楽曲化し社内浸透させる取り組みだ。
平田圭氏は2020年に同社を設立。音楽活動や営業・マーケティング、コーチングの経験を活かし、音楽と心理学、ビジネスを掛け合わせた企業向けソリューションを提供する。「MVVを頭では理解できても、心の底まで届きにくい。しかし曲にすると音楽が感情に直接働きかけるので前向きな感情を呼び起こし、目標を意識した行動に結びつきやすくなります」(平田氏)
LITORY 代表取締役 平田 圭氏。
MVVを音楽に乗せ共有
代表事例は、愛知県の老舗卸売業・ダイケンフードソリューションズでの取り組み。創業55年目を迎えた同社は新たな中期経営計画を発足。企業が目指す姿を社員に自分ごととして浸透させることが必要だった。そこでLITORYはワークショップを実施し、音楽で目指す姿を口ずさめるように。社員が自らの仕事経験を振り返りながら理念と結びつける場とし、生まれた言葉を歌詞に落とし込んだ。完成した楽曲は動画化され、社内行事や自社イベントで披露されている。社員からは「イベントの準備中に曲を流すと一体感が高まった」「自分の行動と理念がつながった」といった声が寄せられた。
ダイケン商会が掲げる「未来を創造する食のデザインカンパニー」を体現し、「Safe and Secure=安心・安全」「Delicious=おいしさ」「Best by=賞味期限」といった食品デザインの基本理念や価値観を歌詞と映像に織り込んだ。
「ワークショップでは、音楽の趣味を語り合うだけで社員同士の距離が縮まりました。身構えていた社員も、過去の仕事を思い出して歌詞を考えるうちに、前のめりになって参加してくれるのです。曲づくりの過程そのものが、一体感や共鳴を生む瞬間だと実感しましたね」(平田氏)。
人間は、物事を達成するイメージを抱くことができると現実でも良い方向に進めることは、NLP(神経言語プログラミング)の領域でも証明されている。本事例は、LITORYのコーチングのノウハウを活用し、単なる企業理念の理解や共感を超えた「共鳴」による行動促進を実現した好例といえる。
図 聴覚から始まる感情訴求
アウトプットには生成AI
最近は音楽生成AIを活用した新たな取り組みにも注力。従来、企業理念を反映した社歌を一から制作するには多大な時間と費用がかかり、導入ハードルが高かった。しかし現在は事業部や部署ごとに独自のビジョンを掲げる企業が増え、それぞれの思いを楽曲化したいというニーズが高まっている。
そこで活用できるのが生成AIだ。歌詞を考えるワークショップに参加した社員同士が、今の仕事での価値観形成の背景や信念、姿勢を共有する。互いの価値観を理解することで信頼関係が構築され、プロセス自体が共鳴を生む。楽曲がAI作曲だとしても、参加者にとっては記憶と感情を伴う特別なものとなり、日常的に聴くことで行動をリマインドする役割を果たすことができる。
生成AIの導入でコストを抑えながら短期間で高品質な曲が作れることもメリットのひとつだ。平田氏は「リアルな感情やその感情を支える背景(ストーリー)の言語化は人が担い、アウトプットはAIに任せる」ことが有効だと話す。音楽とAIの融合は、インナーブランディングに新たな可能性を切り開こうとしている。

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