リテールメディアプラットフォーム「ARUTANA」が購買に効く3つの理由

リテールメディアが広告市場で存在感を増す中、その活用は新たなフェーズへと移行しつつある。NTTドコモグループのDearOne(ディアワン)は、リテールメディアプラットフォーム「ARUTANA(アルタナ)」を通じて、購買データ活用の新たな可能性を切り拓いている。

9月25日、26日に開かれた「アドタイ・フォーラム2025」では、同社執行役員の川村兼一郎氏が登壇。成功事例が先行するアメリカと日本の市場構造の違いを解説し、複数のリテール企業をネットワーク化することでメディア価値を創出する「ARUTANA」の提供価値と、その具体的な成功事例、そしてテレビCMから店頭での購買までを1つのIDで捉える「1IDフルファネル」構想について語った。

リテールメディア市場成長への課題

DearOneはもともとスマートフォンアプリの開発・運用を手がけており、40~50社のリテール(小売)事業者と取引関係にあったことがリテールメディア事業のベースになっている。これまで非公開のアプリも含め200以上のアプリ開発、運用実績があり、累計ダウンロード数は1.2億、MAU(月間アクティブユーザー数)は2600万に上る。アプリ開発事業から派生し、顧客の行動分析やエンゲージメントツール活用、CDP構築などを支援するグロースマーケティング事業にも展開している。

DearOne 執行役員 ビジネス推進部 ゼネラルマネジャー 川村兼一郎 氏

リテールメディアプラットフォームの「ARUTANA」をリリースしたのは2023年11月。川村兼一郎氏は「2年弱でようやく結果が出てきたところ。ここまで大変な道のりでした」と振り返った。

リテールメディアは、店内のPOPやデジタルサイネージ、またECサイトやアプリなど、リテール回りのメディア全般や、ID-POSデータなども含めそれらを活用した広告手法を指す。市場は大きく伸びており、「リテール側にとっても収益化への意欲は2年前と比べても格段に高まってきた」と川村氏も手応えを得ている。

一方で課題も浮き彫りになっている。先行する米国市場はウォルマートやコストコ、ターゲットのようなリテール領域の巨大企業が市場を押さえ、プラットフォーム化が急速に進んだ。一方、約2300のリテール事業者が存在するといわれる日本は環境が異なる。

「米国と日本では、1社あたりで取得できるアプリやWebのユーザー数、データの量がまったく違います。流通量も店舗の大きさも違うため、米国の成功モデルをそのまま日本に持ち込んでもうまくいかない。メーカーは数多あるリテール企業に個別に出稿せざるを得ず、非効率が生じているのです」(川村氏)

「デジタルの棚は無限」ARUTANAが目指す価値創出

ARUTANAは多くのリテール事業者の広告枠を束ね、ネットワーク化していることが特徴。それには先に挙げたような日本市場ならではの理由があった。川村氏は「『なぜライバルと組まなければいけないんだ』と叱られながらも、リテール企業を束ねてネットワークをつくることに奔走しました。各社には『リアルな棚は有限だが、デジタルの棚は無限です』と伝え、データを統合し、媒体価値を大きくしていくことを1社1社説いて回っています」と述べた。

その結果、「ARUTANA」は現在、累計4250万MAU、月間3億2200万インプレッションという規模にまで成長した。さらに年内には、誰もが知る大手企業も参画し、規模は膨れ上がる見込みだ。ドラッグストア、コンビニ、ホームセンターなど、複数業種のリテール公式アプリに対して横断的に広告を配信できるプラットフォームである。

川村氏は「ARUTANA」が効く理由を3つ挙げた。1つ目は「購買に近いタイミング」であること。ユーザーは店内に入ってから、レジ前や売り場を歩きながら能動的にアプリを立ち上げる。膨大な商品が並ぶ中で、お得な情報を求めて自らアプリを見るため、ながら視聴にならず視認性が非常に高い。

2つ目は「購買ポテンシャル層へのリーチ」だ。リテール公式アプリの会員は、ポイントを貯めたりお得な情報を得たりすることに積極的なユーザーで、その多くは生活圏や通勤経路にある店舗を選んでいる。そのため、そのリテールでの購買率・購買量が圧倒的に多く、売上の大部分を占めるロイヤルカスタマーに直接アプローチできる。

そして3つ目が「環境的文脈依存効果」だ。人間が何かを思い出す(想起する)には、それが必要な場所、つまり商品棚のあるリテール店頭が最も効果的という考え方だ。店頭でリテールアプリを通じて広告に接触することで、買うべき商品を再想起させることができる。これがラストワンマイルで効果を発揮するという。

店頭のひと押しを生んだ配信事例

食品企業のLINE応募キャンペーンでは、リテールアプリの特性上CTRは7.78%と高水準だったが、それ以上に「ARUTANA」非利用のキャンペーンと比較して応募件数が減少しなかった点が評価された。

消費財メーカーのポイント還元キャンペーンでは、購入頻度が低い商品にもかかわらず、過去3カ月未購入だったユーザーの新規購入が78.5%を占め、カテゴリー内のシェアも50%増加した。最近では、ブランディング目的での活用も増えている。ある食品メーカーでは、15秒の動画広告を配信。スキップ可能な仕様だったが、完全視聴率が25%に達し、高い注目を集めた。

食品のパッケージリニューアル告知では、広告をクリックしたユーザーの購買金額が約2倍になった。この事例で興味深いのは、広告の接触頻度(フリークエンシー)を月4回に増やすほど売上が伸びたことだ。テレビCMなどと比べて接触時間は一瞬だが、他の媒体で刷り込まれた情報が、店頭での最後のひと押し(再想起)につながったと考えられる。

さらに、ある医薬品メーカーの花粉症対策商品ではテレビ、デジタル広告と「ARUTANA」を組み合わせて展開した結果、広告非接触者と比較して、「ARUTANA」接触者の購買は1343%(13倍)という驚異的な数字を叩き出した。

テレビCMから購買までをつなぐ構想の実現へ

川村氏は今後の展望について、「国内流通の90%を占める実店舗での購買接点をすべて押さえたいと考えている」と述べた。

そのために、ドコモの持つ属性データや同じく株主であるunerryの行動データ、さらにはテレビ視聴データと「ARUTANA」を連携させようとしている。「朝テレビCMを見てから30分後には75%が内容を忘れると言われるが、店頭で再想起させることで、コンバージョンを最大化できる」という。

目指すのは「1IDフルファネル」の世界だ。テレビCMを見たのか、そのユーザーはどんな属性か、そして店頭でその商品を買ったかどうかだけでなく、バスケットの中に他に何が入っていたかまでを、1つのIDですべて紐づける。この構想はすでに進んでおり、メーカーのマーケティング施策にフルファネルで貢献できる世界が近づいているという。

最後に川村氏は「特定のデータが取得可能か、このリテールに出稿できるかなど、どんな相談でも受け付けているので、ぜひ問い合わせてほしい」と呼びかけた。

お問い合わせ

株式会社DearOne

URL:https://www.dearone.io/arutana/

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