業績好調時は「採用強化」、不調だと「戦略的な人材配置・活用」を重視する傾向顕著に

タナベコンサルティングは、全国の企業経営者、役員、経営幹部、管理職、人事責任者・担当者を対象に実施した「2025年度 人材・組織の取り組みに関する企業アンケート調査」の結果を発表した。業績状況によって「注力すべきHR戦略領域」が大きく異なることや、離職率が低い企業では「上司・部下間の対話促進」「柔軟な勤務制度の導入」の実施率が相対的に高いことが分かった。

業績好調だと成長を見据えた中長期的な取り組み

調査の概要は以下の通り。

[調査方法]インターネットによる回答
[調査期間] 2025年6月2日~6月20日
[調査エリア] 全国
[有効回答数] 242件

アンケート回答企業の過去5年間の業績と「(自社が)注力すべきHR戦略領域」を掛け合わせて分析した結果、業績が不調と回答した企業では、「戦略的な人材配置・活用」(27.8%)や「人材の定着・エンゲージメント向上」(24.1%)が上位を占めた。他方、業績が好調と回答した企業では、「人材採用の強化」(23.4%)や「次世代リーダーの育成」(19.1%)の割合が多く、成長を見据えた中長期的な取り組みを重視していることが分かった。

グラフ その他 業績別の注力領域

業績別の注力領域

体制整備状況が可視化に影響

人事体制別に人的資本の可視化・評価の取り組み状況を比較したところ、CHRO(最高人事責任者)やHRBP(HRビジネスパートナー)を設置している企業では、「人事評価にスキル・貢献指標を取り入れている」(45.0%)や「人的資本に関するKPIを設定し、運用している」(40.0%)、「タレントマネジメントシステムを導入し、スキルや経験をデータベースで管理している」(35.0%)のいずれも高水準だった。一方、こうした体制がない企業では、取り組みの実施割合が2割未満にとどまる項目も多く、体制整備の有無が可視化の進展度合いに大きく影響していることが明らかになった。

グラフ その他 CHRO・HRBPの設置と可視化・評価体制

CHRO・HRBPの設置と可視化・評価体制

今後、特に強化したいテーマを問う設問では、「次世代リーダー育成」(34.3%)と「管理職のマネジメントスキル強化」(22.7%)が上位を占めた。調査結果では「実務経験を積んだ層に対して、マネジメント力や将来の組織運営を担う力を高める意識が強まっている」としている。加えて、「営業力・マーケティング力の強化」(8.7%)や「DX・デジタルリテラシー習得」(8.3%)も一定の関心を集めており、「経営と現場の両面で推進力を担う人材づくりが今後の鍵となりそうです」としている。

グラフ その他 今後のテーマに関する結果

今後のテーマに関する結果

離職率別に「定着・エンゲージメント向上施策」の割合を分析すると、離職率が5%未満の企業では、「上司・部下間の対話促進」(58.1%)や「柔軟な勤務制度の導入」(30.1%)の実施率が相対的に高かった。一方、離職率が10%以上の企業では「社内コミュニケーションの強化」(58.7%)に偏っており、「報酬・処遇の改善」や「柔軟な勤務制度の導入・拡充」が相対的に低い傾向が見られ、「対話に加えて制度面の対応も重要なポイントとなりそうです」としている。

グラフ その他 コミュニケーションが離職率低下に

コミュニケーションが離職率低下に

成果・成長の「見える化」がポイント

調査結果では、「総括・提言」として以下を記載している。

(1)戦略人事体制への早期移行による人的資本マネジメントの高度化
(2)“育成・活躍・定着”の強化による中核人材の成長促進
(3) “コミュニケーション”と“成長の可視化”を軸とした自律的な組織文化を育む環境づくり

このうち(3)については、「コミュニケーションギャップや主観的評価は組織運営のボトルネックとなります。特に中堅・中小企業においては、幹部と現場の断絶を埋める双方向の対話の場づくりや、成果・成長を『見える化』する仕組みの整備が、組織の自律性と活性化につながると考えられます」とコメントしている。

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