ニューヨーク、ロンドンをはじめとした世界各国の主要都市で開催されているマーケティング&コミュニケーションのプレミアイベント 「Advertising Week(アドバタイジング・ウィーク)」のアジア版である「Advertising Week Asia(アドバタイジング・ウイーク・アジア)」が12月2日~4日に開催された。「AIとの共創」「AI時代の組織論・マネジメント」「AIとクリエイティビティ」「AI時代のメディアと広告の信頼性」など数多くのAI関連セッションが開かれた「Advertising Week Asia」のアドバイザリーカウンシルメンバーに、今回は「AIと人間の創造性が融合する新時代の広告業界」をテーマに、3つの質問を投げかけました。
「12月2日~4日に開催された「Advertising Week Asia2025」。1月20日までオンデマンド配信視聴ができる。
生成AIの進化は、広告ビジネスに携わるあらゆる人材の仕事の前提を大きく変えつつあります。単なる効率化ツールではなく、企画立案や戦略構築、顧客体験デザインにまで関与する共同クリエイターとしての役割が広がる中、アドパーソンは何を強みにし、どのようなスキルと働き方をアップデートすべきなのでしょうか——。複数の事業会社でCMOを務め、生成AIを活用したブランド構築にも取り組む永田大輔氏に、一問一答形式で回答してもらいます。
AI時代の仕事のリアルに迫る
Q1:ずばり、広告産業は生成AIの浸透によって、どのような方向に変化・進化をしていくと思いますか?
生成AIの進化は、広告産業を「情報産業」から「意味産業」へと再定義する契機になると感じています。
これまで広告は「誰に・何を・どう伝えるか」という情報設計の領域であり、人がデータを解釈し、概念化することに価値がありました。しかし、AIが文章・画像・映像・体験の“初稿”を担うようになった今、単なる表現生成は差別化の軸ではなくなります。むしろ人間の創造性は「問いの設計」や「意図の翻訳」「文脈の編集」にシフトし、広告人は“AIを動かすプロデューサー”へと進化していくでしょう。
一方で、アルゴリズム主導の最適化が進むほど、社会全体が「効率の均質化」に向かうリスクもあります。だからこそ、ブランドの存在意義を定義し、“非効率な情緒”をどう戦略的に残すかが、次の広告の本質的テーマだと考えます。
Q2:皆さんそれぞれの職種、仕事において、AIは日々の仕事にどのような変化をもたらせていますか?
私は事業会社における経営/CMOという軸と、複数企業のマーケティング領域における課題解決プロデューサーという軸の二刀流で仕事をしていますが、AIは「思考の速度」と「チームの対話構造」を大きく変えました。
具体的には、生成AIを使ってブランドアーキテクチャやキャンペーン構想を“概念レベル”で可視化することで、経営・開発・デザイン・営業といった多職能メンバーが、同じ言語で意思決定できるようになりました。かつて各部署が共有のための社内資料を作ることに費やしていた時間を、「なぜこのブランドは存在するのか」という本質的議論に充てられるようになったのは、極めて大きな変化です。
つまりAIは、人間の“思考の初速”を上げるだけでなく、組織の“共通言語”を再構築する装置になりつつあります。
Q3:皆さんが属する企業において、今後AIを用いて、どのような価値を創出していきたいと考えていますか?
今後は、AIを単なるツールではなく、「文化を拡張するパートナー」として位置づけたいと考えています。
マーケティングは本来、人と文化をつなぐ仕事です。AIが人の感情や文脈を理解し、ストーリーやデザインを共創できるようになるほど、私たち人間の役割は“世界観の設計者”としての精度を問われます。私は、ブランドのナラティブをAIと共に拡張し、企業が社会にどんな意味を生み出すかを設計する「意味創造プロデューサー」への進化を目指しています。
「AIが“作る”時代に、人間は“意図を定義する”ことで存在価値を示す」この構図こそ、これからの創造のリアルだと考えています。
回答者プロフィール
AIによって広告産業の未来はどこに向かうか?(4人の識者の回答)
Q1:ずばり、広告産業は生成AIの浸透によって、どのような方向に変化・進化をしていくと思いますか?(11月21日公開済み)
Q2:皆さんそれぞれの職種、仕事において、AIは日々の仕事にどのような変化をもたらせていますか?(11月26日公開済み)
Q3:皆さんが属する企業において、今後AIを用いて、どのような価値を創出していきたいと考えていますか?(12月1日公開済み)

