X上の動画広告表現の可能性を広げる試みとして、X Corp. Japanと電通がユニークな取り組みを実施した。ファイントゥデイが展開するメンズブランド「uno(ウーノ)」が参画し、電通のクリエイターを対象にアイデアを広く募集。企画を提案した約20組の中から、CMプランナーの河野正人氏の案が採用された。
スマホでの動画視聴が拡大する中、Xでの情報接触や拡散行動も、動画を伴ったものが増えている。今回の取り組みを主導したX Corp. Japanの中川百合氏と電通クリエイティブディレクターの中川賢太氏のほか、広告主として参加した「uno」ブランドマネージャーの井村亮哉氏と河野氏を交え、企画の経緯やXにおける動画広告の可能性について聞いた。
X×動画プロモーションに勝機を見出す
━━「uno」ブランドの「フェイスカラークリエイター」について、またブランドが抱えていた課題についてお聞かせください。
井村:「uno」は、男性の美容の入門編として、第一歩を踏み出してもらうべくスキンケアをメインに、メイク、ヘアケアといった様々な商品を展開しています。その中でも今回のプロモーションは特にメンズメイク、男性用BBクリームの市場拡大を目指して実施したものです。
ファイントゥデイ 日本事業本部 ブランドマーケティング部 unoG ブランドマネージャー 井村亮哉 氏
肌荒れをカバーしながらケアする男性用BBクリームの市場は、スキンケアほどまだ一般的ではなく、「周りに使っている人が何人いるか」という程度です。そのため、この認知と使用の拡大を今回のプロモーションの大きな目的としていました。
テレビCM、Web広告、PRなど幅広く展開していますが、SNS施策はアイデアも含めて課題感はあったので 、今回を機会にさらに強化していきたいと考えていました。
「uno」の男性用BBクリーム「フェイスカラークリエイター」
━━なぜこの3社の座組みでの実施に至ったのでしょうか。
中川(百):多くの広告主のみなさまが広告キャンペーンの企画立案を行う際、SNS施策はメディアプランの最後に想起されることが多いことが課題と感じていました。プランニングの初期段階からXの声を活用し、クリエイティブに活かすこともできますし、私たちもそうしたお手伝いをしたいと考えています。
X Corp. Japan Nextチーム Agency Collaboration Head / Senior Brand Strategist 中川百合 氏
Xはテキスト情報のメディアというイメージが強いかもしれませんが、動画視聴の割合は増加しています。この領域でXをもっとご活用いただけるはず、との確信がありました。そんな課題を電通の中川(賢)さんに話したところ。X向けの動画をクリエイターに皆さんと制作いただくというチャレンジをご一緒することになり、さらに「uno」に もご協力いただけたことで、今回のプロジェクトが実現しました。
20の提案から選ばれた「あるある」企画
━━今回実施したXへの動画広告出稿、「荒れる仕事あるある」キャンペーンについて、どのような経緯でこの企画が採用されたのか教えてください。
中川(賢):所属する電通第4CRプランニング局内で公募したところ、約20組から提案がありました。Xならではの「動画」というフォーマットで、いかに「uno」のブランドメッセージを効果的に伝えられるか、そして「バズる」可能性があるか、という点を重視して選考しました。20組のクリエイターからの提案はそれぞれまったく異なるコンセプトのアイデアだったのが興味深かったですね。短尺のものもあれば、2〜3分の長さのものもありました。最終的に採用した河野さんの「荒れる仕事あるある」という切り口は、メンズメイクというカテゴリーに対して、これまでとは異なる共感の入り口を提供できると感じました。
電通 第4CRプランニング局 CRトランスフォーメーション4部 クリエイティブディレクター 中川賢太 氏
河野:提案時は100ページ近い企画書を用意していくつかの案をご提案したのですが、美容ではなく仕事文脈で動画をつくっていきたいという思いをプレゼンでお伝えしました。「あるある」であればバリエーションを広げやすいですし。
中川(百):ユーザーが自身の体験や感情を気軽に吐き出したり共有したりできるXの強みを活かす方法として、ユーザーと「フェイスカラークリエイター」とが地続きになるコンテンツ「荒れる仕事あるある」の可能性に期待しました。それをテキストではなく動画というフォーマット、しかもそれを何本も制作するという目論見もユニークだと感じました。
━━制作にあたり、気を配ったことはありますか。
河野:誰かが傷つくような表現を避けるため、細心の注意を払いました。特定の役職やジェンダーに偏る内容は避け、より多くの人に共感してもらえるよう、言い回しや伝え方を調整しました。結果として、ポジティブな発話が生まれるようなクリエイティブになったと感じています。
電通 第4CRプランニング局 CRトランスフォーメーション8部 CMプランナー/コピーライター 河野正人 氏
中川(賢):「撮影はしない」という方針を当初から決めていたため表現上の制約はありましたが、その中でありものや比喩を用いた表現で、より幅広い共感を得る工夫をしました。これにより、特定の人物像に固定されず、多様なユーザーが自分ごととして捉えやすくなったと思います。
時間ギリギリのときに限って…
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荒れる仕事あるある「出力作業」 pic.twitter.com/nx2ZzDQToG— uno(ウーノ) (@uno_official) November 10, 2025
この動画の拡散、よろしく尾根ギアします。
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荒れる仕事あるある「資料確認」 pic.twitter.com/Yt5MmFMrfl— uno(ウーノ) (@uno_official) November 20, 2025
動画を起点に口コミや対話が連なっていく
━━実際に展開してみて、どのような成果や反響がありましたか。
井村:施策を開始した11月度では、「フェイスカラークリエイター(カバー)」が二ケタ伸長(116%)。2025年ではunoブランド史上最高伸長率を記録しました。X内での認知拡大が購入者拡大につながったと考えられます。
配信本数が増えるにつれて、コメントやいいねが加速度的に増加しました。特に、「猫の癒し」など、自身の行動がばれているかのような 「あるある」には大きな反応が集まり、ターゲット層が仕事で疲れているという実態を改めて認識しました。
また、動画に採用されている「仕事が荒れても、顔印象は荒れさせない。」というキャッチコピーの通り、BBクリームを「顔を彩る」というより「気になるニキビやシミをカバーするガジェット」として捉える見せ方が、忙しい現代人にとってライトなアプローチとして受け入れられ、エンゲージメントは高かったと分析しています。
━━キャンペーン全体を通して、Xというプラットフォームの特性や、動画広告の活用について、各社からどのようなポイントが見えてきましたか。
井村:Xは、世の中の「空気感」や「今」を捉えることができるプラットフォームだと改めて感じました。今回のキャンペーンでは、肩の力を抜いた、ライトなエンターテインメントとして楽しめるクリエイティブを展開できたことが大きいです。また、ユーザー同士の口コミや対話が連なっていく様子は、Xならではのユニークな点であり、我々が投げかけた「あるある」が、さらに多様な解釈やツッコミを生み出し、周囲を巻き込みながら楽しめるという、まさにXらしい展開だと思いました。
中川(賢):Xにおける動画のあり方は、まだ確立された型がない、まさに「開拓期」だと考えています。TikTokやYouTubeとは異なる、Xならではの動画の可能性を模索する中で、今回の「荒れる仕事あるある」のように、短く、共感を呼ぶコンテンツを複数展開するというアプローチは、一つの有効な解になり得ると感じました。選ばれなかった企画も含め、今回集まった各クリエイターの多様なアイデアは、今後の「X×動画」の可能性を広げる貴重な示唆となったと思います。
中川(百):今回のプロジェクトは、X社が当初抱えていた「動画広告の活用が進んでいない」という課題に対し、電通、ファイントゥデイの両社とともに、まさに「当たり前を壊す」挑戦でした。動画広告の尺や形式に関する既成概念をアップデートし、クライアントとともに新しい発見をしていく。まさに、私たちが目指していた理想的な共創の形が実現できたと感じています。
多くの電通クリエイターの皆さんがX動画にチャレンジしたいと思ってくださったことは、それだけ、X動画がクリエイティブのメインストリームになっていることを示唆しているようで、大変嬉しく思いました。
実は、Xの動画広告は、Grok(AIシステム)によるターゲティング精度、そしてコスト効率の面でも向上しているので、参入いただきやすい環境が整ってきています。Xの特性を最大限に活かした施策を、これからもいろいろな企業やクリエイターとチャレンジしたいですね。
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