アマゾンジャパンは2025年4月、「Prime Video(プライムビデオ)広告」を日本で提供開始した。購買直結の広告プロダクトを展開してきた同社にとって、「Prime Video広告」のローンチはフルファネル戦略を本格展開する転換点となった。
この立ち上げに伴走してきたのが電通デジタルだ。Prime Videoに広告枠を導入したことで、広告主のマーケティング活動にどのような変化をもたらしたのか。また、両社の連携はどのように進められてきたのか。アマゾンジャパンの高村幸恵氏、電通デジタルの岡田健太郎氏、藤田紗也氏が、その協業の成果と今後の展望について語った。
フルファネル戦略の実現度が向上
━━「Prime Video広告」をローンチしたことで、2025年のマーケティング環境にはどのような変化があったと感じますか。
高村:Amazon Adsは、現在国内で展開するAmazon関連サービスおよびサードパブリッシャーを合わせて月間推定広告リーチが6500万人以上にのぼり、認知からコンバージョンまでの「フルファネル・プランニング」を提唱しています。ただ、リテールメディアとして評価をいただく一方で、テレビCMや他のストリーミングサービスの動画広告と比較した際に、大規模なリーチやブランド認知の獲得においては十分とはいえませんでした。このたびのPrime Video広告の登場で認知領域をより強化し、一貫したソリューションの提供が可能となりました。
アマゾンジャパン Amazon Ads Principal Video Strategy & GTM, JP 高村幸恵 氏
具体的には、以下3つの変化があります。1つ目は「フルファネルソリューションへの進化」。Prime Video広告はグローバルで月間平均3億1500万人以上にリーチでき、ブランド認知獲得と購買促進を同時に実現できる環境が整いました。
2つ目は「データドリブンな意思決定のさらなる促進」。Amazonの購買シグナルやPrime Videoの視聴シグナルを活用し、より精度の高い広告配信と効果測定が可能になりました。3つ目は「新しい広告体験の創出」。インタラクティブ動画広告やインタラクティブポーズ広告(*1)、FITO(ファーストインプレッションテイクオーバー=*2)といった新フォーマットにより、視聴者とブランドの新しいエンゲージメントが生まれました。米国の調査では、ブランド認知が30%向上、購入意向が28%高まるという結果(*3)も出ています。
*1:日本では2026年上半期に提供開始予定
*2:日本では2025年10~12月期にベータ版として提供開始
*3:「ブランド認知」はKantar社の調査、米国、2024年3月8日~3月24日/「購入意向」はKantarインタラクティブ広告コンテキストラボ調査、米国、2024年3月7日~3月23日
岡田:当社はこれまでもAmazon DSP(広告主向けの広告配信サービス)やスポンサー広告などでクライアントのマーケティング活動をサポートしてきましたが、Prime Video広告の登場により、フルファネル支援の実現度が格段に向上しました。クライアントは一般的に、新しい広告メニューの導入には慎重になるケースが多いですが、Prime Videoは既に高い認知度があり、すぐに多くのクライアントに導入をご検討いただいています。
電通デジタル 第3アカウントプランニング部門 部門長 兼 マーケティングコミュニケーション統括室 営業戦略部 事業部長 岡田健太郎 氏
藤田:Amazon.co.jp上に商品を持たない広告主の出稿が増えたことが非常に印象的でした。Amazonの購買シグナルやKindle、Prime Videoの視聴シグナルも活用できるようになったことがポイントだと考えています。
━━ローンチにあたり、電通デジタルが最も注力した取り組みは。
岡田:「効果の証明」です。当社は、包括的な効果測定ソリューションであるAmazon Marketing Cloud(AMC)を長年活用してきたため、PrimeVideo広告においてもローンチ前から分析体制を構築し、「認知・リーチが実際の購買にどう結びついたか」をデータで証明する分析手法をいち早く確立しました。これにより、Amazon内での購買だけでなく、アプリのダウンロード、来店計測、オフライン購買といった、クライアントが重視する多様なKPIについても効果を証明できる体制を整えました。実際、多くのクライアントで成果を実証できています。
全社的な推進体制と密な連携が協業を加速
━━電通デジタルとの協業だからこそ実現できたことや価値について教えてください。
高村:大きく3つあります。1つは「新プロダクトへの理解度の高さ」です。電通デジタルはPrime Video広告やAMCを実際に使い込むことで、プロダクトへの理解を深めていただきました。それにより、当社が当初想定していなかった指標も提案いただきました。
2つ目は、「徹底した事前準備と先回りの提案力」。お客様からのご質問に対して、その背景にある課題や次に求められることまで想定して準備されるため、その度に議論を重ねました。結果、互いに知見が深まり、より精度の高いプランニングを実現できたと感じています。
3つ目は「全社的な推進体制」です。部門横断的なプロジェクトを発足し、最新情報のインプットや課題の吸い上げを徹底されていると感じます。これにより、クライアントニーズの集約や業界標準の議論など、当社だけでは拾いきれない貴重なインサイトを共有いただき、プロダクト改善を進めることができました。
━━電通デジタルは、どのような体制や準備を整え、支援を進めてきたのでしょうか。
岡田:Prime Video広告のローンチに先駆けて、当社では部門横断の全社プロジェクトを発足しました。最新情報を現場の営業担当者へ迅速に共有する仕組みづくりや資料づくりを徹底しプロジェクトを推進。「どのような提案が可能なのか」「この部分は改善できないか」といった、約500人の現場の声も集約しながら、Amazon Adsの皆さんと活発な意見交換を行いました。
中でも印象的だったのは、Amazonのリテール部門やセラーサービス部門との連携です。クライアント内の販促部署とブランド部署をつなぐような、部署横断での支援を実現できたことは、クライアントの事業貢献の観点で大きな成果となりました。
藤田:ただ単に広告を運用するのではなく、クライアントの事業全体の最適化を支援することを意識していました。ローンチ直後は予期せぬトラブルが発生することもありましたが、その都度クライアントにとって最善の対応を最優先に考え、オペレーションのフローや社内体制、Amazon Adsとの連携方法を柔軟に見直してきました。この半年間、毎日改善を重ね、ようやく完成形に近づいてきたと感じています。
電通デジタル プラットフォーム部門 プラットフォーム2部 Amazonグループ 藤田紗也 氏
「統合」「自動化」「簡素化」を軸に次のステージへ
━━Amazon Adsの次なる展開について教えてください。
高村:2026年は「統合」「自動化」「簡素化」をキーワードに、より戦略的で効率的、そして成果が可視化された広告運用を実現させていきます。まずAIにより自動的に分析・最適化・運用アクションが実行できるようになります。また、今月発表した「キャンペーンマネージャー」によりAmazon Adsにおける広告運用の一元管理を可能にし、運用ワークフローの効率化や、AIを活用した迅速な意思決定、KPIや効果分析の統一を実現します。
Prime Video広告においては高度なインタラクティブ体験を提供してまいります。インタラクティブ動画広告とインタラクティブポーズ広告を導入することで、リモコン1つで商品をカートに追加したり、詳細情報を取得したりできるようになり、認知からコンバージョンまでの流れがよりスムーズになります。
また、Netflix、DAZNといったAmazon DSPにおけるメディアとのパートナーシップにより、Amazon DSP経由でプレミアムコンテンツに出稿できるネットワークを拡大しています。
━━今後のAmazon Adsとの協業をどのように展開していく方針ですか。
岡田:当社としては、Amazonの広告プロダクトを最も深く理解し、その効果をリーチや認知、態度変容から売上成果まで一貫して証明できる「唯一無二のパートナー」であり続けたいと考えています。そのためまずは、Prime Video広告をさらに多くのクライアントに活用いただけるよう、より効果の高いプロダクトにするための取り組みを続けていきたいです。加えて、電通グループとして、AWSなど広範な事業・サービスを活用し、クライアントの事業課題解決に向けたソリューションを提供できるように注力していきます。
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