AI時代は時間投資マインドのプランナーだけが生き残る? スーパージェネラリスト待望論~

生成AIが検索行動を変え、計測・ターゲティングの制約も強まる中で、これまでの「検索→クリック」依存の広告モデルは揺らいでいる。イグナイト代表でAdvertising Week Asia Executive Producerの笠松良彦氏は、この変化を「人の知恵と工夫がより試される時代の到来」と捉え、AIでタイパを高めた先に何へ時間を投資できるかがプランナーの生存条件になると説く。求められるのは、領域横断で価値創造を設計するスーパージェネラリストとしての視点と、目的と手段を最適化する可視化・翻訳・ファシリテーションの力だ。

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笠松良彦氏

イグナイト 代表取締役社長
Executive Producer

NEC、博報堂、電通を経てイグナイトを設立。電通時代にはリクルートとの合弁会社メディアシェイカーズの代表取締役社長としてフリーマガジンR25 事業を推進。マーケティングコミュニケ―ション領域のプロデユーサー集団であるイグナイトの代表として、新規事業の推進、ブランディングから、広告コミュニケーション、販売プロモーション領域まで、すべての領域での「顧客体験のデザイン」を提案している。グローバルイベントAdvertising Week Asiaの初代事務局長~Executive Producerも務める。

検索→クリックを前提とした広告モデルプラットフォーマーの終焉

長年デジタル(広告)の世界をけん引してきたGAFAを中心とした広告モデルも生成AIの登場によって終焉の入り口に立っています。これはKaizen Platform CEO 須藤憲司さんが書かれたnote「広告市場の終わりの始まり」をヒントにお伝えします。

大きなポイントは以下の通りです。
・Chat GPTが世界の検索クエリの第4位、全体の約10%までに4カ月で急成長
・生成AIが検索クエリの世界を飲み込もうとしている
・これにより100億ドル(約1.5兆円)以上の広告売上を持つプラットフォーム(GoogleやYahoo!など)は、その検索クエリから得られる収益が単純に減っていくことに
・検索→クリックから、検索→生成AIによる結果表示で終了、とゼロクリック現象が起きている
・さらにiOS26のアップデートにより広告の効果計測やターゲティングが行えなくなる
・「生成AIによる検索クエリの流出」と「iOS26による計測・ターゲティングの制限」。この2つが同時に進行することで、デジタル広告の効果は大きく低下する可能性がある

※検索クエリ(Search Query)」とは、ユーザーが検索エンジン(Google, Yahoo!など)の検索窓に実際に入力する単語やフレーズ、文章のこと

これらのことから、広告業界に起きてくる変化について、筆者の須藤さんは、下記のように述べています。
1. 流入目的のCPC型広告から、認知型広告への回帰
2. UXの良いCRMへの予算シフト
3.「検索されない」前提でのマーケティング戦略が必要に

要は、ブランドやコンテンツの付加価値を深く掘り下げ、ファンとなって欲しいターゲット顧客の絞り込みと深層心理のインサイト、そこから導かれるブランドからのメッセージ(タグラインやキャッチコピー、コンセプト)の精度・練度が益々重要になってくるということです。皮肉なことに、革命的な手段である生成AIの登場によって、誰もが優秀なプランナーになれるのではなく、従来よりもさらに「人」による知恵と工夫が試される時代になってくると思います。

ジェネラリストの逆襲

私がExecutive Producerを務めるAdvertising Week Asia 2025にて、古くからの友人でアドバイザリーカウンシルのメンバーでもある永田大輔さん(Distant Drums 代表取締役)による「ジェネラリストの逆襲:AIと人の共創プロセス実践編」というセッションがありました。このセッションでは、様々な視点から、グローバルでは(スーパー)ジェネラリストが求められている事例を紹介しています。

例えば、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツは、「私たちは優秀なプログラマーだけでなく、専門分野内や分野横断的に真の広範な知識を持つ人材を採用しました。こうしたチームメンバーこそが最も探求心が強く、最も深い思考モデルを持っていたことに気づいたのです」と語っています(Bill Gates 「Gates Notes」 より)。

ここでの要点は以下です。
・あらゆる企業のプロダクトやサービスがコモディティ化する今、単体企業の成長モデルは限界を迎えている
・事業会社は多様なパートナーとの共創で価値を再構築する時代へ移行し、同時に生成AIが個々のスキルを補完することで、ジェネラリスト型の『タクトを振る人材』の価値が相対的に高まっている
・それは、効率化ではなく価値創造のための共創プロセス設計である

つまり、一つの領域に留まるのではなく、あらゆるジャンルに広く深く領海を越境するスキルこそが、益々求められるようになっていると言うことです。事業会社側において既にそのニーズが顕在化しています。ならばマーケティングに係る我々プランナーにも当然そのスキルが要求され始めています。ここで言うジェネラリストとは、スーパージェネラリストです。

Advertising Week Asia 2025サイトより(1月20日までアーカイブ視聴可能)

時間は消費するものではなく投資するもの

イグナイトでは「若手広告人向け育成プログラム」を実施しています。これは「クライアントに指名されるコミュニケーションプランナー」を目指す目的で開発したスーパージェネラリスト育成プログラムなのですが、この研修に参加する若手の広告人から良く聞かれる質問で「インプットの大切さは理解したが、日常業務が忙しくてなかなかインプットの時間が創れない。どのように優先順位を付けたらいいか? どうやって時間を創りだせばいいか?」と聞かれます。私の答えは、「時間は自分で創るもの。ないなら他の何かを削るしかない」「優先順位は自分で決めなさい」です。

このやり取りは一見滑稽かも知れませんが、決定的に違う点があると感じます。それは、下記のように考えている点です。
・彼らの問いは、「時間は消費するもの=タイパ」の概念
・私は「時間は自分に投資するもの=自己投資」の概念

質問してくる人達は、無意識に“時間は消費するもの”と捉えているので、タイパを良くするために努力するのは自分ではなく相手(サービスや商材、仕事の中身)だと考えているのだと感じます。だから優先順位も自分では決められない。自分軸がない。

ワーク・ライフ・バランスという言葉があります。仕事と私生活の時間と気持ちの区切りをつけて健全に過ごしましょう、という提唱だと理解していますが、一歩進めて“ライフワーク”として捉えれば、仕事も趣味も生活もすべてそこには含まれるはずです。だとしたら何にどのくらい時間を使うのか?はすべて自分で決めればいい。なぜならすべてのことは結局、自分の判断で決めているからです。好き!でやることも、嫌だな~!と思ってやることも、結局決めているのは自分です。どうしても嫌なことはやめればいい。

職業選択の自由は誰にでもある権利。仕事に限らず何だって、自分の意志で決められるし辞められる。つまり、“すべての意志は自らの意思”だ、と思うのです。その意味で、本来、時間とはすべて自分への投資だと考えてはどうでしょうか? これは別の言い方をすると、自分軸をしっかりと持つ、ということでもあります。他人が決めた軸で生きていかない、ということです。

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