顧客価値向上とブランド成長の鍵:「リレーユースの文化」と「共感と納得」 ~コメ兵の多面的な成長戦略と、 OSAJI×Pinterestが示すZ世代へのリーチ戦略~

「宣伝会議サミット/環境ビジネス・カンファレンス in Nagoya」が2025年12月5日、名古屋で開催され、企業の持続的な成長戦略と、複雑化する消費行動に対応するためのデジタル活用について各社が取り組みを紹介した。
 
コメ兵の山内祐也社長は、同社のミッションである「リレーユース」を思想から文化へと昇華させるための事業開発、人材開発、組織開発の多面的な戦略を語った。次に、ピンタレスト・ジャパン 執行役員・ディレクターの井上英樹氏と、OSAJI マーケティング・クリエイティブ本部 マーケティング部の岸田千佳氏が登壇し、特にZ世代をターゲットに成功したPinterest活用戦略について解説した。

顧客価値の源泉としての「リレーユース」

コメ兵が目指すミッションとして「リレーユース」を掲げている。単なるリユースショップとしてではなく、「モノは人から人へ伝承(リレー)され、有効活用(ユース)されてこそ、その使命を全うする」という思想に基づくものであり、価値を最大化するビジネスを目指している。同社はこれを、自社の思想から社会の文化へと昇華させることを目標としている。

山内氏は、新卒で同社に入社後、鑑定査定やCRM構築、M&A、海外進出など多岐にわたる部門を歴任し、2025年に代表取締役社長に就任した。

写真 講演の様子

コメ兵ホールディングスは、国内リユース売上ランキングで第2位、特にブランド・宝飾品においてはトップシェアを獲得しており、中期経営計画では80周年にあたる2028年3月期までに売上高2600億円を目指し、また、日本国内のみならず北米やアジアなどにも進出し、世界におけるブランドリユースのリーディングカンパニーを目指している。コメ兵はそのコメ兵ホールディングスの中核企業である。

市場環境を見ると、世界のラグジュアリー中古品市場は新品市場よりも速いペースで成長を続けており、メルカリとニッセイ基礎研究所のまとめた資料(2024年発表)によると、国内には72兆円にものぼる服飾雑貨の潜在的資産が眠っているとされる。コメ兵は、この巨大な市場を開拓し、業界のリーディングカンパニーとしての地位を確立することを目指している。

事業・人材・組織、3つの開発

山内氏は、「事業開発(戦略)」「人材開発(個の力)」「組織開発(企業風土)」の3つの要素のバランスが不可欠であると強調した。戦略だけが先行しても、それを実現するための組織や個人の力が伴わなければ、優れた戦略も機能しないためである。

写真 講演の様子

事業開発においては、従来の「売買ビジネス」に加え、法人オークションなど流通プラットフォームの提供を行う「流通関与ビジネス」、さらに検品技術の提供などを行う「市場成長関与ビジネス」の3領域に事業を再定義して展開している。特に、同社の強みである「良質」を顧客に届けるため、鑑定士の教育を体系化。商品センターで流通する品すべてに再検品、クリーニング、必要に応じたメンテナンスを行っている。

さらに、近年巧妙化する偽造品に対応するテクノロジーを強化・活用している。肉眼やルーペの使用だけでは判断が難しい精巧な模造品に対応するため、マイクロスコープを活用した真贋判定AIを自社開発した。また、顧客との関係強化のため、現在130万人を超える顧客に対しCRMを強化し、ECをカタログ代わりに利用しつつ、リアル店舗での体験価値向上を図るオムニチャネル戦略を推進している。

「仕事の楽しさ」がもたらす持続的成長

コメ兵の成長戦略において特に特徴的なのが、組織開発と人材開発である。同社は、単に成果や結果を追求するのではなく、「誰のどんな価値につながるか」を常に意識する「Value Driven(バリュードリブン)」の考え方を重視している。これは、「良い会社をつくることが良い事業につながる」という信念に基づく企業文化の醸成を目指すものである。

写真 講演の様子

人材開発の仕組みとしては、「仕事のパフォーマンス=どんなスキルがあるか × どんな気持ちでやるか」という2軸評価を取り入れている。若手社員であっても、スキルが少しくらい足りなくても、高い「気持ち」(誠実、主体性、協調性、柔軟性など)があればパフォーマンスを発揮できるとし、この「気持ち」の維持・向上を評価する。これは、「スキルは下がらないが、気持ちは下がる」という認識のもと、社員が前向きな姿勢を保ち、仕事が楽しいと感じられる状態を維持することが、顧客価値の源泉であると定義されている。

モチベーションや情熱といった「気持ち」は、AIには代替しがたい能力であり、企業の競争優位性にも繋がると考えられている。この評価軸は、現場に権限を与え、変化の激しい時代に適応する「適応的パフォーマンス」を生み出し、挑戦し続ける企業風土を生み出す基盤となっている。


「カゴ落ち率70%」の時代における「納得感」の重要性

ピンタレスト・ジャパンの井上氏は、現代の消費行動が複雑化する中で、企業が直面する大きな課題について解説した。デジタル経済の発展により、人は1日に大小含め約3万5000もの意思決定を行っており※1、「選択肢の多さによる決断疲れ」が生じている。その結果、ECサイトにおける「カゴ落ち(カート放棄率)」は約70%に達しており※2、これは過去10年間、マーケターを悩ませてきた問題とされてきた。

写真 講演の様子

井上氏は、カゴ落ちの主因は購入手続きの煩雑さではなく、「意思決定の多さによる麻痺」と、「より良い選択肢があるのではないかという不安(F.O.B.O.)」にあると指摘する。つまり、消費者が真に求めているのは、購入手続きの容易さではなく、「自分にぴったりだ」と感じられる「納得感(Conviction)」である。この納得感を醸成することが、ショッピングジャーニーにおいて極めて重要となる。

Pinterest(ピンタレスト)は、ユーザーが画像を収集・整理する「キュレーション」のプロセスを通じて、選択肢を絞り込み、自信を持って意思決定ができる状態をつくり出すことで、この「納得感」を与える役割を果たす。実際、Pinterestユーザーの90%が「自分に関連性のある商品が見つかる」と回答しており、購買意欲の喚起に強く寄与している。※3

写真 講演の様子

OSAJIの課題解決とPinterestのプラットフォーム特性

化粧品ブランドのOSAJI(オサジ)は、創業当初のコア世代(20代後半~30代)に加え、Z世代へのリーチ拡大と、ブランドイメージを維持しつつ成果を出せるプラットフォームを探していた。Z世代は、ブランドや製品を探す際に、他のプラットフォームを見る前にPinterestを使う傾向があることが、Pinterest導入の大きな動機の一つとなった。

Pinterestは、他のSNSが「誰(ヒト軸)」でコンテンツを発見するフロー型であるのに対し、「何(モノ・コト軸)」でコンテンツを発見する「ストック型」のプラットフォームである。この特性により、コンテンツの寿命が長く(半減期が約4カ月)、ユーザーは検討の早期段階からアイデアを探し、欲しいものが自然に喚起・発見され、深まる環境にある。さらに、ユーザーが他者との交流よりも「自分の好き」を探求するポジティブなマインドで利用するため、ネガティブなコンテンツやブランド毀損リスクが極めて低く、ブランドセーフティが高いという優位性も持っている。OSAJIは、このクリーンなイメージがブランドイメージの維持に最適だと判断した。

AI活用と「広告=コンテンツ」戦略が実現した驚異的な成果

OSAJIは、限られたリソースの中で高い効果を得るため、AI最適化ツール「Pinterest Performance+(ピンタレスト パフォーマンスプラス)」を導入し、キャンペーンパフォーマンスの改善を追求した。Pinterest Performance+は、細かいターゲティングなどをAIに任せることで、運用効率を向上させる機能である。

OSAJIが実施したキャンペーンでは、Pinterest Performance+を使用し始めた2025年(対2024年)のキャンペーンにおいて、以下のような劇的な成果が記録された。

• CPM(インプレッション単価): 94%削減
• CPA(獲得単価): 85%削減
• ROAS(広告費用対効果):2400%を達成(前年比で約3倍の改善)
※4

この驚異的なROASは、OSAJIが設定する最低基準(350%)を遥かに上回るものであり、効率的かつ高単価な顧客獲得が実現したことを示している。

写真 講演の様子

クリエイティブ戦略においては、「広告はコンテンツ」であるという考え方に基づき、Pinterestユーザーがインスピレーションを探している特性を最大限に活かした。広告が「邪魔なもの」ではなく「役に立つコンテンツ」として自然に受け入れられるため、OSAJIは、1枚目にイメージ画像を、2枚目に香りの詳細やノベルティ情報など詳細な内容を差し込むカルーセルフォーマットや、季節の商品やライフモーメントに合わせた訴求(例:ギフト、ホリデーコレクション)を展開し、高い成果を収めた。

今後は、定常商品のカタログ連携による配信強化や、ブランドの認知拡散を目的とした予約型広告(プレミアスポットライト)の活用など、さらなるデジタル戦略の深化を計画している。Pinterestは、ユーザーが能動的にアイデアを探し、納得感が醸成される環境であるため、OSAJIのようなブランドイメージを重視しつつ、効率よく成果を出したい企業にとっても有用なプラットフォームといえそうだ。

※1 SahakianとLaBuzetta、「Bad Moves: How Decision Making Wrong, and the Ethics of Smart Drugs」(2013年)
※2 Baymard Institute、「49 Cart Abandonment Rate Statistics 2025」(2025年)
※3 Pinterest 委託による The Decision Labの「Empowered Decisions Power Performance」(グローバル、2025年5月)Pinterest群の参加者を割り当てたランダム化比較試験。
※4 OSAJI調べ、クリスマス (2023年9月1日~12月25日)とお正月 (23年8月1日~12月29日) のキャンペーンデータから ROAS を算出、日本

お問い合わせ

ピンタレスト・ジャパン合同会社

URL:https://business.pinterest.com/ja/ads-consultation/

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