地域の中小事業者や伝統支援で普及拡大を狙う
TikTokのアプリ内EC機能「TikTok Shop」が日本市場での存在感を高めている。日本でローンチした2025年6月30日から約半年で、参加事業者は5万社超(ローンチ当初比3倍以上)に増え、クリエイターは20万人超へ拡大。商品を購入した利用者数も、初月から20倍に増加したという。急成長の背景には、ライブ配信を軸にした購買体験が日本の消費行動と相性が良かったことがある。
一方で、企業側の組織分断や運用パートナー不足など、日本市場特有の課題も残る。ゼネラルマネージャーの邱 開洲(キュウ・カイシュウ)氏に日本における成功要因と今後の展望を聞いた。
TikTok Shop Japanゼネラルマネージャーの邱 開洲(キュウ・カイシュウ)氏
「TikTok Shop」は、ショート動画やライブ配信を通じて商品との出会いから購入までをアプリ内で完結させている点が特徴。ユーザー層は18〜34歳と35歳以上がそれぞれ約半数となっている。
「販売直結」と「ライブ接客」
邱氏が最大の理由として挙げるのは、マーケティング活動を直接販売につなげられる点だ。従来、企業はTikTok上でアカウント運用や広告出稿を行ってきたが、施策と販売をダイレクトにつなぐ手段は限られていた。TikTok Shopは、施策がそのまま購買動線になり得るため、企業側の関心が高いという。
邱氏は、日本が顧客リレーションシップを重視し、リアル店舗でも「おもてなし」型の接客文化が根付いている点を指摘する。ライブ配信がその延長線上の体験になりやすく、受け入れが早かったとの見方だ。TikTok Shopにはライブ配信のほか、カート付きのショート動画、ショップタブ、ショーケースなど複数のタッチポイントがあるが、日本はライブ配信経由GMVの割合が世界で最も高いという。
加えて、日本のユーザーは詳細ページやレビューを確認して慎重に注文する傾向があり、返品率も低い傾向にあるという。こうした特性を踏まえ、同社はレビューの重要性を重視し、レビュー促進クーポンなどの施策を通じて、レビューが付いた商品のカバー率を20%から30%に引き上げたとしている。
「ファッション」と「ビューティー」が成長
カテゴリー別では、FMCG(非耐久消費財)がローンチから半年で約57倍に成長したという。食品・日常用品が伸長し、地方創生の文脈でも取り組みを進めている。
特に好調なのは、ファッションとビューティーで、いずれも体験型の購買と相性が良いカテゴリーだ。素材感やサイズ感(ファッション)、使用感やビフォーアフター(ビューティー)といった情報が動画やライブで伝わりやすいことが、短い動線での購買につながっていると見ている。
ファッションではライブ比率が7割を超え、マーチャントが自社コンテンツでコンバージョンしているGMV比率は79%に達した。平均購入単価(AOV)も高く、クロスセルやアップセルが効きやすいという。ビューティーもライブ比率が7割を超え、アフィリエイト連携で創出したGMVが53%を占める。
課題は「組織の壁」と「運用エコシステム不足」
一方で、導入を検討しながら開始できていない企業もある。担当者は要因の一つに日本企業の「組織の壁」を挙げる。マーケティング部門は動いていても、商品を扱うのは販売部門であるなど、部署横断が障壁になるケースがあるという。
さらにTikTok Shopは、広告出稿やインフルエンサーマーケティングの発想だけでは完結しない。運用には「EC運営」「広告運用」「クリエイター連携」を融合した体制が必要になるが、現時点ではこのすべてに100%フィットするパートナーが少ないことが課題だ。
市場にとって新しい分野であることから、同社は既存の広告代理店に加え、EC代行運営の事業者にもパートナーとして加わってもらい、啓蒙・教育活動を進めるなど、運用を希望する企業への支援も行っている。
新機能や広告ソリューションも拡充
TikTok Shopの認知度向上策について、担当者はテレビCMなど対外的な大型施策はローンチしてから最初の半年は行わず、既存のTikTokユーザーに対してアプリ内で接触を増やしつつ、体験を損なわずに購買へつなげてきた方針を示す。
今後に向けては、日本市場に合わせたローカライズを進め、ポイントなどの機能を順次リリースする予定だ。ファッション領域では商品供給の強化や運用負荷の低減を狙う。OMO(リアルとオンラインの統合)として、店員による拡販を後押しするアフィリエイトプログラムも推進するとしている。
新施策として、地域の中小事業者や伝統産業を支援する「TikTok Shop Local」(第1弾は2026年3月中予定)を発表した。加えて、GMV最大化に特化した広告ソリューション「GMV Max」も打ち出している。ショート動画広告とライブ広告の2形式を用意し、需要に合わせて広告対象商品や素材を自動選定する点を特徴とする。
成長と同時に、同社は安全性を重要テーマに位置づける。透明性担保を目的にTikTok Shopセーフティーレポートを定期的に公開し、最新のレポートでは、2025年上半期のグローバルで販売者登録申請の却下や禁止・制限対象商品の削除などを実施したとしている。また邱氏は、「ユーザー満足度調査では、商品の探しやすさの評価が+7ポイント、商品の質の満足度が+4.2%以上、プラットフォーム全体のトラストが+3.7%向上した」という。
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