「共感」の前に「理解」がある──「チームみらい」「中道改革連合」に見る政党ネーミングの設計論

投票用紙に何を書くか──。政党名は、政策より先に有権者が最初に触れる「入口の言葉」だ。近年は、投票行動の局面(とりわけ記入)まで含めて設計されたように見える名前も登場している。

たとえば「チームみらい」は、公式発信で投票時の記入について「『チームみらい』またはひらがなで『みらい』」と案内し、漢字(未来)・カタカナ(ミライ)はカウントされないなど注意事項も含めて周知している。一方で、1月16日に立憲民主党と公明党が立ち上げた新党「中道改革連合」は、名称と同時に略称を「中道」とすることが示された。しかし、SNSでは誤った略称が散見されるなど摩擦(略称の読みが割れるほか、表記ゆれ、漢字の誤り)が生まれたほか、字面・響きが「古い」「怖い」などの声も挙がった。その後、共同代表(当時)の野田佳彦氏、斉藤鉄夫氏が「中道」の浸透に躍起になるなど、無為なコストが発生した。

今回AdverTimes.では政党名(ネーミング)について、書籍『なまえデザイン』の著者で企業から行政まで幅広くネーミングを手掛けるクリエイティブディレクター/コピーライターの小藥元氏(meet&meet)に聞いた。

政党名は、理念や立ち位置を示す“看板”であると同時に、有権者が最初に触れる「入口の言葉」でもある。政策や人物像に到達する前に、名前が「理解されるか」「誤解されないか」「記憶されるか」という関門を通過しなければならない。

『なまえデザイン』の著者でコピーライター/クリエイティブディレクターの小藥元氏は、名前を「アイデンティティーの塊」と捉えつつも、生活者側から見れば、そこに共感し、時間をかけて関係を築き、愛着が湧くものだと話す。さらに、ブランド(政党を含む)を“発信者の都合”だけで成立させないために、「WE」という意識――つまり生活者も含めた共同体の視点が重要だという。

この視点に立つと、政党ネーミングは「言いたいことを言う」だけでは足りない。「伝える」より前に「伝わる」ための設計が必要になる。

手を組んだ “中道”。若年層や無党派層に真意が伝わったのか

今回の例として挙げたいのが「中道改革連合」だ。小藥氏は、略したときの2文字である「中道」にはインパクトがあり、“つける側の論理”は理解できると言う。2つの政党が組めた理由がそこにあるということはわかる、と。

一方で、若年層や無党派層にとって、「中道」という概念が馴染みの薄い言葉であれば、理解が追いつかない可能性がある。すると、勝手な意味づけが起きる余地が生まれる。

ここで重要なのが、小藥氏の指摘する「『共感』の前にあるのは『理解』」という順序である。共感は感情だが、理解は最低限の下地だ。下地がない状態では、好意も反発も“誤読を前提にした反応”になりやすい。政党名に限らず、社会性の高いネーミングほど、この誤読コストは無視できない。

「チームみらい」が瞬間的に伝えるのは、具体より “スタンス”

「チームみらい」はどうか。小藥氏は、名前だけでは具体的に何をするかまではわからないとしつつも、「政党ではなくチーム」「どこにも属さない感」「政策ベースで他党ともチームになっていく感」といった “スタンス” は瞬間的に感じると言う。

ここでポイントになるのは、ネーミングが伝えるべき情報が必ずしも「説明」である必要はない、ということだ。ゼロから政策を理解させるのではなく、まずは「どういう姿勢の集団なのか」「何と距離を置こうとしているのか」という一次情報を、名前が先に渡す。これは現代の情報環境では合理的だ。生活者にネーミング意図を丁寧に説明する機会は限られているからこそ、理解できるスピード、読後感の設計が効いてくる。小藥氏は、その点で「埋もれずにキャラ立ちできている」ことを評価している。

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