記事8万7000本・コメント4万件から選出した「ベスト エキスパート 2026」
LINEヤフー(東京・千代田)が運営する「Yahoo!ニュース」は2月13日、「ベスト エキスパート 2026」授賞式を大手町三井ホール(同)で開催した。「Yahoo!ニュース エキスパート」に参加する専門家・クリエイターの発信を表彰する年1回のアワードで、今回が3回目。2025年に発信された約8万7000本の記事と約4万のコメントを対象に、優れた記事・コメントを発信した専門家・クリエイター計8人を表彰した。
オウム真理教事件に関する報道で有名な江川紹子氏
「Yahoo!ニュース エキスパート」は、各分野の専門家や有識者、ジャーナリスト、クリエイターが、自身の知見に基づいて記事やコメント、動画などを発信するプラットフォーム。エキスパートは専門性や実績、発信力、時勢・ニーズなどを踏まえた審査を経て選ばれ、各自の判断で発信を行う。有料記事が用意されている点も特徴の一つだ。
「Yahoo!ニュース エキスパート」の前身である「ヤフーニュース個人」は2012年に55人のオーサーでスタートし、今年で14年目を迎える。現在は約2400人のエキスパートが参加し、年間約45億ページビューにまで成長している。
「ベスト エキスパート 2026」授賞式
「ベスト エキスパート 2026」では、「オーサー部門」「コメント部門」「趣味・生活領域クリエイター部門」「ドキュメンタリークリエイター部門」計4部門のグランプリと特別賞をエキスパート編集部やスタッフおよび選考委員が選出した。
開会挨拶に立ったLINEヤフー上級執行役員の片岡裕氏は、スマホの普及やSNSの拡大、生成AIの進化によってメディアの消費体験が大きく変化しているとした上で、「AIを使えば一発で回答が分かるが、世の中の変化や気づきを提示するメディアは大事だ」と述べた。
コンテンツだけでなく「発信元が信用できるのか、信頼できるのか」という需要が増しているとして、専門家による確かな情報発信の重要性が高まっていると強調した。
オールドメディアの役割を再確認
グランプリのオーサー部門は、ジャーナリストで神奈川大特任教授の江川紹子氏が受賞。評価されたのは、宮城県知事選挙でファクトチェックに取り組んだ河北新報の活動を紹介した記事で、2025年11月11日に公開された。
選考委員の武田徹氏(ジャーナリスト、専修大教授)は、「必要であれば経営よりも公益性の確保へと舵を切る覚悟をマスメディアに求める筆者の思いが感じられた」と評した。
江川氏が地方メディアに注目したきっかけは、2024年11月の兵庫県知事選挙をめぐるメディア対応だ。誤情報が飛び交った際に、十分に対応できないメディアにも非難が寄せられ、選挙報道の在り方について模索し始めたという。
その後、2025年の宮城県知事選挙でも「水道事業を外資に売った」や「土葬を推進する」といった言説が飛び交ったが、河北新報がファクトチェックを実施。こうした取り組みはSNS上でも評価されるなど、ネット上では批判されがちな「オールドメディア」による選挙報道に一石を投じた。
「AdverTimes.」の取材に対して江川氏は、従来のメディアによる選挙期間中のファクトチェックは、特定の候補者を有利にするという意識が働き、踏み込むのはまずいのではないかという雰囲気もあったと説明。そのうえで有権者が正しい情報に基づいた選択ができるように、一歩踏み込んだ河北新報の意義は大きいと話した。
さらに、地方紙の意義について、全国紙が地方から人材を引き上げている時代において、特定の地方の自治体や予算を継続的に監視して蓄積してきた情報は極めて重要だと指摘。「世の中で大事なことの多くは地方で起きている」とし、政治家が地方に行ったときの出来事や、都会では発覚しにくい問題などを表面化するためにも、地方メディアが健全に運営できることの重要性を訴えた。
今回のグランプリ受賞について、江川氏は「河北新報の仕事が素晴らしかったのに、私が賞をいただくのは申し訳ない気持ちもある」と前置きしつつ、良いジャーナリズムの仕事を紹介し広めていくことの意義に触れ、「大きな声で決めつけたようなことを言ったもの勝ちみたいになってしまう傾向があるので、そうじゃないんだということを伝えていくことが必要だ」と語った。
「オールドメディア」と言われる中で、地方紙の取り組みがSNSで高く評価されたことについて、江川氏は「河北新報の仕事が素晴らしかった」と改めて強調。「事実をきちっと踏まえて伝えるという信頼を大事にするメディアを応援しなきゃいけない」と述べた。

