各事業部を横串で結ぶ生成AI
エルアンドエル・ビクターエンタテインメントはビクターエンタテインメント(JVC ケンウッドグループ)のグループ会社として、2017年に設立された。その社内スタジオとして、2026年4月にアニメ・ゲームスタジオ「LLVAGS」がAIを活用したアニメーションやゲームの制作プロダクションとしてサービスの提供を開始した。
LLVAGS のロゴ。
同社はもともと声優・タレントのキャスティングマネジメント、音響収録スタジオ、ライブイベント、ゲーム企画・制作など、社員30~40人の規模に対して広い事業領域を持つ。同スタジオで代表を務めるプロデューサーの老沼良浩さんはIT業界での連続起業を経て同社に入社し、在籍7年目を迎えた頃から各事業部間のシナジーが生まれていない点を課題に感じていた。
「ゲーム、音響、ライブ、声優マネジメントと、コンパクトな組織でありながら、幅広い事業領域に取り組んでいる。しかしそれぞれが独立して動いており、シナジーがない。社全体を横串で結べないかとずっと考えてきました」。
IT業界で新規事業を手がけてきた経験から、新たな産業技術が台頭するタイミングに早期参入することを一貫した方針としてきた老沼さんにとって、生成AIの普及はそのひとつの機会として映った。
2025年4月、老沼さんはコンテンツ制作における生成AIの活用の可能性を社長に提案し、研究開発チームとアライアンスチームを立ち上げた。当初は社内からの反発も大きく、「AIでものをつくること」への理解者はほぼいなかったという。夏ごろまで成果物のクオリティが安定しなかったが、秋以降は生成ツールの精度向上とともに商用レベルの制作物がつくれるようになった。並行して、外部のコンテンツホルダーへ成果物を持参してアライアンスを打診する活動も進めた。
「社内の理解より先に、社外からの評価が先行しました。当社にはAIによって仕事を奪われやすい職種の社員が少ない。その分、AIを使ってビジネスを進めていきますと大きな声で言いやすい立場にありました」と老沼さんは語る。
低コストで実現する「圧倒的ボリューム」
今回立ち上げたアニメ・ゲームスタジオが戦略の軸に置くのは「圧倒的ボリューム」だ。カットシーンのイラスト1枚を外部発注すると20~30万円かかり、100枚の制作にはおよそ2000万円が必要になる。AI生成では同規模の作業コストを大幅に削減でき、1日3本のショートムービーを継続配信する体制も組めるという。
「仮に手描きで作業していたら赤字にしかならない量を、低コストで出せる。AIを活用して圧倒的な物量をつくることによって、これまではなかなか伝えづらかった新規IPの世界観を早い段階からユーザーに浸透させることができます」と老沼さんは話す。
「生成AIはハレーションが起きる」という懸念から大手企業が参入しにくい領域であることを、同社はむしろ強みとして捉えている。ゲームやアニメの業界では既存の大手が市場を押さえているが、「AIを使った制作」という軸においてはまだトップが定まっていないという見立てからだ。
