日産自動車やコストコホールセールジャパン、直近では「丸亀製麺」を展開するトリドールホールディングスなど、有名企業による取適法(中小受託取引適正化法、旧下請法)違反の勧告が相次いでいる。下請けに対する対応に厳しい目が向けられる中、とりわけ不透明な商慣習が問題視されている業界のひとつが広告業界だ。
今年1月に施行された同法に対する理解をより深めることを目的として、広告業界向けのオンラインセミナーが9月10日に開催された。セミナーでは、経済産業省と公正取引委員会の担当者が登壇し、6月に公表された広告業への集中調査結果をもとに、口頭発注や支払遅延、無償でのやり直しといった業界特有の商慣習に潜む法令違反リスクと、取引適正化に向けて今後求められる具体的な実務対応について解説した。
セミナーで指摘された「タダ保管」のイメージ(AIで作成)
勧告件数は過去最多、「今が旬の法律」として厳正対処へ
セミナーは、日本広告業協会(JAAA)を幹事団体とし、日本アド・コンテンツ制作協会(JAC)、日本広告制作協会(OAC)、日本イベント産業振興協会(JACE)、インタラクティブ・コミュニケーション・エキスパーツ(I.C.E.)の広告関連5団体の共催で行われた。
公正取引委員会 事務総局 経済取引局取引部 取引適正化検査管理官付の小林史典氏が登壇し、取適法の執行状況について説明した。令和7年度の勧告件数は39件と過去最多を記録しており、小林氏は「取適法の執行は現在の公正取引委員会の最重要事項」「まさに今が旬の法律」と強調。違反によるレピュテーションリスクを回避するためにも、速やかな取引慣行の見直しが求められるとしている。
取適法の対象となる取引類型についても具体的な線引きが示された。たとえば、広告のキャッチコピーやデザインを作成することは「情報成果物作成委託」に当たるが、そのデザインを印刷してポスターを作成する作業は「製造委託」に該当する。
また、販促イベントにおける会場の警備や司会、音響、照明などは「役務提供委託」、完成したポスターを客先へ引き渡す際の運送は「特定運送委託」となる。
さらに、万博のパビリオン運営を例に挙げ、建物の建設自体は対象外(建設業法)だが、エアコンや音響機器などの修理を再委託するケースは「修理委託」として対象になると解説された。
取適法の対象外となる「直接利用」については、広告主が自ら使用する広告制作を制作業者に直接発注するケースをはじめ、事業場の清掃委託や、自社に商品を届けてもらう引き取り物流などが該当する。
「口頭発注」はNG、修正条件や知財の扱いも直ちに明示を
