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PR効果は1億円「商店街ポスター展」はなぜ始まったのか? by日下慶太(電通関西支社)

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大阪の新世界市場に始まり、文の里商店街、伊丹西台、そして宮城県女川へと広がっていった「商店街ポスター展」。月刊『広報会議』では2015年3月号から全5回にわたり、仕掛人である日下慶太さん(電通関西支社)によるコラムを掲載してきました。アドタイでは、『広報会議』本誌では掲載できなかった部分や、改めて加筆した完全版として全5回にわたりお届けします(隔週予定)

はじめは5回連載と聞いたときは「大丈夫か、広報会議、大丈夫か、おれ」と途中打ち切りになるのではないかとビクビクしていましたが、全5回をやり終えてさらにはアドタイにまで展開するという願ってもない結果となりました。大阪の商店街の片隅ではじまったものが今や日本全国に広がっています(でもなぜか東京をのぞき)。他の記事とは違う、地方の広告に漂う空気や、温度をこの連載を通して感じてもらえるとうれしいです。

今回の第1回は「商店街ポスター展」がはじまった経緯と新世界市場ポスター展(2012年11月~2013年1月開催)、第2回は文の里商店街ポスター展(2013年8月28日~12月31日)、第3回は伊丹西台ポスター展(2014年11月1日~2015年3月1日)、第4回は宮城県女川での震災復興を目的としたポスター展(2015年2月21日~5月31日)について、そして最後の第5回はすべてを締めくくります。それではいってみましょう。以下、文体変わります。

すべての始まりは「セルフ祭」だった

商店街ポスター展とは、商店街各店舗のポスターを電通の若手スタッフがボランティアで制作し、それをアーケード中に展示するもの。

電通関西支社のプロジェクトとしてテレビやネットで話題になったが、もともとは会社とは関係のないところから始まったものだった(ちなみに、「新世界市場ポスター展」だけでも、のちに新聞21件・テレビ6番組・そのほか雑誌・ラジオなども多数の掲載があり、広告換算で1億円近いパブリシティ効果があった)。

画家・異空間演出家のコタケマンという人間が2012年5月に大阪で「セルフ祭」というのをはじめたのがきっかけである。彼が様々な人間に声をかけ、新世界市場という約半数の店のシャッターが下りてしまった商店街をアホで奇妙なアートやパフォーマンスで埋め尽くした。アートイベントというと、なんだかおしゃれな感じがしないではないが、そうではない。奇祭という方が正しい。

ぼくはプライベートで写真家として活動しており、写真を展示してくれと、セルフ祭に引きずり込まれたのであった。通天閣100周年ということで、寝ている人の写真を100枚展示した。しかもつぶれたカメラ屋さんの前で展示をするという皮肉。商店街のいたるところは作品で埋め尽くされ、様々な音楽が聞こえ、新聞や雑誌にも取り上げられ、人がたくさん来て、それはそれは賑やかだった。非常によいイベントだったように思えた。

次ページ 「イベントだけでは新世界市場の売上は伸びなかった」へ続く