UXが現代のブランドの通貨に
—デジタル時代ならではのブランド形成の取り組みとして、具体的にどのようなことを行っていますか。
井上:
デジタル時代においては、ユーザーエクスペリエンス(以下 UX)が新たなブランドの通貨になっていると感じます。実際に、グーグルやアマゾン、アップルといった企業は、テレビCMなどのブランディングに特化した施策は行わずとも強固なブランドを形成してきました。これらの企業がどのようにブランドを形成してきたのかと言えば、たとえばWeb上でいかに早く、見やすくページを表示させるかといったUXを愚直に追求してきたのです。つまり、そうしたUXを向上させる施策の積み重ねが、結果としてブランドを形成していったと言えると思います。一方で日本の企業で多いのは、ブランドの世界観を体現しようと、Flashを使って凝ったコンテンツをつくるのですが、それによって表示に時間がかかり、ユーザー離脱を促してしまうといったことです。当社でも現在は、UIやUXをいかに向上させるかに注力をしており、実際に予算を投資しています。具体的には、Webサイト上のデザイン設計に際し、「どの文脈で来訪するか」「誰に」「何をしてもらうのか」というオブジェクティブをもとにして、設計図の段階からウォークスルー(ユーザーになりきってサイトを使ってみるテスト)を行っています。ゆくゆくはデジタルの部門のなかにUX専門の部隊ができる可能性もあるのではないかと思っています。
