インテグレートのメソッドが1冊に —新刊『 カスタマーセントリック思考』 編著者・藤田康人氏

顧客の顕在ニーズを刈り取るだけで、新たな需要の創造ができていない。いま必要なのは、消費者の心の奥にある、彼ら自身も気づいていない本音をつかむこと。マーケティングプランニングブティックであるインテグレートが実践するマーケティングにイノベーションを起こすためのカスタマーセントリックな思想とメソッドとは。『カスタマーセントリック思考』の編著者、インテグレート代表取締役CEO 藤田康人氏に聞いた。

限界を迎えたリーチ至上主義

藤田康人氏

市場が成熟し、モノが売れないと言われる日本の環境でマーケターに必要とされる役割は、イノベーションによる需要の創造。つまりは「売れ続けるための仕組み」をつくることです。しかし幸か不幸か、これまでの日本ではマス広告を使って新商品の発売を知らせる、あるいは商品の機能特長を伝えるだけで、商品の売上が担保される状況にありました。

とにかくリーチを確保し、パーチェスファネルの入り口で多くの消費者のアテンションを獲得できれば、ファネルの途中のパーセプションチェンジやビヘイビアチェンジのシナリオを細かく設定せずとも、右肩上がりの成長を継続できる状況にあったと言えるでしょう。結果、日本ではコミュニケーション中心の狭義のマーケティングの捉え方が浸透してしまいました。

しかし真のマーケティングとは、コミュニケーションのみで実現するものではなく、リサーチや商品開発、流通対策を含む多種多様なファクターで構成されるものです。かつビジネス・プロセス全体のマネジメントによって、各ファクターが有機的に連携し、「売れ続ける仕組みをつくる」ことこそが、マーケティングの目的と言えます。

市場ニーズをくみ取り、消費者が欲しいと思う製品を開発し、需要を創造する一連の活動が統合的に行われる仕組みを構築することこそが、今の日本企業には必要である…。私は2014年4月に『THE REAL MARKETING-売れ続ける仕組みの本質』という1冊の書籍を通じ、この考えを発信しました。2年経った今、広義のマーケティングに取り組み始める日本の企業は増えていると感じますが、今度はその実践において、悩みの声を多く聞くようになりました。

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