コラム

高広伯彦の“メディアと広告”概論

グーグルから学んだこと――広告ビジネスのイノベーション、そして広告人としての個人的興味:3

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イノベーションとリノベーション

当コラムの第7回でも書いたように、世の中には「イノベーション」のビジネスと「リノベーション」のビジネスがあるように思う。数年前のグーグルは矢継ぎ早に新しい広告プロダクトを世に送り込んでいた。その中の一つ、米国にて準備を進めていたマス4媒体をオンラインで買える仕組みと出会ったとき、「新しい広告ビジネス」にも同じように二種類あるということに気づいたのだった。

今はテレビCMの販売システムの部分だけが細々と残り、雑誌・新聞の広告枠のオンライン販売の仕組み“Google Print Ads” や、ラジオの広告枠販売の仕組み“Google Audio Ads”(この仕組みはdMarkという企業を買収することで獲得した)については打ち切り状態になっているので、日本国内でこれらの仕組みを目にした人は極々少数。しかしながら米国のマウンテンビュー本社やニューヨークにある広告ビジネスのヘッドクォーターに、日本の新聞社の広告担当の方や駐在員の方、また代理店からもお呼びし、ご意見を賜ったことがある。(各種ハードルはある、としながらも)非常に高い評価を得ていたように思う。

Print Adsの仕組みについて説明しておこう。この仕組みは通常のグーグルのオンライン広告のプラットフォームである「アドワーズ」と「アドセンス」と同様に、広告主側の仕組みと媒体社側の仕組みで構成されていた(注:アドワーズが検索連動型広告で、アドセンスがコンテンツ連動型広告、という誤った解釈を未だによく見かけるが、アドワーズは広告主側が利用する“広告出稿”のための仕組みを指し、アドセンスは媒体社側が利用する“広告枠を管理する”ための仕組みである)。

広告主、新聞社双方にメリット提供。代理店は労力低減と新しい利益機会に

広告主が出したい「地域」「ターゲットとする読者」「紙面のテーマ」「出稿金額」などの検索条件を入力するとする。すると、逐次更新されている、媒体社(新聞社)が登録した空き枠情報や広告枠の価格、媒体社情報から当該広告枠の情報が出てきて、そのまま新聞広告の申し込みができる、というマッチング・プラットフォームだった(当時アメリカで使っていた説明スライドがまだ見られるので興味のある方はこちらをどうぞ)。

これによって新聞社は効率的に空き枠を埋めることができ、かつ広告主にとっては検索連動型広告だけでは獲得できない(=検索はどちらかというと“待ちぶせ”なので、プロアクティブに顧客を増やすことについては一般的に苦手とする)新しい顧客を獲得するための場所を妥当な金額で探すことができる、という目論見だった。ユニークだったのが新聞社側への配慮。オンラインで申し込みをしてくる広告主の入札金額が少ない場合や、すでにオフラインで取引がある場合は断るようになっていた(あと、見本紙は掲載後オンラインでpdfで送信可能になっていた)。

また、日本の新聞が「記事」の場所が先に決まりその後に「広告枠」が決定するのに対し、米国の新聞の場合は「広告枠」が先に決定しその後に「記事」の場所が決まるという違いがあるとともに、日本では記事の下に関連した広告を出すことは基本的にNGとなっているが、米国ではそれが可能だったため、新聞だけれども「コンテンツ連動型広告」のようになっていた。

一方、広告代理店にとってはメディアプラニング/バイイングをより効率的に行える仕組みとして使うこともできた。また、新聞社との取引口座をもたないネット専業広告代理店にとっては、グーグルを介してオフラインの広告を広告主に提供できるようになるわけだったから、新しい利益機会としても期待された。(次ページに続く)

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