(シカケ)と(シクミ)という公式
クチコミマーケティングを企むにあたって、頭の中に入れておきたい公式が「(シカケ)×(シクミ)」である。(シカケ)とは「人に伝えたくなるネタ・情報」のことであり、(シクミ)とは「人に伝えやすい機能・ツール」のことである。この2つの掛け算がうまく行った場合に、クチコミはうまく拡がりを見せる。この公式に基づいて考えると、クチコミを目論んだ企画がうまくいくかどうかのシミュレーションが行いやすい。
例えば、[A]という企画に触れたときに、
- 人に伝えたくなる確率が30%(0.3)
- 人に伝える確率が平均して3人
とする。前者が(シカケ)によるもので、後者が(シクミ)によるもの。この2つを掛け合わせると、
=0.9
という値が出る。クチコミなので、この時拡がった3人にも同じものだとして、次のように掛ける。
0.9 × 0.9 = 0.81
これを続けていって、0.9 → 0.81 → 0.73 → 0.66 → 0.59…… と考える。
一方、[B]という企画の場合、
- 人に伝えたくなる確率が30%(0.3)
- 人に伝える確率が平均して4人
だったとする。同様に算出すると、
=1.2
となり、
1.2 × 1.2 = 1.44
となる。これを続けて掛けていくと、1.2 → 1.44 → 1.72 → 2.07 → 2.49…… となる。
さて、[A]と[B]、どちらのほうがクチコミとして拡がりやすいか、わかるだろうか? もちろん後者の[B]である。0.9が続く[A]のほうはだんだんと拡がらなくなってしまうのだ。
この「人に伝えたくなる確率」=(シカケ)による部分、と「人に伝える確率」=(シクミ)による部分、2つでクチコミの企みは構成され、それが非常に分かりやすい公式で表されることがわかってもらえるだろうか。たとえば「人に伝えたくなる確率」が低いものは「人に伝える確率」を上げるために(シカケ)に注力する、とか、ないしは、もっと成功させるために両者の数字をあげるために何をすればいいかについて考えを巡らせる。そして上でいうと、0.9や 1.2 にあたる、「係数」を「1以上にすること」。それがクチコミを企む、ということなのである。(次ページに続く)
「高広伯彦の“メディアと広告”概論」バックナンバー
- アメリカで注目を集めている“Inbound marketing(インバウンドマーケティング)”とは何か(最終回)(2012/7/06)
- アメリカで注目を集めている“Inbound marketing(インバウンドマーケティング)”とは何か(4)(2012/7/02)
- アメリカで注目を集めている“Inbound marketing(インバウンドマーケティング)”とは何か(3)(2012/6/26)
- アメリカで注目を集めている“Inbound marketing(インバウンドマーケティング)”とは何か(2)(2012/6/22)
- アメリカで注目を集めている“Inbound marketing(インバウンドマーケティング)”とは何か(1)(2012/6/20)
- ソーシャルメディアの時代なので、クチコミマーケティングを再考しよう:6(2011/9/26)
- コンテクストが理解されにくい背景~ツイッターで誤解がおきやすい理由(2011/6/06)
- ソーシャルメディアの時代なので、クチコミマーケティングを再考しよう:5(2011/5/16)
新着CM
-
人事・人物
【人事】電通(23年7月1日付、8月1日付)
-
人事・人物
PARTYの中村洋基氏がFIELD MANAGEMENT EXPANDに参画
-
AD
宣伝会議
味の素、パルコなど登壇。マーケティングの最新情報をお届けします。
-
人事・人物
NTTドコモ、ブランドコミュニケーション部長ほか(23年6月19日付)
-
マーケティング
「ちいかわ」や「なにわ男子」がランクイン Z世代の2023年上半期トレンドランキ...
-
AD
マーケティング
パーパスを中心にしたサイトリニューアルの重要性をコネクティが解説
-
広報
ランクアップ、子育て社員向けに「育児グッズリユース」イベント開催
-
広報
育休取得経験「ある」男性は8% 取得は企業姿勢を感じるきっかけにも
-
特集
人の移動が活性化する春!最新・屋外・交通(OOH)メディア活用術