【Webサービス改善会議④】どんな「レコメンド」が求められているのか

share

広告会社発のメディア事業としてサービスを開始した「キタコレ!」をめぐって、事業を運営する小林パウロ篤史さん、糸永洋三さんが、博報堂時代の先輩でもある高広伯彦さんからアドバイスを受ける形で始まった鼎談も後半戦。4回目となる今回は、キタコレ!のサービスの肝でもある「レコメンデーション」の本質を深く掘り下げます。

第1回第2回第3回はこちら

レコメンドからセレンディピティへ

(左)小林パウロ篤史 MediaJUMP代表取締役共同経営責任者
(右) 糸永洋三 MediaJUMP代表取締役共同経営責任者


高広伯彦 コミュニケーションプランナー/広告ビジネスコンサルタント

小林 ユーザーごとに異なる興味関心に合った情報を提供する「レコメンド(推奨)エンジン」が、キタコレ!のサービスの重要なポイントでもあります。レコメンドエンジンは正常に動いています。ただ、ユーザーから見て「これが本当に求めていたイベントだ!」と思われているかには不安があります。レコメンドの精度を高めて個人に合った情報を提供していくという考え方をどう思いますか。

高広 以前に在籍していたグーグルでは、情報の関連性を指す「レレバンシー」をとても大事にしていた。レレバンシーとは自分が興味を抱いた情報の深掘りなのだけど、あいまいなことには答えてくれない。垂直(バーティカル)方向にはどこまでも突き詰められるけど、関連しない情報を示すことはインターネットではできない。この点はインターネットの最大の弱点ともいえる。

一方のマスメディアは、偶然の出会いをつくるのが得意で、「こんなものもあるよね」というセレンディピティ(偶有性)の世界を提示することができる。インターネットの世界でのレコメンデーションは、テクノロジーの世界として、「できる」話であって、それが人にとって新しい生活体験を提供できるかというのは、また別の話ともいえる。そう考えると、レコメンデーションのエンジンをつくるより、セレンディピティのエンジンをつくった方がいいのかもしれない。

小林 なるほど。

高広 そのセレンディピティのエンジンをどうつくるかにおいて、本当はキタコレ!にがんばってほしいよね。広告会社発の新事業として手がけることとしては、レコメンデーションよりもセレンディピティでいく方が正しいかもしれないと思う。

思いも寄らないものというものには、ギャップがある。そこを埋める楽しさを演出しなくちゃいけない。世の中がすべてシリアルにつながっているようなものはやがて飽きられてしまう。

昨日と同じ文脈の「あした」では面白くない

糸永 「僕が望んでいたのはこれなんだ!」と目からウロコが落ちるようなことをユーザーが求めているとは限らないということですよね。

高広 むしろ、情報量が多くなればなるほど、自分に合った情報というのは逆に好かれないんじゃないか、という気がしている。

レコメンデーションエンジンや検索機能なども含めて、「あなたに必要な情報を提供しますよ」というレレバンシーに基づく情報提供サービスがたくさん出てきた背景には、総務省の情報センサス調査が示すように、世の中の情報量が多すぎて消費者にとって選択できない情報が増えてきた、といったことがある。でも、それらは昨日と同じ生活を送るためのものに過ぎないわけで、明日何か違うことが起きるサービスではない。でも本来は、意外な発見ができるかもしれないもののほうが優秀なサービスのはず。ただインターネットの構造や、それをつくっている人たちの考え方がそうなのかも知れないけど、ワン・トゥ・ワンの世界から脈々とつながる発想に基づいて「あなたに合った情報を提供します」となってしまう。

だから「あなたに合った情報提供します」よりも、「あなたが驚くような情報を提供します」「あなたがぎょっとするようなサービスを提供します」にシフトするほうが、Webサービスの進化に近づくと言えるかもしれないよね。

糸永 「あした、何しよう?」が僕らのビジョンなんですけど、この話はぐさっときましたね。今のサービスは、昨日と同じ文脈での「あした、何しよう?」になっているということか。

「驚き」と「関心」をいかに情報設計するか

高広 ただ注意が必要なのは、誰も見たことないようなコンテンツは、逆に情報に対する価値付けができないとも言える。だから驚きは必要だけど、今までの興味と断絶しているとそれはセレンディピティではなくなってしまう。

なので、例えば5つの情報を提供するとした場合、そのうち4つはリコメンデーションに基づくものにして1つだけ「裏」に基づくものにする、といったやり方がいいのかも。

糸永 そうなんですよね。

高広 だから、こちら側に基づく変数は、どんどん狭めていくための変数になってしまう。だからその裏が重要になる。ジョーカーを設けないといけないわけ。

小林 血が濃くなってしまうだけなんですよね。

高広 そうそう。

小林 そうすると、種は絶滅する。

高広 あとはそれをどう見せるかで、「今週、あなたと最も関係ない情報はこちらです!」っていうコーナーをつくってもいいじゃない。

小林 たしかにそうですよね。いまの僕らの悩みは、レコメンドのトップにある情報が何か自分ぽくないような気がしていて。それは単に見せ方の問題なのか。

高広 見せ方の問題はあると思うんだけど、もっと言うと、「自分に合った」というものがバリューでない可能性は高いね。

小林 そうかもしれないですね。でも自分で自分をわかってないから、永久にぴんと来ないのかもしれないですよね。レコメンデーションは奥が深いですね。

(次回〔最終回〕は12月15日に掲載します)

続きはこちら

「宣伝会議」12月1日発売号にも鼎談の一部を掲載しています。こちらもご覧ください。

シリーズ【Webサービス改善会議】
【Webサービス改善会議①】広告会社の新ビジネス領域を開拓する! 
【Webサービス改善会議②】ソーシャルメディアは「人と人のつながり」って本当?
【Webサービス改善会議③】もっと自由に「メディア」について考えよう  


「キタコレ!」とは

kitakore

URL:http://www.kita-colle.com/
「あした、何しよう?」をコンセプトに、個人の興味・関心や生活圏に合わせたイベントを上位表示するWebサービス。独自のアルゴリズムによるレコメンド(推奨)エンジンを開発し、ユーザーの登録情報やサイト上での行動履歴を基に、関心の高いと思われるイベントを提案するもの。博報堂DYグループの新規ビジネスアイデア公募制度から生まれた社内ベンチャー「MediaJUMP(メディアジャンプ)」が立ち上げた。


Follow Us