【Webサービス改善会議⑤】インタラクティブとは、コンセプトである(最終回)

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広告会社発のメディア事業としてサービスを開始した「キタコレ!」をめぐって、事業を運営する小林パウロ篤史さん、糸永洋三さんが、博報堂時代の先輩でもある高広伯彦さんからアドバイスを受ける形で始まった鼎談もいよいよ最終回。次世代のテレビから、博報堂の社風についても話が及びました。

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「街頭テレビ」の時代の復活

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小林 「キタコレ!」をPCで見ると、左側はレコメンデーションエンジンによる「オススメ」が表示されますが、右側は博報堂ケトル(注)に頼んで、彼らの選択眼で選んでもらった情報を掲載しています。左側はユーザー個人に合わせた情報ですが、右側はすべての人に同じ情報が届く。いわばマス情報です。でも、気がつくと右側ばかり見ていたりする時もあったりして。

高広 ひとつ質問してみようかな。テレビが生まれた時代から現在に至るまでの期間をいくつかの時代に分けるとすると、どんなふうに考えられる?

小林 う~ん、10年ごとに6つくらいの時代ですかね。

高広 それぞれどんな時代と分けられる?

小林 たとえば戦後からモーレツ時代とか、バブル時代とか。

高広 正解がある問いではないけど、それはコンテンツから見た考え方だね。僕は、人がメディアとどう接触しているかという視点で分けている。

まずテレビが世の中に出回った当初、一段高いところに置かれて見られていた。

糸永 街頭テレビですね。

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高広伯彦 コミュニケーションプランナー/広告ビジネスコンサルタント

高広 そう。1台のデバイスに対するオーディエンスがものすごく多かった時代。ひとつのデバイスに対して、共通の話ができる人がたくさんいた。たとえば、みんなで力道山を見て、みんなで応援していた。これが第一世代。

そして第二世代、テレビは家の中に移った。リビングルームにあって、家族みんなで見ていた。家族共通のテーマを開発する装置として存在していた。

そんなテレビが核家族化によって一家に1台から個室に1台に普及していって、部屋にひとつのテレビになった。社会学者の奥野卓司という人はこれを「家電から個電へ」と言っていた。思うに、家族に共通の話題をつくる装置としてのテレビの機能は、皮肉なことにテレビが普及すればするほど無くなったのかもしれない。ここまでが第三世代。ワンセグとか「超・個電化」がすすんだり、タイムシフト視聴が増えてきて時間を共有しなくなって、個人の可処分時間の使い方に左右されるような今の時代は、第三・五世代なのかもね。つまり、この分け方で考えると、テレビが1台あたりのパワーを落としている最大の要因は、1デバイス当たりのオーディエンスの数が少なくなっていることにあるんじゃないかと思う。

このあと僕は第四世代が来ると思っている。やはり「ソーシャルテレビ」がポイントで、ソーシャルメディアと連携したテレビ、すなわち1台のテレビにたくさんのオーディエンスが存在する街頭テレビの時代を復権させることができると考えている。しかもAnywhere:つまり視聴場所は問わなくても体験を共有だろうし。1デバイス当たりのオーディエンスの数が重要だと考えてみると、パーソナライズされ、あなただけの情報が届きますよ、ってのよりも、実はみんなが同じ情報を見ているのがおもしろい、ということもありえるわけじゃない。

「簡単」は楽しくない

MEDIAJUMP

(左)小林パウロ篤史 MediaJUMP代表取締役共同経営責任者
(右)糸永洋三 MediaJUMP代表取締役共同経営責任者

糸永 スポーツ中継などで同じ時間を共有していると一体感を味わえますが、たとえばテレビのタイムシフト視聴が進むとバラバラになってしまうんでしょうか。

高広 ライブであるか、タイムシフトであるかというのは、二項対立ではないと考えている。ライブで見た人は、ライブで見た人と楽しむ。一方タイムシフトであっても、その結果、ツイッターやフェイスブックに書き込んだものが、それをすでに見た人にも共有されて広がっていく。最近ならスティーブ・ジョブズの訃報や追悼番組を見た人が、あとからどんどん書き込んでいって話題が広がっているよね。Anytime:アーカイブされていつでも見れる状態のコンテンツにいろんな人がコメントを残して、同じ「時間」を共有せずとも、継続的に体験を共有できるってことじゃないかな。

小林 ニコ動(ニコニコ動画)もまさにその役割を果たしていますね。

高広 だから「いつでもテレビ、どこでもテレビ」という考え方ができる。メディアは、どう接触されているかを考えると、見えてくることが増えるよ。

小林 そうですよね。いろんな話を聞いて、こんなに難しいとは思わなかった。

高広 面白いじゃない。難しいほうが。簡単は楽しくないよ。

糸永 「簡単は楽しくない」はいい言葉ですね。

小林 僕らは立ち上げたばかりのMediaJUMP(メディアジャンプ)という会社を、いかに大きくしていくかということばかり考えています。そのためには、まずキタコレ!が成長していかないと。

高広 僕は、広告業界の最大のおもしろさというのはメディアビジネスだと思っている。枠を売り買いするだけではなくて、メディアを立ち上げるビジネス、メディアをいじるビジネス。メディアの考え方自身が、今までのような形のメディアじゃない場合もあるわけじゃない。それができるのにやらないのは、広告業界にいなくてもいいんじゃないの?とさえ思ったりする。だから今それができていることは貴重だよね。 (次ページヘ続く

(注)「博報堂ケトル」=博報堂が全額出資するクリエイティブエージェンシー。2006年に設立され、嶋浩一郎氏、木村健太郎氏が共同CEOを務める。「手口ニュートラル」をコンセプトに、従来の広告の枠組みにとらわれず、戦略から制作、SP、PRをフラットにとらえたプランニングで実績を挙げている。


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