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コラム

i(アイ)トレンド

シリコンバレー探訪記:話題の新サービスや成長と変化の中に日本企業も

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世界見据えた日本のIT企業も活気あふれる

業務の一環で、12月の初頭にサンフランシスコ、シリコンバレーを訪問した。サンフランシスコは毎年のように訪問しているが、今回は若干時間もあったのでスタンフォード大学はじめシリコンバレー方面にも足を伸ばすことができた。

まず街並みなど全体的には大きく変わっていないが、サンフランシスコ市がベンチャー誘致に本腰を入れ治安の対策や新しい施設を優遇する措置を行っているようで、ツイッターのように市内に拠点を移したところやGREEのように今後移る計画のあるところも多いようである。

また、かつてHP(ヒューレット・パッカード)やSUN(サン・マイクロシステムズ)といったシリコンバレーを代表する企業の施設にフェイスブックが入居するなど、新しい時代の移り変わりを感じ取れる出来事もあった。オフィスに入る時にNDA(Non-Disclosure Agreement:守秘義務契約書)にサインしなければならない一方で、逆に比較的オープンスペースで経営層も自由にフロアを歩き回っていることなどは、まさに相反するカルチャーが同居するベンチャー的な側面を覗かせているといえるであろう。

どの企業でも共通しているのは、会社にいる間の飲食の心配はしなくていいということである。大抵の会社にはセルフサービスのカフェテリアがあり、飲み物も含め何らかの形でほぼ24時間提供されている。カフェテリアがない場合でも、ケータリングや果物やスナック類は提供されているのが通常である。

というのも、シリコンバレーのベンチャーはほぼ全社で技術者が仕事をしやすいように設計されており、ずっと会社にいても問題がないように考えられている。これは、特に技術者がプログラムを開発しているときに作業を中断しなくてもいいようにとの思想から設計されているようである。そのために、会社によってはクリーニングやマッサージ、トレーニングジム、娯楽施設や託児所などのサービスを提供している。また家族の出入りが自由な企業も多く、夕食時には家族で会社のカフェテリアでディナーをしている光景も珍しくない。

筆者は日本から進出している会社も数社訪問したが、日本的なオフィス運営をしているところはなく、現地の社員が働きやすい環境を用意しているところが非常に良い点であると感じた。“郷に入れば郷に従え”である。進出している日本企業の社員は、はつらつと世界を見据えて戦略的に大きく捕らえて業務を行っているように見受けられ、筆者の想像ではあるがかつて総合商社などが世界に出て行ったときと同じような活気のある状況と考えている。そして今後日本で出来たサービスが世界に進出する拠点となるのであろうと感じさせたのである。

音楽サービス Spotify が話題に

今回の出張中にあちこちで話題になっていた、まだ日本に上陸していないサービスがあるので紹介したい:Spotifyという音楽サービスである。なぜこのサービスが話題になっているかというと、単なる音楽の配信サービスではなくソーシャルを意識した無料の音楽サービスということにある。したがって筆者は“音楽配信サービス”ではなく“音楽サービス”と呼ぶこととする。

Spotify

Spotifyは2008年にフィンランドで始まった音楽サービスで、現在8カ国でサービス提供をしている(フィンランド、フランス、ノルウェー、オランダ、スペイン、スウェーデン、英国、米国)。音楽は基本的にインターネット上に置かれており、無料版では数曲に一回宣伝が入るようである。ユーザーはSpotify上にある曲であればいつでも自由に聞くことができ、プレイリストを作成して公開したり、フェイスブックと繋いで友人のプレイリストを見たりすることができる。

音楽レーベル

月額課金の有料版は音質が良いほか、ダウンロードに対応しているが、無料版でも30日間プレイリストを購入することが出来るということである。音楽レーベルと契約しているオフィシャルサービスであり、現在ユニバーサルミュージック、ソニーミュージック、EMI、ワーナーミュージックなど6社の楽曲が提供されている。利用者の声を聞いていると、友達やフォローしているミュージシャンなど著名人のプレイリストなどがそのまま入手できることや、ドラッグアンドドロップなどの直感的なインターフェイスが魅力であるという。

しかし、まだ8カ国しかサービスが提供できていないのは、ビジネスモデルと音楽レーベルとの権利関係の調整が複雑だからということであろう。広告や有料版で課金しているとはいえレーベルにとっては多くの楽曲をシェアされることはCD販売や配信サービスへの影響も考えられるために慎重にならざるを得ないのであろうか? 果たして日本にSpotifyが上陸する日が来るのか気がかりである。

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