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裏面の力――『販促会議1月号』の連載 今月のパッケージより

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文:アイ・コーポレーション 代表取締役 小川亮

雑誌『販促会議』の連載「販促NOW 今月のパッケージ」。今回は、味の素が発売する「クノール 贅沢野菜プレミアムポタージュ」のパッケージについて小川亮氏が分析する。

事例名:味の素「クノール 贅沢野菜プレミアムポタージュ」

裏面はパッケージにとって重要なスペースである。なぜなら、裏面をうまく活用することで商品価値を上げることができるからだ。

2011年8月に発売された「クノール贅沢野菜プレミアムポタージュ」はその好例である。裏面の上部には「あげてうれしい、もらってうれしい」というコピーと「□ありがとう!□お疲れさま□おめでとう□ごめんね」の四つのチェックボックスがあり、その横にはメッセージを記入できるスペースがある。

「贅沢野菜」という、ほかよりも高級感のある商品であるからこそ、裏面にメッセージを記入し、それをプレゼントすることもできる。

「贅沢野菜」という、ほかよりも高級感のある商品であるからこそ、
裏面にメッセージを記入し、それをプレゼントすることもできる。

震災以降、消費者心理は大きく変化し、特に人とのつながり、絆(きずな)の大切さを多くの人が感じ、求めていると言われる。結婚相談所への入会希望者が増え、SNSの利用者が伸びていることからも、その傾向が感じられる。

こういった中で、ちょっとしたプレゼントに使ってください、という裏面のメッセージは、時代の雰囲気に合わせた試みだと言える。「贅沢野菜」という少し贅沢なスープという商品も、ちょっとしたプレゼントにぴったりの商品である。

いつもありがとう

11月1日から実施し、同社も参加するキャンペーン「ありがとうプロジェクト」。それに合わせ裏面を「ありがとう」のメッセージに変更した特別版が、11月中旬から12月にかけて展開している。

このようにパッケージデザインは裏面をうまく活用することで、商品の新しい価値を生み出すことができる。パッケージは広告メディアと違い、購入後も保存・使用・廃棄といったプロセスを購入者と共有し、触ることもできる。

パッケージをうまく活用することで、その商品の使用経験を高めることができる。商品やサービスを利用することによって生まれる価値を経験価値と言うが、パッケージデザインは購買後の経験価値をいかに高めるかという視点から考えるとより効果的である。

パッケージの裏面を見ると、その企業の消費者志向の度合いがよく分かる。使う人のことを本当によく考えて、分かりやすいようにデザインされている会社もあれば、ほとんど見えないような小さな字を羅列して、注意を促すことに終始している裏面もある。

パッケージをデザイン・制作をしていると、多くの場合、裏面制作は時間がないことが多い。だからこそ、その企業の消費者への思いやりやメッセージが顕著に出てくるのである。

震災以降、多くの消費者が裏面の情報をしっかりと見ている。原材料表示などの表示義務以上の価値を裏面で生み出すのはマーケターのアイデアと行動力、使う人を思う気持ちであろう。「クノール贅沢野菜プレミアムポタージュ」のバーコードにはデザインバーコードという企業が被災地の早期復興を願って作った

「がんばろう、日本!」のバーコードが採用されている。パッケージデザインの裏面にも、じっくりと時間とお金をかける意味はありそうだ。


小川亮(おがわ・まこと)
慶應義塾大学卒業後、キッコーマンに入社、宣伝部、販促企画部、市場調査部に勤務。同社退社後、慶應義塾大学大学院ビジネススクールにてMBA取得。現在、パッケージデザイン会社、アイ・コーポレーション代表取締役。飲料、食品、化粧品などの商品企画やパッケージデザインを多数手掛ける。


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新しいPB時代の幕開け――「販促会議11月号」より

月刊『販促会議』2012年1月号
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