ヒトの行動を変える方法。

それは海を越え、突然やってきた

「私たちは信じている。クリエイティビティとは、人の行動を変えるものだと。私たちは存在する。既成概念にとらわれないアイデアで、人を動かすために」

ビーコンはブランドエージェンシーとして「HumanKind(ヒューマンカインド)」という考え方を大切にしています。この考え方は3年ほど前、海を越えてやってきました。当時は、テクノロジーの発達と世界的な不況が一気に加速し、メディアに対する「お決まり」が通用しなくなり、クロスメディアや双方向コミュニケーション発想が主流となりつつあった過渡期。人の興味を喚起するさらなるクリエイティビティが求められ、広告業界全体がコミュニケーションそのものを捉え直し、変化を求められている状況だったと思います。そんな見えない答えを模索している最中、レオ・バーネット・ワールドワイドから「みんな安心しろ!今から俺を使え!」と突然この考え方がやってきたのを覚えています。もの凄いドヤ顔で(笑)。マネジメントはこの救世主到来に歓喜し「ヒューマンカインドだ!」と叫び回っていました。

一方現場では、言葉や概念だけが先行し具体的にどう仕事に活用すれば良いのか、クライアントさんにどう説明すれば良いか、などの疑問や不安が膨らみ不穏な空気が流れていました。レオ・バーネット含めガイシの過去事例として、突然ネットワークで決まったこの手の新しい考え方やエージェンシーの定義は「精神論ばかりで具体性がない」「欧米文化にはフィットするがローカル(日本)には合わない」「仕組みを敷くまでに長い時間を要する」などの問題が発生したケースも多く、誰もが疑心暗鬼になっていました。

実は僕もその一人でした。概念や考え方は理解し賛同したものの「HumanKind」という言葉やストラテジーを「具体的かつ効果的なツール」としてどう使ったら良いのか分からず、少し前まで積極的に活用していませんでした。そもそも自分のアイデア発想と近い感覚を抱いていたので、エッセンスは取り入れつつも、相変わらず自己流を貫いていました。ごめんなさい、レオ・バーネット。でも、今は違います。ちゃんと消化し活用し、ここで紹介するくらい頼りになる存在になりました。本当です。

ヒューマンカインドの全てがここに!レオ・バーネット・ワールドワイド発刊「HumanKind Book」$29.95なり。

「HumanKind」の特徴は常に「人」を中心にモノを考えるところにあります。商品でもブランドでもなく「人」が中心。時代が変わっても変わらない「人」の本質を見つけ、単なる“AD”ではなく「人」を動かす“ACT”を作る。とまあ、これらの素晴らしい話は、すでに世界中のレオ・バーネットの偉い人たちが様々なインタビューや記事で語っているので、先週僕らのチームが実際に行ったプレゼンテーションを参考に紹介します。あくまでも考え方の一例です。

ちなみにお題は、とあるブランドの年間ブランディング。ブランドの現状を整理し、年間活動すべての考え方、具体案を提案するというものでした。ただいま、その競合プレゼンの結果を指をくわえながら待っているところです。

ブランドが「人」にできること

まず僕らは「Brand Purpose (ブランドの目的)」を定義します。そのブランド(商品)が世の中の「人」にとってどんな存在意義があるか。「この商品はこんなにすごいんです!」という自己完結型の発想ではなく「皆さんのためにこんなことができます!」という「人」と絆を作る目線でブランドを捉えます。ブランドが自らの目的を理解した上で物事を発信することが「人」に伝わり生活の中で共感を得ていくことに直結する。このブランドの絶対的な価値は、何十年と続く強固なブランドを作りあげる上で最も大切、基本的に一度決めたら変えません。

通常この定義はクライアントさんと膝を付き合わせながら作っていきます。クライアントさんが持っている膨大な調査データや消費者からの肉声、ブランドに込めた思いや抱いているイメージと、エージェンシーサイドからの調査データや客観的な視点を加え、何度も書き直しながら作っていきます。ブランドに対してクライアントとエージェンシーが共通認識や言語を持つことでワンチームとなる。ブランドエージェンシーならではの喜びでもあります。

この「Brand Purpose」を決める際には、図のような3つの階層に分けて整理をしたりします。これを「Equity Pyramid(エクイティーピラミッド)」と呼んでおり、消費者の中でモヤッと浮かんでいるイメージをそれぞれの深度に分けて明確化します。下から「RTB(reason to believe)」ブランド(商品)が胸を張って自慢できるところ。そのブランドにしか言えないところ。モノによっては「USP(unique sales point)」とも言います。そして「Benefit」では「人」がこのブランドを通してどんな気持ちや感覚を得られるかを定義します。「Brand Character」はそのブランド(商品)を「人」に例えた場合の性格や人柄を定義、例えば僕のように“ワイルドに見えて繊細”とか(笑)。具体的なブランドの事例はコンフィデンシャルなのでお見せできないのですが、これら3つの要素はクリエイティブのトーン&マナーやセリングラインなどに反映されていきます。

「人」の本質を見つけ「人」を動かすスイッチを作る

次に僕らはターゲットである「人」の本質を突き詰めます。その「人」は日々をどう過ごしているか、職業は何で、何が好物で、趣味は何で、休日は何をしていて、どんな場所で生活していて、どんなもの(メディア)に接触していて…とにかくあらゆる角度から「人」を見ていきます。僕らの中でリアルな存在として意識できるまで人物像を明確にしていく。主人公の事細かい設定を大切にする脚本家の作業と似ているところがあります。

そしてそこから「人」の行動の根底に隠された性質や習性を見つけていきます。行動そのものだけでなく、何がその行動を起こさせているのかを、本人も意識していないような深層まで掘り下げて考えます。そこにこそ本当に「人」を動かす「言葉」や「仕掛け」のヒントがあります。これが「Human Behavior(ヒューマンビヘイビア)」の発掘です。

そしてそれらに基づき「人」を動かす「ACT(アクト)」を考えます。「人」にとってのブランドの存在意識を定義し、「人」を深く理解することで生まれる「人」を動かすスイッチ。それは単なる広告に留まらず、商品や新しいサービスの提案などブランドの行動すべてが手段となります。とはいえ、多くの場合は未だ広告メディアを中心にキャンペーン化していますが、常にクライアントの取り組みや新しい情報を共有してもらい「ワンチーム」としてブランドに関わることで、新しい商品やサービスを提案する機会が増えています。

自分もそうでしたが「商品」と「メディア」を与えられ、自らのインスピレーションで企画を考え、クライアントを説得し世の中に押し出す。少し前の広告会社のクリエイティブの考え方は、モノと接触メディアが溢れている現在においては通用しづらいし、ブランドに対する責任や愛情が足りないと思います。僕らのクリエイティビティーはブランドが人の生活に影響を与えるコミュニケーションを実現するために存在していなくてはならないし、そこにこそ僕らが貢献できる場があるのだと思います。“「人」の行動を変える”なんて素晴らしい仕事だろう。僕は日々その喜びを噛みしめながらここに居る、というわけです。

三寺雅人 「ガイシの夜明け」バックナンバー

三寺 雅人(ビーコンコミュニケーションズ/エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター)
三寺 雅人(ビーコンコミュニケーションズ/エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター)

1975年生まれ。国内広告会社でCMプランナーとして活動後、外資系広告会社ビーコンコミュニケーションズに入社。クリエイティブディレクターとして外資、国内双方のクライアントを担当する。また、クリエイティブの発想やアイデアを基に自主提案を仕掛けていく社内プロジェクトを立ち上げ、夕張市復興キャンペーン「夕張夫妻」を企画・実施。最近ではシマンテック(Nortonセキュリティ)の「犯罪者Nキャンペーン」「たいせつなものキャンペーン」、レノボの「DOキャンペーン」、京王電鉄の「樹の里高尾山キャンペーン」などを手がけている。2012年4月エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター(ECD)に就任。国際広告賞の受賞および審査員経験も多数。

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三寺 雅人(ビーコンコミュニケーションズ/エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター)

1975年生まれ。国内広告会社でCMプランナーとして活動後、外資系広告会社ビーコンコミュニケーションズに入社。クリエイティブディレクターとして外資、国内双方のクライアントを担当する。また、クリエイティブの発想やアイデアを基に自主提案を仕掛けていく社内プロジェクトを立ち上げ、夕張市復興キャンペーン「夕張夫妻」を企画・実施。最近ではシマンテック(Nortonセキュリティ)の「犯罪者Nキャンペーン」「たいせつなものキャンペーン」、レノボの「DOキャンペーン」、京王電鉄の「樹の里高尾山キャンペーン」などを手がけている。2012年4月エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター(ECD)に就任。国際広告賞の受賞および審査員経験も多数。

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