「笑顔が足りない」撮り直しも
――会社を代表して社外へ情報発信することに不安はありませんでしたか?
松澤 毎日緊張していますよ。
丸田 投稿する時は何度も何度も確認します。あまり慣れるものではなく、毎回毎回緊張しますね。
松澤 細かい点、たとえば句読点をつける位置でも「このほうが読みやすいのではないか」と議論しながら毎日投稿していますね。写真も「笑顔が足りないから撮りなおして来い!」って言われたり。
――オフィシャルアカウントで投稿する内容はどのように決まるのでしょうか。
松澤 先ほどお話した編集会議などの場で、いろんな部署から「こういう新しい取り組みをやります」とか、「エリア拡大情報を投稿してほしい」といった情報をいただくので、全体のコミュニケーション戦略を鑑みて内容を取捨選択し、スケジュールを調整し、オフィシャルアカウントで投稿しています。
――ソーシャルメディアでオフィシャルアカウントを運用してみて、お客様の反応はいかがですか?
松澤 取り上げる話題によってすごく反響をいただくこともあれば、一方でまったく反応がなかったり、厳しいお言葉をいただくこともあります。先日は「au Wi-Fi SPOT」のスポット数が10万を突破した、という情報をフェイスブックに投稿したところ、大変多くの反響をいただいてWi-Fi SPOTへのお客様の関心の高さを実感しました。そうしたお客さまの考えがとてもよくわかるようになったのがソーシャルメディアの良いところですね。
一方で、ふだんあまりお客様の目に触れることのない、ネットワーク運用現場の担当者の紹介をしたときなどは、「陰でこんな取り組みをしていたなんて知らなかった」「頑張れ!」など、励ましのお言葉を多くいただくことがあります。ふだんお客様から直接そういったお言葉をいただくことがないので、コメントを見た担当者は本当に喜びます。ふだん目にすることのないauの一面を紹介することで、お客様とauの距離を縮め、また社内のモチベーションアップにも使っていけたらと思っています。
――運用していて困ったことはありますか?
松澤 お客さまからいただくコメントの中には、好意的なものもあれば、厳しいご意見をいただくこともあります。必要に応じてお客さまセンターの担当者や、店舗の担当者と連携して対応しています。
丸田 また、ツイッターに関しても「ソーシャルリスニング」という形で、CMの反響や新製品発表会の反応も調査していますし、フェイスブックにいただいた声も役員との打ち合わせでレポートとして提出していたりと、お客さまからいただいた声は関連部門に展開して共有しています。
製品発表会のライブ配信に大きな反響
――KDDIは新製品発表会のライブ中継も積極的に行っていますが、取り組み始めたきっかけは。
丸田 ライブ中継の第1回はちょうど我々が担当した施策で、2010年10月に「IS03」という端末を発表する際に実施しました。「ソーシャル上で話題にして欲しい」という狙いもあったのですが、当時我々はスマートフォンで他キャリアよりも出遅れていたこともあり、IS03という端末をきっかけに「auが逆襲を始めたよ」という話題にして欲しい、という考えからUsteramのライブ中継を実施しました。
当時は最初の10分間で回線がパンクしてつながらなくなり、端末発表ギリギリのタイミングでなんとか復旧した、ということもありましたが、今はいくつものノウハウを得ることで当たり前のようにライブ中継を実施できています。
――期待通りの話題性はありましたか?
丸田 ありましたね。さらに発表会に関する投稿を見ていくとリアルタイムの反応も確認できるため、プレゼンテーションの内容や資料の良し悪しといった効果検証という面でも役に立っています。お客さまに伝えるだけではなく、自分たちの反省材料にもなるという点では便利ですね。
――発表会の参加者だけに見せていたものをすべてライブで見せる、ということに怖さはありませんでしたか。
丸田 もう麻痺しちゃったのかもしれませんね。昔は神経質になっていたところもありますが、文句を言われるのは当たり前ですし、むしろ意見を言ってもらえるのはとてもありがたいことです。発表会のプレゼンテーションを行う社長の田中(孝司氏)の場合、プレゼンテーションの内容だけでなく服装にまでコメントをいただいたりして、それを本人に伝えたり、といったこともありますね。
ツイッター、フェイスブックに集中
――今後活用してみたいソーシャルメディアはありますか?
auのフェイスブックページ
丸田 今のところはツイッターとフェイスブックを活用していますが、それぞれ別の目的で運用しています。フェイスブックで大事にしているのはお客様との関係性で、プロモーション要素はもちろんあるものの、そうでない部分もできるだけ大事にしています。
普段は大きなニュースにならないような話題も、積極的に投稿することで「auってこういう人たちが働いているんだ、陰でこういうことに取り組んでいるんだ」というのを理解してもらえます。これまでもエリア構築や通信品質向上の話題はそれほど語られることもありませんでしたし、ネットワークセンターのスタッフがフォーカスされることも通常業務ではあまりないのですが、そうしたスタッフの業務を紹介し、お客様からねぎらいやお褒めの言葉をいただくことで、スタッフのモチベーションにつながっている面もあります。そういう点でもフェイスブックは継続して活用していきたいですね。
一方、ツイッターはもう少しいろいろな使い方ができるのでは、と感じています。先日「フェイスブックはホームパーティーみたいなもので、ツイッターは知っている人も知らない人もみんな参加するお祭りみたいなもの」という例えを聞きました。ツイッターでは情報発信ツールとしての役割はもちろん、みんなを楽しませるような企画を考えてみたいですね。
松澤 フェイスブックもツイッターもまだ手探りの状態ですので、他社のアカウントも見ながら、徐々にKDDIらしさ、auらしさを出していきたいと思っています。
丸田 ソーシャルメディアは他にもたくさんのサービスがありますが、まずはツイッターとフェイスブックを中心に実績を積み重ね、傾向を分析していきたいですね。
――インタビュー雑感
ソーシャルメディア上で発信されたお客様の声を関連部門に共有したり、ユーザーのソーシャルメディア上の反応を見ながら、効果検証を行い次回の施策に活かすというKDDIの姿勢には感心しました。今後はソーシャルメディアを単なる情報発信のツールとして活用するだけではなく、お客様の声の傾聴の場の一つであると捉え、企業の活動に活かしていくことの重要性がますます高まっていくと感じました。(アジャイルメディア・ネットワーク)
インタビュー担当 AMN 甲斐祐樹、高柳慶太郎
高柳 慶太郎「ソーシャルメディア活用 先進企業に聞く」バックナンバー
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「ソーシャルメディア活用先進企業に聞く」バックナンバー
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