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コラム

ソーシャルメディア活用先進企業に聞く

【ソーシャルメディア活用(11)タワーレコード】「顧客への情報伝達に対する危機感が、ソーシャルメディア活用を加速した」

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今回は全国の店舗それぞれでTwitterアカウントを運用するなど非常に多くのソーシャルメディアを運用するタワーレコードの取り組みを、CRM推進室ソーシャル・マーケティング担当部長の宮崎清志さんにお伺いしました。

Twitter運用は業務ミッション

――ソーシャルメディアを使い始めたきっかけを教えてください。

宮崎 ソーシャルメディアを使い始めたのは2008年夏のことでした。タワーレコードは毎年夏フェスに協力して自社のブランディング活動を行なっていたのですが、2008年は今までと違ったことをやりたいという思いに加え、Webを使って音楽ファンとコミュニケーションを取ることも始める時期だと考えており、多くの音楽ファンが集まる夏フェスで一歩進んだブランドコミュニケーションを図っていくことが目的です。

その年の夏フェスでは、YouTubeとmixi、そしてTwitterを活用することにしました。YouTubeでは夏フェスに参加したアーティストの意気込みやステージの感想をインタビューし、その動画をその場でアップロードすることで、夏フェスに興味を持っている方へのPRを行ないました。また、mixiでは夏フェス限定のコミュニティを開設し、撮影した動画をコミュニティへ投稿したりという連携を行なっていました。

Twitterはこれらサービスとは別の目的で、各ステージにスタッフを配置して実況を行なうことで、他のステージの盛り上がりが気になるオーディエンスに各ステージの状況を伝えることが狙いでした。ただ、2008年当時はTwitterが今ほど盛り上がっていなかったこともあり、思ったような反響はなかったですね。タワーレコードのサイトにTwitterの投稿が反映されるため、サイトを訪れた方には会場の様子を伝えられたのですが、肝心の夏フェス参加者とのコミュニケーションはなかった、というのが実情です。

――2008年というとTwitterもやっと日本語化されたばかりという状況でしたが、それでもTwitterを使われた理由はどこにあったのでしょうか。

宮崎 まずは無料だしやってみよう、ということですね。海外ではTwitterが流行しているのがわかっていましたし、スタッフもTwitter専任ではなく、自社のフリーマガジン「bounce」編集部がライブレポートを書く間にTwitterに投稿する、という兼任作業だったことで実施することができました。

また、弊社社長の嶺脇(当時取締役)が、常々Webプロモーションをやっていこうという姿勢でリーダーシップをとっていたこともあり、Webの活用には非常に前向きでした。Twitterのような新しいWebツールを利用する際も、社内や上層部にTwitterが何なのか説明しなければならない、という必要がなかったのも大きかったですね。

――Twitterは思ったほどの成果がなかったとのことですが、現在は非常に多くのTwitterアカウントを積極的に運用されています。何がきっかけでTwitterを使われるようになったのでしょうか。

宮崎 夏フェスをきっかけにタワーレコードのTwitter公式アカウントを開設したものの、「今はまだ効果がない」ということで1年くらい休眠状態にあり、改めて動き出したのは2009年秋頃のことですね。

それには2つの動きがありました。1つは前述の社長が「Twitterがそろそろ流行しだしているので、やってみたほうがいいのではないか」と動き出したことです。社長自らタワーレコードの公式アカウントで投稿しはじめたら手応えがあったようで、「Twitterを利用して情報発信した方がいい」という流れになりました。

それと同じ頃、タワーレコード渋谷店7階にあるタワーブックスがTwitterアカウントをスタッフの判断で独自に始めていました。タワーブックスは洋書を多く扱っているだけでなくお客さまに海外の方も多いので、英語に堪能なスタッフが多く在籍していたんですね。そうしたスタッフは海外でTwitterが流行している事も知っていますし、実際に海外の友達ともTwitterでやり取りしていてなじみがあったようです。

どちらも根底にあったのは、集客やお客様への情報伝達に強く危機感を覚えていたことです。タワーレコードは音楽情報の発信基地で、タワーレコードに行けば新しい音楽に出会える、そんな場所を目指していますが、インターネットで音楽情報をチェックでき動画サイトで楽曲試聴もできる時代になった今、店内で情報発信しているだけでは、音楽との出会いを提供できなくなってしまうのではないか。これからは商品やキャンペーンの情報はもとより、イベントやライブなどリアル店舗の魅力を店外の音楽ファンに積極的に届けていかなければいけないのではないか。店舗勤務経験の長い社長や、お客様と日々接している店舗スタッフが、同じ問題意識の中、試行錯誤してたどり着いたのがTwitterだったのです。

こうした流れで、会社としてもきちんとTwitterのアカウントを運用してプロモーションしよう、と始めたのが2009年秋になります。

――ソーシャルメディア運用への不安はなかったのでしょうか。

宮崎 そういう話もありましたが、我々はもともと接客業としてお客様に対応していますし、店頭接客の延長線上で運用すれば問題ないだろう、と考えていました。とはいえソーシャルメディアならではのリスクや効果的な活用方法もありますので、運用ルールや禁止事項をまとめたガイドライン、投稿内容や告知方法といった運用のコツを交えたマニュアルを作成し、担当スタッフ間で共有しました。

――Twitterの運用は誰が担当したのでしょうか。

宮崎 基本的には「やりたい!」と手を挙げたスタッフですね。当初は広報アカウント、音楽ニュース、渋谷店、新宿店など10アカウント程度ですが、2、3カ月ごとにアカウントはどんどん増えていきました。

――本格的なTwitter運用を開始して手応えを感じたのはいつ頃でしょうか。

宮崎 2009年冬にタワーレコード30周年を記念したライブで、Twitterレポーターを募集しました。3組6名程度の小規模ではありましたが50名を超える応募をいただき、当日もライブを楽しみつつTwitterで積極的にレポートして、とても盛り上がりました。

レポーターには「ライブ中少なくとも数ツイートはしてください」という程度の条件は設けたのですが、実際にはライブに夢中になってあまりツイートしないのではないか、と思っていました。ところが想像以上にツイートしていただき、さらにはレポーター同士や来場できなかったファンの方ともコミュニケーションを図るなど、予想もしていないところで盛り上がりがみられました。

ライブ後の意見交流会でも「普段と違ってレポーターとして招待されるのは嬉しいし、レポートするのも楽しかった」と好評でした。この施策がTwitterを使った初めてのユーザー参加型の取り組みだったのですが、Twitterと音楽との親和性について非常に手応えを感じましたね。

――逆に苦労されたことはありますか。

宮崎 今でこそ全店でTwitterを運用していますが、その途中ではいろいろ苦労もありました。ユーザー目線で考えたとき、Twitterのアカウントは店舗ごとに加えて音楽のジャンル別でもあったほうがいいと以前より考えていました。先にはじめたK-POPやアニメのアカウントはフォロワー数も急増し成功していたのですが、他のジャンルに広げようとしても業務中にそこまで手が回らなかったり、トラブルにどう対処していいかわからないというネガティブな反応が根強かったです。

タワーレコード店舗のTwitterアカウント一覧。今では全店舗が活用している

店舗も同様で、大型店舗は積極的に運用して反応もいいのですが、小型の店舗はスタッフの人数も多くありませんし、投稿ネタになるイベントも少ないため、なかなか手を挙げてくれませんでした。

とはいえ商圏によってTwitterユーザーの人数に違いはありますし、モチベーションが不確かなまま無理に運用してもお客さまには伝わってしまう。Twitterはあくまで宣伝手法の1つであって、Twitterをやらないからだめということではなく、あくまで店舗スタッフの自主性に任せていました。

2012年春までに店舗の約半分がTwitterを運用していたのですが、年度が変わるタイミングで社長が「Twitterは宣伝業務の1つとして全店舗で運用しよう」と判断し、ガイドラインやマニュアルを改めて策定した上で、4月からはTwitter運用を業務ミッションとして全店舗&12のジャンルでスタートしました。

ソーシャルメディアの世間的な普及、スマートフォンによる運用インフラの整備、さらにはTwitterによるPR効果や集客への寄与が数値結果として明らかになってきたことも背中を押しました。