コラム

ソーシャルメディア活用先進企業に聞く

【ソーシャルメディア活用(11)タワーレコード】「顧客への情報伝達に対する危機感が、ソーシャルメディア活用を加速した」

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POPを上手に書くスタッフはTwitterの運用も上手い

――4月にTwitterを始めたスタッフの反応はいかがですか。

宮崎 店舗によって反応は様々ですが、イベントへの集客、Twitterでのお問い合わせ、タワーレコードをキーワードとした多数のツイートなど、情報発信することで新たな反応や注目が生まれていることは実感しています。

また音楽小売では毎週新しい商品が発売されますので、情報が陳腐化しやすい傾向にあります。だからこそ即時性の高いTwitterで情報発信することは有効で、鮮度の高い情報を伝えることで集客や購入の機会を増やせると考えています。

――接客業だからTwitter運用も問題ない、というお話もありましたが、レコード店の場合は音楽を紹介するPOPがTwitterの空気に合っているのでは、という印象もあります。

宮崎 そうですね、POPのコメントを書いていたスタッフは、やはりTwitterの運用も上手いです。また、これはタワーレコードの風土かもしれないですが、ツイートの「ノリ」も親しみやすいんですよね。特に自身が好きなジャンルについては短いコメントからも熱が溢れています。これはスタッフの顔が見えてとてもいい効果を生み出していると思います。

――店舗以外のアカウントは誰が担当しているのでしょうか。

宮崎 ジャンルアカウントは、それぞれのバイヤーが業務の一環として担当しています。全体の運用管理や、ソーシャルメディアのマーケティング推進については、2011年春にソーシャル・マーケティング推進プロジェクトでチームを結成し、私を含めて3人の担当で運用しています。

――そのプロジェクトではどのような業務を行なっているのでしょうか。

宮崎 2011年春までTwitterを含めたソーシャルメディアは主に情報発信を目的として運用していましたが、小売として活用するのであれば売上を最終的なゴールにしたいという思いがあり、そのためのトライアルや検証を腰を据えて行いたいということから、社長が音頭を取りスタートしました。

効果検証は、ターゲットやマーケットを明確にしたほうが結果が見えやすいため、ジャンルアカウントにフォーカスし、いくつものジャンルの中からマーケットが大きいK-POPを対象にして行ないました。K-POPファンの中心は女性層であり、クチコミが伝わりやすいとの仮説もありました。そこで、K-POP好きな社内スタッフを公募し、1年間に渡ってK-POPの販売促進を目的に、ソーシャルメディアのマーケティング活用を推進するプロジェクトを展開しました。

結果は先日のアドタイでも掲載いただきましたが、Twitterからタワーレコード・オンラインへの流入は飛躍的に増加し、K-POP関連ページのトラフィックも大幅増を実現。タワーレコード・オンラインでの集客や広告効果として非常に大きな成果を得ることができました。このプロジェクトは1年間で終了したのですが、非常によい成果が出たので現在も継続展開しています。今後はジャンルの拡大も視野に入れています。

――どのようなジャンルに広げていくのでしょうか。

宮崎 正直まだ迷っています。当時K-POPは他のジャンルに比べ情報が少なかったことと、海外の情報や輸入盤をタワーレコードのフィルターを通して伝えることに意味がありました。まだマーケットが小さい時期から積極的に取り組んだことで、ファンの方からも多数の支持をいただきました。その点でK-POPと同じくらいの成果を他のジャンルで上げるのは難しいかもしれませんが、方法を模索していきたいと思います。

目的に合わせてさまざまなソーシャルメディアを活用

――最近ではTwitter以外にFacebookも活用されていますね。

宮崎 「無料のサービスは全部試してみよう」というスタンスで、ソーシャル・マーケティング推進プロジェクトの発足と同時に開始しました。併せてブログやmixiページも開設しています。

――写真共有サービスとしてFlickrも活用されているのは驚きました。

宮崎 実はFlickrを使い始めたのはTwitterと同じ2008年の夏フェスで、会場で撮影した写真を肖像権の許諾を取った上で掲載しています。最近ではライブ事業部が開催したライブのステージ写真をレポートとして公開しています。

――他のサービスと比べるとFlickrは日本語にも対応しておらず特異な印象を受けますが、Flickrを選ばれた理由は。

宮崎 国内のサービスも検討しましたが、スタイリッシュで見栄えが良かったこと、そして操作も簡単で手軽に使えたことが理由ですね。Flickr社には「こういったプロモーションを行ないたい」というメールを英語で送り、確認を取った上で運用を開始しました。

――Twitter以外のソーシャルメディア運用の手応えはいかがですか。

宮崎 Ustreamの視聴者数は次第に増加しており、確実に視聴者の幅が広がっていますね。番組内で紹介したCDを購入してくださる方や、「明日買いに行きます」といったツイートが番組中タイムラインに流れたりと、Ustreamを通して販売促進の効果も出てきました。

我々の目的は音楽と出会う最良の場所を提供することであり、それは店舗に限らずソーシャルメディアでも同じことだと実感しています。

――Ustream以外のアカウントはいかがでしょうか。

宮崎 これは推測ですが、mixiユーザーはコミュニティを重視されているのではないでしょうか。「タワーレコード」や「NO MUSIC, NO LIFE.」のmixiコミュニティは数千~数万人の参加者がいるのですが、夏フェスの際にタワーレコードがタイアップしたコミュニティはその数に到底届きませんでした。そのとき感じたのは「mixiのコミュニティに企業が入ってはいけないのかな」ということですね。mixiページは開設して半年以上経ちますが、まだ手応えを感じていないというのが正直なところです。

FacebookページはK-POPが伸びていますね。アジア全体でK-POPが盛り上がっていることもあり、海外の方も含めて8万人近いファンを獲得しています。

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海外からのファンも多い、K-POPのFacebookページ

ただ、FacebookもTwitterに比べると何を投稿していいか、悩ましい部分があります。音楽ニュースは毎日のようにあり、他にもインタビューやイベントレポートなど、投稿するコンテンツには事欠かないどころか多いくらいなのです。こうした情報を発信するのにリアルタイム性の強いTwitterは非常に相性が良いですが、一方でFacebookは情報発信の場とすべきなのか、それともファンとのコミュニティの場とすべきなのか、試行錯誤を続けている状態です。

――ブログはどのような位置付けなのでしょうか。

宮崎 フローメディアであるTwitterやFacebookで投稿しているのは、拡散を目的とした鮮度の高い情報である一方、ストックメディアであるブログでは時間が経過しても読み返せる質の高い記事を生成するようにしています。例えば、チャートやレビューなどをYouTubeの動画を交えつつ紹介したり、Ustreamやイベントのレポートなどをエントリーしています。アーカイブされた記事は、アーティストやタイトル名で検索された際に再び注目を浴び接点を創出することができるため、一定のクラスタに存在感を示すことができます。またCVRがほかに比べ高い傾向にあり販売促進においても重要性を感じています。

――今後取り組みたいサービスはありますか。

宮崎 動画配信については、出演者によってメディアの好みもありますので、UstreamだけでなくYouTubeやニコニコ生放送などいくつかのプラットフォームで配信できるような環境を整えたいと考えています。さらに、アニメ系のイベントであればニコニコの相性がよさそうだなとか、ターゲットに合わせたプラットフォームの利用も検討したいですね。

LINEも興味はありますが、ちょっと高いですね(笑)。Google+では、インタビューや連載記事など、タワーレコードのオリジナルコンテンツを公開しています。現在は企業ページ1つのみですが、今後利用者の幅が広がるようであれば、ジャンルページを立ち上げ、YouTubeやショッピングなどGoogleのサービスと連携して取り組むのもよいかもしれません。

そのほか、Tumblrはブログ利用に加え、NO MUSIC, NO LIFE.ポスターのアーカイブとして、Pinterestは夏フェスグッズや音楽アクセサリーなど、タワーレコードがオリジナルで制作しているグッズを中心に紹介しています。
どちらもクリッピングできることが強みですが、権利面を考慮しつつそれぞれの特性に合ったコンテンツを取り上げていきたいと思います。

そうした各種サービスの特徴も分析していきたいと思います。

―——インタビュー雑感
消費者のニーズの変化が激しいエンターテイメント業界において、常に消費者のニーズの変化を捉えながら、情報発信を行い、コミュニケーションをとっていくというのは非常に大変なことだと思います。ただ、それが実行できるのは、日頃から実際の店舗などでお客様と向き合ってビジネスをしているタワーレコードの強みの一つだと思いました。

また、ソーシャルメディアの活用を、単なる情報発信に留まらず、ファンとのコミュニケーション、ファン同士のコミュニケーション活性化につなげる取り組みは、ソーシャルメディア活用の本質なのではないかと感じました。(アジャイルメディア・ネットワーク)

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インタビュー担当 AMN 甲斐祐樹

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