箭内道彦さんに聞く(後編)「バラバラになった日本を、広告の技と愛でつなげたら」

箭内道彦さんに聞く(前編)はこちら

箭内道彦 プロフィール
すき あいたい ヤバい クリエイティブディレクター。「月刊風とロック(定価0円)」編集長。主な仕事にタワーレコード「NOMUSIC,NOLIFE.キャンペーン」、リクルート「ゼクシィ」などがある。


前編の続きです。

今、異なる意見の間にある問題をちゃんと顕在化し、橋渡しをする人が必要。

並河:「ごしごし福島基金」を立ち上げて気づいたんですが、「除染活動を伝える」というのは、一方で、「福島には放射線量が高いところがある」と伝えることにもつながってしまうかもしれないんです。

ものごとは、いろんな見方があって、プラスの部分も、マイナスの部分もあるんですよね。

箭内:そうした葛藤を、抱え続けること、伝えつづけることが大事。今の日本は、なんでも、二択の時代になっちゃっている。二択じゃない答を探そうとすると、「黙っている」という道しかない。

ほんとうに目を向けなければいけないのは、そのどちらの選択肢にも、プラスとマイナスの二面性がある、という部分だと思うんですよね。

そういう二面性をきちんと伝える人がいない。白か黒かで決めつけるのではなく、異なる意見の間にある問題をちゃんと顕在化し、橋渡しができる人が、今必要なんじゃないかと思うんです。

並河:こちら側の意見も、そちら側の意見も、取り入れながら、カタチにしていくという。それって、広告づくりのスキルに近いですよね。

箭内:そう。たぶん、そうだと思うんですよね。

広告をつくっている人は、白か黒かで決めつけない感覚が体に染みついているから、今いろいろな問題に対して黙っているんだと思うんですよね。

でも、これからは、黙っている、で終わってはいけない。
広告づくりのスキルと感覚を、ものごとをよくするために捧げていかないと。

生意気なことを言わせてもらえば、いま、日本がバラバラになっちゃっていると思うんですよね。

放射線のせいで、人と人が傷つけあったり、疑いあったりするようになってしまった。それが、今回の放射線の大きな罪だと思う。そこをなんとか、したい。

みんなが本当に伝えあいたいことを、誤解なく、冷静に、きちんと伝えあえるように、今、広告をつくる人は活躍すべきだと思うんです。

「君と僕の違うところを尊敬し合いたい」

並河:日本人って、政治や社会の問題について、話すのが、とても苦手ですよね。政治や社会の問題にどう触れればいいのか、その話法がわからない。でも、もうみんなで話さなければいけないときが来てしまった。

意見が違う人同士が、大切なことを話す、もっと「軽やかな方法」があればいいんですが。

箭内:僕がTHE HUMAN BEATSというプロジェクトで今月リリースしたのが、「Two Shot」という歌なんです。

「君と僕の違うところを尊敬し合いたい
 僕と君の同じところを大切にしていたい」
という詞で始まる歌なんですが、このことをどうしても今、言いたくなっちゃって、亀田誠治さんたちと、レコーディングしたんです。

「Two Shot」って、同じ考えをくくっていこうじゃなくて、違う考えを持った者同士が前に進める方法を見つけるために、一つのフレームにおさまる、ということなんです。

並河:エマニュエル・レヴィナスという哲学者がいて、「100人が正しいと思っていたとしても、そうではない考えの人が現れたときに、理解はできないけれど認める、というのが倫理だ」と言っているんですよね。

自分と他者の関係の中で、理解しえぬ他者こそが自分にとっての希望だと。

箭内:自分の正しさを証明するために、相手を否定してしまうと、そこでコミュニケーションが止まってしまう。

自分の気持ちには正直に、だけど、つながりを断ち切らず、前に、のらりくらりすごい速いスピードで進んでいく、ということが必要なんだろうなあと思います。

あと、みんな、もっと、かわいければいいのに!と思う。たとえば、総理大臣だって、もっとかわいければ、きっとみんな応援するのに!と思う。総理大臣が、「今がんばってんだけど、本当に大変でさ。ちょっと待ってて!頼むから」って本音で言ってくれたら、みんなも分かってくれる部分ってあると思うんですよね。

愛という概念を、鮮やかにちゃんとみんなに届けたい。

並河:震災後、「風とロック」を解散して、「すき あいたい ヤバい」という会社をつくりましたよね。その心境の変化って、なんだったんですか?

箭内:ロックっていうのは、平和な社会にこそ必要なものであって、今は優しさが必要なときだ、と感じたから、「すき」とか「あいたい」とか、そういう言葉を入れた社名にしたんです。

違う、と思ったら、違うことを隠して生きて行くのではなく、違うことを違わないものにすぐに変えていける自分でありたいと思ったんですよね。

でも考えてみれば、ロックって破壊だけじゃない。ロックこそが愛なんだ、と気づいて、「風とロック」を復活させたんです。

並河:何かを決めつけたり、否定したりして、人と人がバラバラになってしまうのではなく、そうした人と人の間をつなぐ、優しさとか愛とかロックとかが日本には今必要とされているのかもしれないですね。

箭内:そして、そういう愛という概念を、うざいとか陳腐とかインパクトがないと思われたりするカタチじゃなくて、鮮やかにちゃんとみんなに届くようにするのが、広告の技術だと思うんです。

次回は、東急エージェンシーの丸原孝紀さん
丸原孝紀さんに聞く(前編)「ホットパンツで革命を」です。

並河 進「広告の未来の話をしよう。COMMUNICATION SHIFT」バックナンバー

並河 進(電通ソーシャル・デザイン・エンジン コピーライター)
並河 進(電通ソーシャル・デザイン・エンジン コピーライター)

1973年生まれ。電通ソーシャル・デザイン・エンジン所属コピーライター。ユニセフ「世界手洗いの日」プロジェクト、祈りのツリープロジェクトなど、ソーシャル・プロジェクトを数多く手掛ける。DENTSU GAL LABO代表。ワールドシフト・ネットワーク・ジャパン・クリエーティブディレクター。宮城大学、上智大大学院、東京工芸大学非常勤講師。受賞歴に、ACCシルバー、TCC新人賞、読売広告大賞など。著書に『下駄箱のラブレター』(ポプラ社)、『しろくまくん どうして?』(朝日新聞出版社)、『ハッピーバースデイ 3.11』(飛鳥新社)他。

並河 進(電通ソーシャル・デザイン・エンジン コピーライター)

1973年生まれ。電通ソーシャル・デザイン・エンジン所属コピーライター。ユニセフ「世界手洗いの日」プロジェクト、祈りのツリープロジェクトなど、ソーシャル・プロジェクトを数多く手掛ける。DENTSU GAL LABO代表。ワールドシフト・ネットワーク・ジャパン・クリエーティブディレクター。宮城大学、上智大大学院、東京工芸大学非常勤講師。受賞歴に、ACCシルバー、TCC新人賞、読売広告大賞など。著書に『下駄箱のラブレター』(ポプラ社)、『しろくまくん どうして?』(朝日新聞出版社)、『ハッピーバースデイ 3.11』(飛鳥新社)他。

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