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コラム

楽天大学学長が語る「EC温故知新」

スーパーより2倍高いタマゴがネットで超絶な売れ方をする理由

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ちなみに、実店舗で160個入りを買うお客さんは、「陣中見舞い」や「業務用」が目立つといいます。畠中さんは、こう言います。「実店舗の場合、小ロットを何度か買いに来たほうが、鮮度が良いわけです。ネットの場合はどうしても送料がネックですから、一度になるべくたくさん買ったほうがいいですもんね」。

なお、160個入りを買うお客さんは、「お店や商品のファン」なので、レビューも高得点です。

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この事例で、私が大切だと思うのは次の3つです。

(1)「常連さんに楽しんでもらおう」という発想

「新規利用のときだけ大幅値引き」とか「赤字のお試し商品」のような施策を取って売り上げを立てながら、「ネットは価格競争が厳しくてしんどい」とか「ネットは広告費がかかってしんどい」と嘆いている人がいます。でも、お客さんの立場でちょっと考えてみると、新規の人にサービスをして、リピーターにはサービスしない、という「常連さんに厳しいお店」と長くつき合いたいとは思いにくいはずです。おそらく、お客さんを「数字」としてしか見ていないと、そのようなことに気づきにくくなってしまいがちです。
「究極の対面販売」型のネットショップは、お客さんを「人」だとわかっています。さらにそのお客さんに喜んでもらいたい、面白がってもらいたい、という気持ちを常に持っているので、「自動販売機ではできない企画」を思いつくわけです。

(2)一人で使い切れない量のセット商品はシェアされる

「ソーシャルマーケティングはクチコミを発生させることが大事」というハナシを聞いて、まず先に「紹介者への報酬制度」のようなものをやろうとする人がいます。ただし、それがうまくいくためには大前提として、「クチコミされた側が喜ぶような価値」を提供できていることが必要不可欠。しかも、金銭的報酬で動く人というのは、「人となり」が醸し出されやすい(バレやすい)ソーシャル時代においては、他人からあまり言うことを聞いてもらえなくなりがちです。

したがって、「クチコミしたくなる価値をどうデザインするか」と「クチコミされやすくするためには何ができるか」を考えるほうが、中長期的には効果的といえます。

その「クチコミされやすくするアイデア」の一つが、今回の卵のように「一人で使い切れない量のセット商品をつくること」です。ただ、知らない商品についていきなり大量セットを買う人はいないので、「すでに商品の価値をわかってくれている人(ファン)がいること」が前提になります。
また、畠中さんのコメントにもあるように、ネットの場合は「送料がかかってしまう弱点」をチャンスに変える一つのアイデアが「大量ロット」なのです。

(3)やり続けるうちに、予想もしない面白い展開が起こる

オークションのような企画は、手間がかかります。しかも、「卵80個オークション」は目先の売上にも利益にもつながらないであろう企画としてスタートしています。宣伝や販促の施策を考えるときに「これをやるとどれだけ売り上げ(または利益)が伸びるか」ということを考えるのは、ビジネスとしては当然です。ただ、ソーシャルメディアによって複雑につながりあっている現代においては、「論理的に想定できる因果関係」とはまったく異なる「予想もしない面白い展開」が起こることがよくあります。卵の例はリアルなつながりによるものですが、リアルのつながりですら想定外の展開が起こったのに、いわんやネットをや、というわけです。

したがって、「手間はかかるが、自分が価値あると思えるし、やっていて楽しいこと」は、短期的に効率が悪そうに見えても、やり続けることで量が質に転化して、まるでワープしたかのような展開が起こり得る、という視点を持っておくことは大切だと思います。

※この連載では、「EC温故知新」というテーマで、「自動販売機型のネットショップにはできない売り方」でお客さんを魅了する事例などを中心に紹介していきます。