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広告界にも新入社員 どのように付き合っていけばいい?

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今年も多くの新入社員が電通、博報堂をはじめ広告界に入社した。その若手社員とよりよくビジネスをしていくにはどうしたらよいのか。若者の雇用・労働、キャリアを中心に調査・研究を行う常見陽平氏に聞いた。

粒ぞろいより粒違いを採用する

電通136人、博報堂102人。今年4月に両社に入社した新入社員の数だ。入社人数の変動は見受けられるが(表)今年もこの2社をはじめ多くの新社会人が広告界に入ってきた。日本生産性本部の職業のあり方研究会は、毎年発表している新入社員の特徴として2013年度の新入社員は、時間短縮形就活の一期生として、自走式の掃除機で主婦の家事に対する時間軽減に役立ったりする「ロボット掃除機型」と表している。

一方で数多くいる新入社員をひとくくりにできないという声もあるが博報堂の人事担当者に今年度の新入社員に傾向はあるのかを聞いてみたところ、次のような回答があった。「博報堂/博報堂DYメディアパートナーズでは、特にこれと決まったタイプの人材を求めてはいないため、新入社員のタイプもさまざまです。採用の考え方として大事にしているのが『粒ぞろい、より、粒違い』。さまざまなバックグラウンドや個性を持った人間がぶつかりあうことで、クリエイティブなものが生まれると考えています」。電通も同様に多様な人材を求めており、傾向として表すのは難しいとの回答だった。

若手社員に向き合うことがより良いビジネスを生む

このように、採用する際に求める人材はさまざまな個性を持つ学生である。若者の雇用・労働、キャリアを中心に調査・研究を行うHR 総合調査研究所の常見陽平氏も「実際にここ数年で広告界に入社した社員を見ると、大学時代にインターネット関連のビジネスを起業していた人も多いです」と言い、幅広い人材が流入してきているのは確かなようだ。

また、常見氏に、こうした新入社員をはじめとする若手社員とより良く仕事をしていくポイントを聞いたところ「仕事の魅力を腹落ちさせてあげること」とする。「₉0年代の中ごろから就職活動時に『自己分析』を行うようになりました。これにより年々、自己実現志向が高い人が入社してきています。自己実現志向高く入社した彼らが希望外の部署に配属になった場合、やりたかったこととの違いで早々に会社を辞めてしまう可能性も少なくありません。だからこそ、この仕事をやる意味をきちんと伝える必要があるのです」。若手社員を育成する中心層である30代後半から40代社員はその考え方の違いをまずは認識しなければならないという。

この考え方の違いだけであれば、ほかの業界でも変わらないかもしれない。しかし、普段からテレビや新聞でよく目にする「広告」関連の仕事は華やかな分野に学生には思えてしまう。実際、ダイヤモンド・ビッグ アンド リード社が発表した大学生が選んだ就職先人気ランキング2013の文系・男子部門において、電通が22位(2012では13位)、博報堂が35位(同2₇位)がランクインしている。前年より順位は落ちているが、テレビ局や出版社、新聞社はこれより上位におらず、ミーハー層が応募する代名詞ともされていたマスコミ界の中では際立った。

そもそも広告会社は人気の領域であり、なおかつ最近の就職活動は、インターネットでの受付が中心で簡単に応募できる環境だ。そのため、実際に採用された人たちは、数多くの応募者の中から勝ち抜いた人であり、考え方の不一致を招きかねない自己実現志向が強い人がより多い可能性が高いのではないか。

先の4月19日、安倍晋三首相は、経団連、日本商工会議所、経済同友会に対し、2016年卒業の大学生への採用活動情報開示を3年生の3月(現在3年生の12月)、選考開始を4年生の8月(同4年生の4月)に企業採用ルールを定めた「倫理憲章」を改定するように要請した。採用活動に対して、世の中の注目がより集まっているが、まずはこの4月に入社した社員と正面から向き合い、その仕事の必要性を伝える。このことが、広告界をより活性化していくためにも必要なことだと思われる。