新たな参加型企画「デザインコンペ」で、新商品を共創
出店13年を経て、新たな名物企画も育ってきています。それがオリジナル風呂敷をつくる「デザインコンペ」です。デザインを募集して一等になった作品を商品化する企画で、年に一回ずつ、これまでに4回開催されています。
第1回目の作品は、累計6000枚を売るヒット商品になっていて、名実を兼ね備えた参加型企画といえます。応募も年々増えてきていて、直近では700点ものデザインが集まるようになっています。応募者には、グラフィックデザイナーも多く、まだ知られていない才能あるアーティストに活躍の場を提供する機会にもなっているようです。選考の様子がページにアップされているのですが、廊下までびっしりとデザイン案が並べられているさまは、壮観です。
この事例を通して、私が大切だと思うのは次の3つです。
(1)ソーシャル時代に「自然にツッコまれやすいお店」は盛り上がる
前の記事からの繰り返しになりますが、この連載では、ネットショップには「究極の自動販売機」型と「究極の対面販売」型という2つの方向性がある、という前提(第1回参照)で考えてきています。
スキのないコンテンツやつぶやきというのは、「SNSでコメントしにくいランキング」の上位です。逆に言うと、「ツッコまれやすさ」というのが一つのキーワードになります。ただ、「賢い人がコメントさせようと計算し尽くした参加型コンテンツ」というのも、長く付き合っていくうちにだんだん「コントロールされてる感」が感じられてきたりして、人が離れていく傾向があります。
「シルエットクイズ」のように、店長やスタッフの人柄が表れた自然な形としての「ツッコまれやすさ」のあるお店は、そこから生まれる会話をきっかけにしながら、長い時間をかけて「本当の意味でのファン」が増えていきます。
(2)よい面白企画の裏には、骨太な背景と充実したコンテンツがある
「シルエットクイズ」がお客さんの問い合わせをきっかけに生まれたように、「よい面白企画」の裏側には「骨太な背景」があることが多いです。冒頭の記事では触れていませんが、「ふろしきや」さんには充実したコンテンツがあります。たとえば最近、海外の外国人からの注文が増えてきたので、サービスとして「風呂敷の包み方」の英訳パンフレットや「古典柄の意味」を解説する英訳資料もつけています。新柄が出るたびに、千恵子店長が柄の解説を書いているのです。
それらのコンテンツの蓄積によって、千恵子店長は2007年に『カジュアルふろしきライフ』という著書を出版するに至っています。
(3)商材を安易に広げず、深掘りするほうが旗が立つ
風呂敷専門店として始まっている「ふろしきや」さんですが、これまでに「和雑貨なんかに手を広げたほうがよいのではないか」という迷いも大きくあったといいます。ただ、屋号が「ふろしきや」で商標も取っていたので、「風呂敷一本で強みを磨いていこう」とコツコツ続けてきたそうです。
「おかげで母が風呂敷の本を出版するようになったりして、結果的には風呂敷ではウチが一番専門的になれているんじゃないかと思います。広い商材を扱って一番になるのは簡単じゃないけど、ニッチな世界で思いっきりがんばれば、一番になれる可能性がある。風呂敷で日本一なら、世界一ですし(笑)」(稔之社長)
お客さんの心に刺さり、記憶に残るブランドになるには「捨てること」が大事だといわれますが、実際に葛藤しながら実践している「ふろしきや」さんの「商売を楽しむ姿」に、たくさんのことを学ばせていただいています。
※この連載では、「EC温故知新」というテーマで、「自動販売機型のネットショップにはできない売り方」でお客さんを魅了する事例などを中心に紹介していきます。
あのお店はなぜ消耗戦を抜け出せたのか
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