広告界の業界団体である公益社団法人全日本広告連盟(全広連)が今年10月、創立60周年を迎えるに当たり、記念大会が5月に青森で開かれました。この企画は全広連と来春60周年を迎える宣伝会議とのコラボレーションの一環で、青森大会のレポートや地域ごとの取り組みを紹介します。
全広連60周年の青森大会の目玉は、大手広告主でブランドや宣伝・制作を統括する5人によるパネルディスカッション。中央大学ビジネススクール・田中洋教授が広告市場の予測と今後起こりうるメディア環境変化について解説したのち、各社の事例がそれぞれ紹介されました。パネリスト同士の質疑も行われ、2時間にわたる密度の濃い議論が繰り広げられました。3回目の今回は、資生堂・ズナイデン房子氏と大和ハウス工業・山本誠氏の話を中心に紹介します。
▽パネリスト
- トヨタマーケティングジャパン・河本二郎氏
- サントリービジネスエキスパート・久保田和昌氏
- 味の素・島崎紘而氏
- 資生堂・ズナイデン房子氏
- 大和ハウス工業・山本 誠氏
▽モデレーター
- 中央大学ビジネススクール教授・田中 洋氏
ブランド、大胆に方向転換――資生堂・ズナイデン氏
利用シーンに消費者がいなくなった

資生堂 国内化粧品事業部 ブランド企画部長
ズナイデン房子氏
資生堂にて、国内化粧品事業部のブランド開発、
ブランド育成、ブランドポートフォリオなど、ブラン
ドマネジメント全般を担当する。
ズナイデン(資生堂):
当社のシーブリーズというブランドは、売り上げの低下に歯止めがかからず、数年前まで苦戦を強いられていました。しかし、リポジショニングをきっかけに、今や若年層のお客さまから大変強い支持をいただいています。
シーブリーズは1902年に家庭用常備薬としてアメリカで誕生しました。69年に日本に入り、80年代はマリンスポーツを愛する若者の必須アイテムとして浸透していきます。96年~98年には安室奈美恵さんを起用して爆発的に売れ、その後、2000年に資生堂のブランドになりました。
しかし、売り上げは低迷。ナチュラルエイドをコンセプトに、原点に立ち返ったコミュニケーションを展開しましたが、01年から6年間売り上げは下降。原因はブランドイメージと若者の生活志向とのギャップでした。かつてシーブリーズはマリンスポーツ愛好者に支持されていましたが、今多くの若者は海で体を焼きません。使用シーンに若者がいないのです。