社会のためになる消費(1) エシカル消費はもうすぐ当たり前になる

日本では18世紀頃から近江商人の「三方よし」に代表される商道徳が重んじられてきました。一方、消費者としての道徳観はどうでしょうか。何を選び、お金を使うのか、消費は大事な課題解決の手段の1つですが、その割に「消費道徳」というのはあまり聞いたことがありません。
そこで、『環境会議』2013秋号では、「ソーシャル消費」や「エシカル消費」の最新動向を踏まえて、社会のためになる消費のあり方を考える特集を組んでみました。本誌の一部を紹介します。

河口 真理子(大和総研 調査本部 主席研究員)

3・11後、思いやりや環境への関心が高まったといわれる。その分かりやすい事例がエシカル消費への注目である。最近ではエシカルジュエリーやエシカル・ウェディングなどが多くの関心を集めるようになった。しかし、これは一過性のブームではなく、歴史的に見て消費の質を転換させる経済発展の一つの段階だと考える。

3・11後の価値観

3・11大震災と福島原発事故からはや2年半たち被災地以外の経済や社会生活は通常モードに戻りつつあるように見える。しかし震災を機に前とは大きく変わった点が2つある。1つは「エコマインド」。それまで、エコ製品や省エネなどは、環境問題に関心のある一部の人たち向けのニッチビジネスだったが、2011年の大規模な節電の経験や再生可能エネルギーの促進策として期待される固定価格買取制度(FIT)の導入などによって、省エネ製品や自然エネルギーなどはビジネスとしても市民生活においても「当たり前」になった。

もう一つは人々の価値観である。たとえば震災半年後に行われた意識調査

*1

では、今後の社会生活において重要と考えることの上位3つは「他人を思いやる心」「他人との助け合い」という社会との共生を目指すものと「環境への配慮」であり、経済成長や雇用創出を上回った、という結果が報告された。

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