全入時代、大学の社会的責任(USR)が問われている(4)

全入時代、大学の社会的責任(USR)が問われている(1)(2)(3)に引き続き、『環境会議』2013秋号「エコ大学」特集の一部をご紹介します。

取材協力
NPO法人エコ・リーグキャンパス・クライメート・チャレンジ実行委員会
慶応大学三田祭実行委員会環境班


エコ大学ランキングの調査と集計の様子

諸外国と比べて弱い学生の組織化力と交渉力

――学生同士で環境意識の差を感じるのはどんなときですか。

小竹 同じ学生でも関心のない人に環境配慮行動を呼びかけていくのは本当に難しいと思います。一般的に大学での学生への呼びかけは啓発ポスターでの告知が中心になりますが、元々関心のある人が見ていることが多く、関心のない人には見られません。また、最近は大学からの告知もほとんどウェブやメールになってきているので、リアルの掲示版などにポスターを貼ってもあまり効果がないと思います。

 SNS等、昔と比べてITの手段が豊富になっている割に、学生のほうでは何をどのように発信すればいいのかが固まっていないんです。

上地 これまで大学の環境対策は設備投資が中心だったと思いますが、これからは情報システム的なアプローチが必要だと思います。CCCも情報システム的な考え方で始まったもので、元々アメリカのイエール大学の数人の学生が始めた活動が全米に広がっていきました。日本のエコ・リーグのメンバーがその活動に参加して日本に輸入され、現在に至っています。

アメリカでは学生の働きかけで州の法律を変えたり、全米の大学の学長が加盟する団体に働きかけて大学の環境対策のプレジデント・コミットメントを取り付けたりと、学生も市民セクターの一翼として大きな役割を果たしています。それと比べると、日本はまだまだ遅れています。―学生のセグメント化が進み、組織的な活動に発展しないのでしょうか。

 環境活動に関わっていると、かつての「左翼運動」と重なって見えるのか、親や上の世代の方から心配されることがあります。やり方を間違えると反社会的に見えることや、就職難の時代ということもあって、誤解されるような行動は避けたいという学生も多く、あまり大胆になれないのではないかと思います。

服部 学生の目を引くような方法だと、大学に受け入れられないことがあります。以前、サークルでゴミの分別を呼びかけるポスターを作成したところ、ゴミの描写が直接的すぎてキャンパス美化にふさわしくないと言われて掲示できなくなってしまったことがありました。

小竹 美術系の大学の方は、ゴミの分別や省エネなど地味なテーマでもキャッチーな絵柄で学生を惹きつけるデザインのポスターや、きれいなデザインの環境報告書をつくっていて、上手だなと思いました。あまり専門的な勉強をしていなくても、アートの専門の人が参画してくれると、環境に関心を持つ学生が広がります。そういう点では「環境学生」以外の人たちをいかに巻き込むかが重要だと感じています。

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