食品会社にとって初動の危機管理の遅れは致命傷
水産大手マルハニチロホールディングスの子会社「アクリフーズ」の群馬工場(群馬県大泉町)で製造された冷凍食品から農薬「マラチオン」が検出された問題は、年末年始を挟んで事態が急展開している。
当初は、アクリフーズの原因究明能力に対する懸念や情報開示の遅れなどを理由としたバッシングに近い報道が繰り返されていたが、工場内で同種の農薬の使用がないことや商品内の農薬の検出濃度が高いことを受けて、何者かが意図的に農薬を混入させた可能性を含めて警察当局も広範囲な捜査に乗り出している。
群馬県は、昨年末の30日に館林保健福祉事務所の職員を派遣し立入検査を行ったほか、県警も今年に入り、4日、5日と工場で実況見分を実施、各製造ラインの責任者から作業手順や流通の流れについて説明を受けるなどしていた。
1月7日時点で、アクリフーズ群馬工場で製造された冷凍食品をめぐり、下痢や嘔吐、腹痛などの症状を訴えた相談者は全国34都道府県で420人以上に上り、特に7日に限っては新たに約120人が被害を訴える結果となっている。
それ以上に、今回の事件が普通の異物混入事件と大きく異なる点は、異物である農薬の混入経路が未だ不明である点、自主回収の対象となる商品群が全国90品目以上640万パックに及ぶ大規模なものとなった点である。異臭から始まった事件は、塗料混入の懸念や原材料農薬の残存の可能性などを否定して、第三者による悪意の異物混入の蓋然性に帰着しつつある。
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白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)
白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)
ゼウス・コンサルティング代表取締役社長(現職)。1981年、早稲田大学教育学部を卒業後、AIU保険会社に入社。数度の米国研修・滞在を経て、企業不祥事、役員訴訟、異物混入、情報漏えい、テロ等の危機管理コンサルティング、災害対策、事業継続支援に多数関わる。2003年AIGリスクコンサルティング首席コンサルタント、2008年AIGコーポレートソリューションズ常務執行役員。AIGグループのBCPオフィサー及びRapid Response Team(緊急事態対応チーム)の危機管理担当役員を経て現在に至る。これまでに手がけた事例は2700件以上にのぼる。文部科学省 独立行政法人科学技術振興機構 「安全安心」研究開発領域追跡評価委員(社会心理学及びリスクマネジメント分野主査:2011年)。事業構想大学院大学客員教授(2017年-2018年)。日本広報学会会員、一般社団法人GBL研究所会員、日本法科学技術学会会員、経営戦略研究所講師。
白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)
ゼウス・コンサルティング代表取締役社長(現職)。1981年、早稲田大学教育学部を卒業後、AIU保険会社に入社。数度の米国研修・滞在を経て、企業不祥事、役員訴訟、異物混入、情報漏えい、テロ等の危機管理コンサルティング、災害対策、事業継続支援に多数関わる。2003年AIGリスクコンサルティング首席コンサルタント、2008年AIGコーポレートソリューションズ常務執行役員。AIGグループのBCPオフィサー及びRapid Response Team(緊急事態対応チーム)の危機管理担当役員を経て現在に至る。これまでに手がけた事例は2700件以上にのぼる。文部科学省 独立行政法人科学技術振興機構 「安全安心」研究開発領域追跡評価委員(社会心理学及びリスクマネジメント分野主査:2011年)。事業構想大学院大学客員教授(2017年-2018年)。日本広報学会会員、一般社団法人GBL研究所会員、日本法科学技術学会会員、経営戦略研究所講師。
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