「契約社会アメリカ」の洗礼を受ける

日本的「話がわかる」コミュニケーションは無力

いろいろな議論の後、最終的にあまりこちらに有利ではない結論となってしまい、悔しくて悔しくて、オフィスの建物を出た瞬間に、涙が止まらなくなってしまいました。いろいろな思いが駆け巡りますが一言で言うと、「悔しい!」。

こんなことを言うと怒られるかもしれませんが、欧米諸国と不平等条約を結んでしまった幕末の人たちはこんな気持ちだったのではないかと思いました。

そんな38歳中年男性らしからぬ情けない話は置いておきつつ、とにかく洗礼を浴びたわけです。アメリカは契約社会と言いますが、全くもって契約社会です。アメリカ含めて欧米の仕事の仕方は、なかなかに契約社会です。

たとえば、私はもともと日本の制作会社で仕事をしていました。クライアントや広告代理店と仕事を始める際に、当然ながら、何をつくる必要があるのか、いつまでにつくる必要があるのか、予算はどのくらいあるのか、ということをヒアリングしてきました。

私の場合、ヒアリングの上で、個別の要件定義等は特に記載していない基本的な契約書をつくり、受注をしてスタッフを動かしてきました。

つくる内容が変更になってしまったり、スケジュールが短縮されたり、予算が削られてしまったりということもそれなりによく起こります。当然そういう場合、要素を減らしたり、よりつくりやすい方法を見出したり、いろいろな調整をしなくてはならないわけですが、そういった調整は相手先との仁義において行われることが多かったのです。「この部分はここまで対応するので、この部分は諦めてください」とか。そういうやり取りが暗黙の了解で行われたりします。お互いの空気を読んで、ちょうど良さそうなところで手を打つ。そんな文化があります。

欧米ではかなり違うように思います。何をいつまでにどのくらいの費用でつくる、ということをきっちり決めてから仕事をスタートする。それが基本です。いわゆる「SOW」(スコープ・オブ・ワーク)です。この取り決めをしっかり仕上げて締結してからでないと、何も進みません。

日本だと、相手先との関係性や信頼関係で見切り発車で仕事を進めてしまうことも多いです。広告会社にしても制作会社にしても、そのあたりの「話がわかる感じ」が、営業的にも効いたりします。「○○さんは話がわかるからやりやすい」とか、「△△さんは固い話しかしないからやりにくい」とか。しかし欧米ではそうは行きません。

必ず「固い話」から始める必要があるのです。それには当然理由があります。

前々回のコラムで、「こちらでは、多くの人は言えばプロの仕事してくれる、言わないとやってくれない」みたいな話を書きました。これが重要です。つまり、「言わないとやってくれないから、やって欲しいことは全部言ってみる」のが欧米の文化のような気がします。
無理そうなことでも、とりあえず言ってみる。そうしないと何も始まらない。それが欧米、特にアメリカの社会を形づくる基本原則のような感じがするのです。

節操なく要求することからスタートする

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清水 幹太(PARTY チーフ・テクノロジー・オフィサー)
清水 幹太(PARTY チーフ・テクノロジー・オフィサー)

東京大学法学部在学中(のち中退)からプログラマー・デザイナーとして活動。2006年にイメージソースに入社以降は、テクニカル・ディレクターとしてウェブサイトから映像まで、様々なフィールドに渡るコンテンツ企画・制作に携わる。2011年、クリエイティブラボ「PARTY」設立に参加。クリエイティブ・ディレクター、チーフ・テクノロジー・オフィサーとして、インタラクティブを中心にジャンルを問わず、高い技術力を背景にした様々なクリエイティブに関わっている。2013年9月よりPARTY NYCに赴任。カンヌ・クリエイティビティ・フェスティバル、アジア・パシフィック広告祭等、国内外での受賞多数。

清水 幹太(PARTY チーフ・テクノロジー・オフィサー)

東京大学法学部在学中(のち中退)からプログラマー・デザイナーとして活動。2006年にイメージソースに入社以降は、テクニカル・ディレクターとしてウェブサイトから映像まで、様々なフィールドに渡るコンテンツ企画・制作に携わる。2011年、クリエイティブラボ「PARTY」設立に参加。クリエイティブ・ディレクター、チーフ・テクノロジー・オフィサーとして、インタラクティブを中心にジャンルを問わず、高い技術力を背景にした様々なクリエイティブに関わっている。2013年9月よりPARTY NYCに赴任。カンヌ・クリエイティビティ・フェスティバル、アジア・パシフィック広告祭等、国内外での受賞多数。

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