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コラム

ニューヨーク突撃記 PARTY NYCの挑戦

「契約社会アメリカ」の洗礼を受ける

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節操なく要求することからスタートする

最近つくった弊社の業務委託契約書。日本語でも嫌なのに、こんなクソ長い書類でも目を通さなくてはいけません。

仕事を受注する方も同様です。とにかくまずは、自分たちに有利な条件を提示する。それをしないと、何でもかんでもやらされてしまうことになってしまうからです。自分たちを守るために、まずは言いたいことを言ってみる。

お互いにまずは、「こうしたい!」というものを全部開示する。節操無く要求してみる。カードを出し合ってから、調整する。それが欧米の仕事のやり方なのです。

日本でそれをしてしまうと、「あの人は、あの会社は面倒くさいことを言う」ということになってしまうから、そういうやり方はあまり良い効果を生まないような気がします。しかしみんながそれをやっている社会では、日本的な気づかいは逆効果になりかねません。
仕事を始める際に提示し合う条件は、日本においては比較的「相手の顔色をうかがってこのくらいがちょうど良いんじゃないか」というものになりがちです。なので、「そんな変なこと書いてこないだろう」という前提でコミュニケーションが進みます。

しかし、欧米(しつこいようですが、たぶん特にアメリカ)ではこれに非常に注意する必要があります。放っておくと、先方にすごく有利で、こちらにすごく不利なすごい内容がしれっと書かれていたりすることがあるからです。「無理そうなことでも、とりあえず言ってみる」文化だからです。
だからそこでしっかり確認しないと、相手がクライアントなら、「何でもかんでもやらなくてはならない状態」に陥りますし、相手が発注先なら「あれもこれもやってくれない状態」に陥ります。

実際、私は先方から提示された契約書の内容を都合良く解釈して、読み込みの足りない状態で進めてしまったところ、ものすごく痛い目を見てしまいました。

とりあえず仕事を進めていたら、いつの間にかものすごい不平等条約で板挟みになって、最終的に37歳のおじさんが辛くなってニューヨークの路上でさめざめと涙する羽目になってしまっていたのです。

しかし、それだけで済んで良かったと思います。今後、関わる仕事が大きくなればなるほど、そういった場合に生じるトラブルも大きくなるはずです。だから、NYオフィスをスタートした初期段階でこういう経験をしたのは本当に良かったと思います。

「突撃記」などと言っていますが、実際にゼロに近いところから勢いで海外に出てきているところがあるので、こんなこともあるだろうとは思っていました。恐らく、海外の会社に就職するだけではこんな経験はしないかもしれなくて、いきなり海外で会社を経営する、という無鉄砲な行動であるからこそ得られた経験なのではないかと思っています。

とはいえ私は法律の話が苦手というよりも嫌いですし、日本人ですから「とりあえず無理そうでも言ってみる」のが苦手です。どちらかというと手を動かしてつくる部分を生業にしている人間でもありますから、「優秀なプロデューサーに来て欲しい!」ということになります。

こうして痛い目を見るうちに、「ここで仕事をしていく上では、こういうタイプのこういう人が必要」とか「こういう人だとどうにもならない」とか、いろいろなことも見えてきます。

ちなみに、ニューヨークの路上や地下鉄で泣いていると、わりといろんな人が心配して話しかけてくるので要注意、なんていうどうでもいいことも見えてきます。
「涙の数だけ強くなれるよ」というJ-POP的な基本原理は、日本でも海外でもきっと同じです。