【前回のコラム】「「契約社会アメリカ」の洗礼を受ける」はこちら
「話して伝える」ことが苦手だったからこそ
「清水さんは、本来コミュニケーションの仕事には向いていません。だから、さらに言葉が通じない海外で仕事をするのはあまりおすすめしません」
これは、ニューヨークに発つ前に、東京で通っていた心療内科の主治医に言われた言葉です。
なぜ私が心療内科に通っていたのかというといろいろあったのですが、総じて言うと、話している相手の感情をうまく捉えられなかったり、コミュニケーションがうまく行かないことがあって、ちゃんと自分のことを知って自分に適切な生き方を見つけないとなかなか苦しいなあと思ったのがきっかけでした。
しばらく通ってカウンセリングを受けて、検査を受けたところ、「アスペルガー症候群」という診断が下りました。
アスペルガーというのは病気というより先天的な特徴なのですが、wikipediaには、「興味・コミュニケーションについて特異性が認められる広汎性発達障害である」なんて書いてあります。
「興味の面では、特定の分野については驚異的なまでの集中力と知識を持ち、会話の面では、聞かれたことに対して素直に答える(「空気を読む」などの行為を苦手とする)、といった特徴を持つ」なんてことも書いてあります。
同じ特徴に悩んでいる多くの方がいるので不謹慎かもしれないのですが、この診断が下ったとき、実はちょっと嬉しかったのです。スピルバーグもアスペルガーと言われていますし、多くの天才と言われるプログラマーもこの特徴を持っていたりします。
私もいわゆる「つくり手」ですから、そういう人たちと同じ診断を受けたことで、ちょっと嬉しくなってしまったりもしました。
しかし、それは一方で、冒頭の主治医の言葉にあるようなことでもあるのです。確かに私は、クリエイティブディレクションをするくせにプレゼンテーションにしても、現場へのディレクションにしても、なかなかに不得手な自覚がありますし、必要以上にエネルギーを消耗してしまうところがあります。
「ちょっと無理してやってる」自覚が自分にもあるのです。
通常のやり方で何かを伝えることに難しさを抱えている。だからこそ「伝え方」「伝わり方」へのフラストレーション、というか怨念があります。
だから、手を動かして何かをつくって公開する、ということを覚えたときに、「ああ! これだ!」なんて思ったものです。話しても伝わらなかったことが、つくって形にしたら受け入れてもらえる。それに対する新鮮な感動がありました。しかもそっちの方が無理なく、楽にできるのです。
だから、クライアントにプレゼンテーションをするにせよ、現場にディレクションするにせよ、とりあえず動くものをつくって見せる。いわゆるプロトタイプをつくって提示する、というのが自分のやり方になり、特異性になっていきました。
なのでむしろ、「コミュニケーションの仕事には向いていない」ことが吉と出たのです。向いていないなりに模索していった結果、それなりにユニークな方法でコミュニケーションをするようになっていったのです。
言語に依存しないと、世界に通じる。
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