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コラム

ドン・キホーテの訪日外国人誘致戦略の仕掛け人が行く!

インバウンド業界に宿る「貧乏神」と「福の神」の正体とは?—インバウンド販促の“秘伝”⑥

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【前回の記事「美容室やエステサロンでも訪日外国人は8%の消費税が免税されるって、本当?!ーインバウンド販促の“秘伝”⑤」はこちら

インバウンドが日本を救う?!

先日発表された今年4月のわが国の国際収支(速報)において、インバウンドに関わる「旅行収支」がついに単月で177億円の黒字に転じたと報道されました。

「うわあ、すげー!」スマホのニュースアプリをのぞいていて思わず、電車の中でひとりで叫んでしまいました。最近のニュースのうち、個人的には一番びっくりし、また最高に嬉しいニュースでした。なにしろ、これで、日本のインバウンドもようやく一人前になったということだからです。そして、「これで、ちょっとばかり肩身が広くなるぞ!」とも正直思いました。

訪日観光客で賑わうドン・キホーテの店内。

どれだけ、近年インバウンドが伸びているといっても、インバウンド(訪日旅行)の収入全体から、アウトバウンド(海外旅行)の支出全体を引いたら、これまでずっと赤字だったのです。驚くなかれ、なんと今回、単月ながら旅行収支が黒字になったのは、大阪万博開催期間中の1970年7月以来およそ44年ぶりだったそうなのです。まさに4月の数字は快挙です。この間は44年間ずっと、ずっと毎年毎月インバウンドは赤字続き。多いときは年間何兆円もの旅行収支赤字だったのです。(後述するように去年2013年も赤字でした。)それゆえむしろ、この何十年間は、「旅行収支の赤字、大いにけっこう。むしろ皆さん海外旅行でバンバン派手に買物して、お金を使い、貿易黒字を減らして、海外からの批判を和らげてくださいね」、と政府があと押ししていたくらいだったのです。

ところで、昨年の日本全体の経常収支は、いちおう黒字でした。ただし、その経常黒字はわずかに7899億円。比較可能な85年以降で初めて1兆円を割り込みました。これは過去最少の黒字額なのだそうです。実際、日本の経常黒字は90年代後半には、上述のとおり真っ黒けの黒字額が10兆円を優に超えていました。ところが、その黒字幅はここ最近激減し、いまや日本は国際収支赤字国家への転落の一歩手前までに落ちこんでいるんです。これは、「ひょえー」というくらいやばい数値なのです。年間10兆8642億円もの貿易赤字(2013年)が足を引っ張っています。

ちなみに、この2013年の貿易収支の大赤字を埋めたのは、海外子会社の所得や海外投資の利子等で得られた所得収支でした。そしてもう一つの貢献要素が、冒頭で述べたとおり、サービス収支、中でも旅行収支の大幅な改善だったのです。(ちなみに、2013年全体では、まだ残念ながら6545億円の赤字でした。それでも、前年の1兆617億円の旅行収支赤字と比べてみると、その赤字幅はほぼ半減しており、差し引き+4072億もの収支改善が実現しています。)まさに、これからはインバウンドが外貨を獲得し、貿易赤字を補うのも夢ではないのです!

 なお、話は元に戻りますが、日本政府観光局(JNTO)によると、今年4月の訪日外国人は約123万人。この人数は、同月に海外旅行にでかけた119万人を上回っています。日本国政府はインバウンドの訪日客数を2030年までに年間3千万人まで増やすことを目指しています(去年は1036万人)。もしこのインバウンド3千万人が実現すれば旅行収支の収入が、現状(-6545億円)に比べプラス2兆円増えるとの試算もあるようです。計算すれば分かるとおり、差し引き1兆3千億円以上もの国際旅行収支の黒字が見込めるわけです。こうなると、まさに日本の未来は、インバウンドにかかっているといってもいいすぎではない、と思います。

 あれれ、それはいいけど、今回のお題の「貧乏神」と「福の神」の話はどこにいったの、というつっこみを入れようとしている方。お待ちどうさまでした。ここまでは、長い前振りです。さあ、ここからが今回の本論です。

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