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コラム

企業トップが語る“次世代リーダー”の育て方

「リーダーは強い意志を持ち、ディテールをあきらめないことが重要」——アバナード 安間社長に聞く

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異分野の人たちへの尊重と尊敬を忘れないこと

——そういった意思を持って、決断できるように、会社として取り組んでいることはありますか?

先ほど述べた「木を見て、同時に森も見る」という考え方については、社内報やソーシャルメディアなどを通じて伝えています。それに加えて、それがなぜ大切なのかを具体的に実証していくことが大事だと思います。また、トレーニングについては、グローバルレベルでかなり充実しています。テクニカルトレーニングもコンプライアンス型のトレーニングなど、さまざまなプログラムがあります。

——先ほどの「意思の表現が大切」ということについて、言葉で伝えることに加えて行動が伴っていないとなかなか周りに浸透していかないということですね。

そうですね。これも木と森の話に近いのですが、「お客様を知って、競合を知って、自分を知る」ということも重要だと思います。やはり我々は技術がベースとなった会社なので、ともすると自分たちの技術に酔ってしまう可能性がある。油断すると「良いものを作れば売れる」と思ってしまうのです。もちろん、そうした気概は大切ですが、一方で「良いものを作るだけでは売れない」のも事実です。したがって、お客様にわかる言葉で、技術の良さが説明できることが大切だと思います。

これは社内にも言えることです。データサイエンティストと技術者がいたとして、お互いに自分の言葉だけで話していては「何でそんなこともわからないんだ」と双方が思ってしまう。そうではなく、お互いのことを尊重し合って仕事をしていくことがとても重要です。そういった考え方をしない限りは、とても協働することはできないですね。先ほど専門性の大切さについて述べましたが、同時にそれをビジネスに役立てるための考え方を身につけなければいけません。

自身ですべてを見られる状態からスタートし、同じ思いの人を増やしていく

——違う分野の方を尊重して相互理解を深めることで、企業の総合力の向上につながっていくということですね。社長はアクセンチュア時代に、新規部門を立ち上げ、それこそスタッフ数0から1000人までの規模にした経験をされています。それを踏まえて人材育成や採用についてお聞かせください。

ちょっと別の話からはじめます。私は楽器演奏が趣味なのですが、例えば完璧に楽器を調整しておかないまま演奏の本番に臨んで失敗したとすると、「失敗したのは楽器の調子が悪かったから」と楽器の責任にしてしまいがちです。そうならないよう私はいつも楽器を調整しておくように心がけています。

これは組織も同じで、まずは全て自分が責任を持てる状況を作っておきたいと考えています。だから組織立ち上げのときも、社員が100人になるまでは全員私が面接して採用を決めていました。そこまでは、各社員の一挙手一投足に目を行き届かせて責任を持てるからです。そして、100人から先は私の気持ちや判断の軸、そして意思を理解できる人をたくさん増やすことを意識しました。つまり、水面に石を投げた時にできる同心円のように、ほかの人を通じて私の考えなどをより広く・効率的に伝えられるようにしたのです。

——最後に、貴社の今後の展望を教えてください。

グローバルに展開している企業として、現在の日本の状況というのは大きなチャンスととらえています。現状、日本は人口の減少と高齢社会の影響で、ますますグローバルマーケットへの進出を志向していきます。この面では我々はネットワークを含めて強みを発揮できるので、これからさらに力を入れていこうと準備を進めているところです。

<取材を終えて>

グローバルでの育成プログラムがありつつ、「木を見て森も見ることが大切」「個人の意思の力が最後にはモノを言う」といった考え方について、細かにメッセージすることで社内への浸透を図っている安間氏。技術がベースにある会社だからこそ、コミュニケーションスキルを磨くことで、さまざまな専門分野のスタッフの力を掛け合わせ、自社の強みにしていこうという考えが伝わってきた取材だった。

 

安間 裕
アバナード 代表取締役社長

明治大学卒業後、団体系保険会社、外資系商社を経て、1998年にアクセンチュア入社。その後外資系広告代理店を経て2001年に再度アクセンチュアに入社し、アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズの設立に携わり2002年8月に同社代表取締役社長に就任。
09年 アクセンチュア 執行役員アウトソーシング本部長、10年 執行役員ビジネスプロセス・アウトソーシング統括本部長を歴任。国内ITコンサルティングファームの経営に携わった後、14年4月にアバナードに入社。14年5月1日より現職。