コラム

ビデオコミュニケーションの21世紀〜テレビとネットは交錯せよ!〜

あなたは広告主ではありません、パトロンなんです——土屋敏男×谷口マサト対談(下)

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【前回記事】「ネット文化は『電波少年』の影響を受けている—土屋敏男×谷口マサト対談(上)」はこちら

土屋敏男×谷口マサト対談の後半をお届けします。話は錯綜し、広告とコンテンツの話題から、世界へと飛躍していきます。そして「広告主はパトロンになるべき」という、産業とコンテンツの関係の本質論も出てきます。ネットならつくり手と広告主の距離が縮まる、というこれは前々回のコラムで吉田正樹氏に取材したネスレシアターと近い話にもなりました。盛り上がってホットになったお二人の話、どうぞじっくりお読みください。

広告なのか、コンテンツなのか。

境:いま「広告とコンテンツの境目」ということが話題になっています。谷口さんは広告コンテンツを作っていますが、土屋さんからすると広告は興味の対象外ですか?

LIFEVIDEO代表 土屋敏男氏

土屋:いや、そんなことないですよ。僕は、第2日本テレビをやった後に間寛平さんがマラソンとヨットで地球を一周する「アースマラソン」という企画をやりまして、これを広告とコンテンツの究極の形だと思っています。寛平さんが地球一周するために、必要なものをつくっている会社にクライアントになってもらったんです。

だから、サポートカーであるトヨタのプリウスはいつも画面に映るわけですよ。他にもいろんな企業にスポンサードしてもらい、そうした商品が必然的に映っている。「このお米、おいしい」「今日の昼食は、スタッフ手製のスパゲティだ」。そうやって広告とコンテンツがナチュラルに一体化していた。コンテンツ制作側から働きかけて、「こういう企画をやるから、お金をもらえませんか」というのを行っていけばいいのだと思いました。

谷口:広告制作の現場でよく起きるのが、我々が見てもらうためにコンテンツにしようとしても、その要素を減らしてもっと広告にしろと言われること。そのせめぎ合いです。

コンテンツにしないとユーザーには見てもらえないので意味がないのだけど、伝統的な広告と同じだと思っている人は広告的要素を強く要求してくるので、コンテンツを大幅にカットされた結果、よくわかんないものが出来あがることがある。そこで私は、広告会社の人にこんな図を見せてわかってもらおうとしています。

谷口氏が広告会社向けに作成した図

土屋:僕もテレビでタイアップをやっていたとき、「商品は何秒映るんですか、30秒映るんだったらいくら出します、1分映るんだったらいくらです」という話になる。そういうことじゃないでしょ。食品だったら出演者が「これ、おいしい!」って本気で言って、視聴者が食べてみたいって思ってもらえばいい、それは秒数じゃない。でも、効果を秒数だけではかろうとするわけですよ。それはナンセンス。本当にクライアントが求めていることとは違うはず。

谷口:私もたまにそういう案件にぶつかって、わけがわかんなくなります。ユーザーも混乱するから、シェアもされませんし、商品に対していい印象も持たれない。

土屋:だから、パトロンが必要なんですよ(笑)

境:パトロンですか?クライアントじゃなくて、パトロン?

土屋:そう、広告主がパトロンになったら、つくり手は広告主の顔だけ伺って、いいものつくりますよ。パトロンに離れられたらおしまいだから、一生懸命やりますよ(笑)

パトロンになってくれたら、クリエイターも一生懸命に商品が面白くなることを考えて、お互いに幸せになると思いますけどね。そのために、いいパトロンがいないかなあと思っているんだけど。たとえば、いまNetflixはドラマのつくり手にとってはいいパトロンと言えるかもしれない。なにしろ、60分のドラマに4億円かけさせてくれるらしい。

境:テレビよりも、はるかにいいパトロンかもしれませんね。

土屋:これは、コンテンツを54カ国に提供するから、制作費に4億円かけられるんですよ。ネットの可能性は、世界に出せること。だから、そこに金がかけられて、今までと違うものがつくれる。インターナショナルなクライアントが、世界に向けてコンテンツをつくりましょうというときは、チャンスなのではないでしょうか。谷口さん、パトロンという考え方はどうですか?

次ページ 「パトロンが本当に必要で」へ続く

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