すべての制作者はハイブリッドを目指す?
境:ネットのつくり手は、谷口さんが出てきたり、面白い人が出かけているのかなと思う。どこで育っているのかな?
谷口:野生ですよ。私も個人で10年ぐらいやっています。最近、広告とコンテンツが近くなったので、やっと注目されてきたところです。
境:つくり手はどこで出てくるのか、最近気になっています。前はテレビや雑誌に育つ場があった。
谷口:つくり手にとって、いまは難しいときかもしれません。文学って、読者が好きなときに好きなスピードで読めるので、コンテンツの時間軸は読者側にあった。映画は、制作者の意図通りに視聴者が見るので、監督の時間軸だった。いまは、フェイスブックのタイムラインのように留まると映像が流れたり、そのハイブリッド。これがネットの文化。こういったハイブリッドでコンテンツをつくるというのは、まだまだ始まったばかりで、つくり手自身も揺れています。
境:ハイブリッドな制作物のつくり方?
谷口:つまり文章と映像と写真が組み合わって何でもアリなのがWeb。それは今までなかったことなので、みんな迷っていると思います。
境:いま土屋さんはLIFE VIDEOという会社で、個人の人生を映像化しています。テレビの放送が目的ではないコンテンツなわけですけど、テレビのつくり手がいろんな領域のコンテンツをつくるのは、今後増えていくと思っています?
土屋:僕は、テレビかどうかはどうでもいいと思っていているんですよ。さらに言えば、テレビのつくり手は世代交代すべきだと思っているから。そしてある時、自分がずっと客がたくさんはいっている劇場でコンテンツをつくっていたんだなあと気付くと、路上パフォーマンスの誰が立ち止まってくれるか分からないという勝負に行った方が楽しいんです。その結果、つくったものが多言語化され50か国に出る、それができる世界に立ってみたいと思う。
境:可能性としてはNetflixですか?
土屋:というよりも、Web自体がそう。誰もまだやっていないことがやりたい。でも、どこかの猫はすでに世界をかけまわっていると思いますけど。猫の次に、世界をかけまわるようなコンテンツをつくりたいですよね。
谷口:いま私はLINEのスタンプをマンガにしているのですが、スタンプとストーリーを組み合わせればいろいろできると思っています。
境:LINEも世界で使われているから、世界に行ける可能性になるわけですね。スタンプなので、文字も関係ないですし。
土屋:言葉も短いから、多言語にするのは簡単ですよね。
境:日本でつくったスタンプが海外でも使われている例はありますか?
谷口:ありますけど、万国共通は少ないです。国によって好みが違いますから。
土屋:違うこともあるけど、同じこともある。『ハウス・オブ・カード』は世界中で支持されているけど、細かく見るとある国は人気があるけど、ある国ではなかったり。でも、とにかく面白いと思う人は世界中にいるわけです。バラエティも同じですよね。猿岩石のヒッチハイクは、50カ国はわからないけど、ひょっとしたら何10カ国かでは面白がってくれる可能性もある。日本のクリエイターってレベルが高いから世界に向かってつくるのは簡単ですよ。アメリカのバラエティはつまんないよ(笑)
境:ドラマは面白いですけどね。
土屋:うまいですよね。話は違うかもしれないけど、『アナと雪の女王』のメイキングを見て、その作り方はすごいと思いました。日本はたとえば宮崎駿というたった一人の狂気によってつくる形が多いのに対して、アメリカは『アナ雪』とか『ハウス・オブ・カード』のように、何十人という人間が隙の無いものをつくっていくシステムがある。そのやり方は学ぶ必要があります。
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