複数のブランドが複雑に組織を形成していた老舗化粧品メーカー「資生堂」。ダイレクト自動車保険最後発の「おとなの自動車保険」。業種も顧客ターゲットも違う両社ではあるが、それぞれの「顧客との接点」における効果を最大化させ、ロイヤル顧客へと導くための取り組みを伺った。
<パネラー>
- セゾン自動車火災保険 マーケット企画部部長 袴田 法明 氏
- 資生堂 日本事業本部 デジタル事業部 企画室長 徳丸 健太郎 氏
<モデレーター>
- 宣伝会議 マーケティング研究室主任研究員 上条 慎
——デジタルツールの発達により、「できること」は増えてもどこから手を付けていいか分からないという声もよく聞きます。最初に、顧客との接点での取り組みについて聞かせてください。
徳丸:
資生堂の化粧品ビジネスは、基本的にクローズドな運営でした。販売は契約店舗での店頭販売、お客さまとの関係性づくりも契約店舗が行うようになっていました。企業サイトでは、ブランドを基点に展開していましたが、詳細な顧客情報が充実しておらず、分析指標はPV・UUなど「量の把握」にとどまっており、「誰が」「どのようなプロセスで」「何を購入したか」といった、ユーザーを基点とした運用がされていませんでした。
そこで2012年にWEBサイト「ワタシプラス」を立ち上げました。これは、WEBとリアルの両方から、お客さまとの絆を深めることを目標とした、マーケティングプラットフォームという位置づけです。それまでの資生堂の企業サイトにe-コマース機能と、店舗に誘導するO2O機能を追加するとともに、別々になっていたWebとリアル店舗の会員データベースを統合しました。
これによって、リアルとWEBの両方における顧客の動線が分かるようになりました。店舗とWEB、両方でお客さまの声を直接聞き、それぞれの動きをデータで可視化することができるようになってきています。
袴田:
セゾン自動車火災は、香川照之さんのCMでおなじみの「おとなの自動車保険」をダイレクト通販で販売しています。自動車保険のマーケットは、93%が代理店による販売で、残りの7%が我々のようなダイレクト販売です。当然、ダイレクトのほうが代理店への手数料がありませんから、保険料が割安です。


