【前回の記事】「東浩紀×菅野薫×廣田周作「データベースが支配する世界で広告はどう形を変えるのか?」」はこちら
「カッコ良い広告」よりも「効く広告」の時代に
廣田:
昨年10月に、ゲンロンカフェで初めて「広告」をテーマにしたトークイベントが企画され、登壇させていただきました。普段、広告の仕事をしていると、広告について改めて深く考えたり、外部の人から意見を聞くことはあまり多くないんです。前回は社内外で面白かったという声もたくさんいただいて、大好評でした。ただ、僕の司会が散々で…。
東:
廣田くんは打ち上げでも反省していて、イジりすぎてしまったからか、最後は午前2時に泣きながら帰っていったよね。いやぁ、あの時は悪いことしたなと。
廣田:
僕の司会がひどかったので仕方ないです。すみませんでした(涙)。でも結果的には大好評だったので、感謝しかないです。それで、第2回もぜひ、というお願いをしていまして、今回は博報堂のスーパーエースを呼びました。
須田:
いやいや、スーパーエースではないですが、須田和博です。よろしくお願いします。
廣田:
僕から見た須田さんは、もともとアートディレクターで実績を積まれていて、ここ最近はさまざまな形でクリエイティブの可能性を追求されています。今回は、表現の話はもちろんですが、どうすれば実際に人を動かせるのかという視点を軸に、議論できればと思います。議論に入る前に、今日の話の前提となることを少しお話ししますと、今、広告業界で働いている人たち全般に言えることですが、「私たちは広告をつくっている」と言うことに、どこか違和感のあるような雰囲気が漂っています。広告会社にいるのに、広告をつくっていることを、どこか照れているというか、斜に見ているというか、とにかくこれまでの“広告っぽいこと”をしたくない、という雰囲気があるんです。その象徴的な事例が、カンヌの広告祭です。じつは、世界的な広告のアワードだった「カンヌ国際広告祭」は、2011年に「広告」という文字がとれてしまい、「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」に名称が変わってしまったんです。広告業界のアワードのはずなのに、自ら広告という文字を取ってしまった。


