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つくり手が意識を変えれば、賞は獲れる——電通 澤本嘉光さん

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——日本のテレビ番組のアイデアが広告にも生かせるかもしれない、ということですか?

わかりやすく言えば、「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」の1コーナーのアイデアを使った動画を出せばきっと受賞できる、ということです。80年代後半のバラエティ黄金期のコーナーだと思って、時間の制限を気にせずに考えたらどうかと。あとは、そのアイデアと、商品といかに結び付けるかを考えれば広告の企画になります。例えば、昔見た映像で、公衆トイレに入ったらドアも屋根も全部吹っ飛んで丸見えになってしまうというものがありました。下品だけど絶対に笑ってしまいますよね。それに「ちゃんとした家を建てましょう」と入れたら、住宅メーカーのCMになるかもしれない。色々なアイデアが考えられると思うし、動画カテゴリではそれで十分通用すると思います。

それこそテレビの番組制作のように、放送作家を集めて企画会議をしたり、さらに言えば、お笑い芸人など様々なジャンルの人達をクロスオーバーして制作したほうが、きっと面白い企画ができます。今回、動画カテゴリを見て感じたのは、つくり手である僕たちが考え方や意識を変えれば賞は獲れるんだ、ということなんです。ただ、そうすると、広告業界の人達は自分の領域がテレビの人達に侵されるという恐怖があるかもしれない。実は逆もあって、テレビ局も広告会社の知恵を借りたほうがいい場合があっても、やらない。本当に面白いものづくりを、実はそういう気持ちが阻害しているんじゃないかと思います。

それから、最近の日本の動画について言いたいのは、「これは海外受けするから」っていう方にあまり行き過ぎない方がいいと思うんですよ。日本市場がターゲットなら、世界で評価を求める前に、まず国内でしっかり受け入れられる広告をつくることが大前提。日本人として「なぜ外国人に媚びなければならないのか」と声を大にして言いたい(笑)。もちろんネットには国境がないから海外でも評価されるものの必要性は高いんですけれど、まずは、国内で機能するという所を目指すべきだということです。
だから、僕の仕事じゃないけど、今回デザイン部門で「行くぜ、東北。」が獲ったのはうれしかったんです。日本のオリエンタリズムに頼らずに、普段の仕事で獲れたのがいい。

——ご自身でも動画カテゴリに来年応募しようと思いますか?

本音としては、賞を獲るのであればテレビCMカテゴリで獲りたいですね。プロの広告屋としては、面白ければよいのではなく、広告として機能しているかどうかを重視したい。受賞することと、そのCMが放映されている国でちゃんと広告の機能を発揮しているかということはまた別問題ですが…。僕たちがそこを軽視してしまうと、テレビCMがなくなって、全部Webの動画広告になってしまうという懸念もある。僕たちは「テレビCMは広告として機能を十分に発揮する」ということを証明していかないといけないから。

——ほかに、澤本さんにとって「カンヌに来る意味」を挙げるとしたら何ですか。

僕にとってのカンヌは「優秀なクリエイターと繋がることができる場」でもあります。たとえば、同じ電通の人間でも菅野薫くんと社内で会う機会って年に1,2回しかないと思う。でも、ここに来ると毎日のように会って、情報交換することができる。年下のクリエイターとも知り合えますしね。基本的に、カンヌに来ている人間は「いい」んですよ。なぜかというと、自費で来ている人間なら非常に意欲があるし、会社から派遣された人間なら実績があるということだから。どちらにせよ優秀だということなんです。今回も「日本に帰ったら一緒に仕事をしたい」と思う若いクリエイターに会えてうれしかったですね。


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