【前回のコラム】「カスタマージャーニーは大事?マーケターが知っておくべき「消費者体験の3つの変化」」はこちら
差別化とはポジショニングからはじまる競争戦略
私が広告会社に勤めていたときにもっとも衝撃を受けた本は、ジャック・トラウトとアル・ライズの著書『ポジショニング』でした。マーケティングが実はインサイトに着目した「マインドの戦い」であるということは、今でこそブランド論や消費者心理学、行動経済学的にも生かされていますが、読んだ当時はとても新鮮だったことを覚えています。
このポジショニングという考え方は、基本的には競争戦略です。消費者はブランド側が思い込んでいるほど素直にマーケティングメッセージを理解しておらず、市場(消費者のマインド)の中での位置づけでブランドを捉えている、という認識です。デヴィッド・アーカーならば「知覚品質」という呼び方をするでしょうが、ここで大事なのはポジショニングとは単独ではなく、あくまで他社との関係において存在するということです。ブランドは何もない真空からつくり出されるのではなく、「他との関係=差異」によって成り立っているという考え方です。
その後のトラウトの著作には『Differentiate or Die』(邦訳は『独自性の発見』)があります。「差別化できなければ死ぬだけ」という意味です。差別化こそがマーケティングが提供すべきコアな価値であり、消費者がブランドを認識するには「差別化」しなければ存在しないのと同じと言うわけですが、これは先ほどのポジショニングの考え方とほとんど変わっていません。
